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BBC「シャーロック」とその周辺について

SHERLOCK S2E3 ライヘンバッハヒーローと”A case of identity”

先週に続いて週一復習、今回は再放送ではなく以前の録画を見ました。
最初に見てから何年か過ぎて、その間にホームズを読みなおしたり他のイギリス映像作品を見たことなどから、また違った気づきがありました。こういうのも、とっくに色々な方がいろいろ書かれていることとは思います。若干ネタバレするかもしれません。

キャスト
今見るとあの人だという人を発見します。ずっと前に書いたことがある『SHERLOCK』S1E1のキャビーさんも映画『さらば青春の光』の方でしたし(関連記事:Intermission Modsの後継)。
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スティング(一番背の高い人 )の左隣の人

以下他の方についても書いてみます。

■キティ・ライリー(Katherine Parkinson)
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この会の重要な脇役のキティ・ライリー、演じられているキャサリン・パーキンソン(Katherine Parkinson)さん、今見ると「IT CROWD(はい、こちらIT課です)」というヒットしたシットコムのジェン役の人。S1しか見ていないけど、はまります。答え合わせでIMDbを見たところ映画『パイレーツ・ロック』でレズビアンのフェリシティもされていたのでした。黒髪で60年代メイクでこちらも大好きな役です。最初見たときもかわいい方だなと思っていたのですが、自分の好きなタイプの顔なんだなと思いました。『パイレーツ・ロック』では「IT CROWD」のクリス・オダウドさん(最近作は『ミス・ペレグリン』)も共演。
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(関連記事:偶然にも最高のリス・エヴァンス

■コニー・プリンス(Di Botcher)
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こちらは『SHERLOCK』S1E3の変身ショーのMCで被害者役ですが、『Twin Town』のお母さんだ!と嬉しくなりました。同じ人と結びつきませんでした。(関連記事:Keep calm and wait Twins.
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■近衛兵の人
S3E1の被害者の近衛兵の人、『殺人を無罪にする方法』のウェスをやっている人でした。


ストーリーとモチーフについて
■ターナーのライヘンバッハの滝
イギリスを代表する風景画家ウィリアム・ターナーというのは前にも思ったのですが、『SHERLOCK』以降いろいろイギリス作品を見ましたが、やっぱりターナー風(本物かどうかはわからない)の絵画はよく登場します。暖炉の上とか、ギャングのボスの部屋とか。

■ダイヤのカフスボタン
絵画『ライヘンバッハの滝』を取り戻して、シャーロックはお礼にダイヤのカフスボタンをプレゼントされていますが、ここ、ダイヤだったんだと思いました。後でモリアーティがロンドン塔でダイヤを使っていることと対になっているのだろうと思います。

■耳当て付きディアストーカー
スコットランドヤードの皆さんからもディアストーカーをプレゼントされています。シャーロックは221Bでわざわざ「耳当て付き帽子だ」と耳当てを下ろした状態で持っています。ホームズといえば耳当てのリボンを頭の上で結んだスタイル。S3E1のマイクロフトとの帽子推理合戦のシーンでも出てくるのが耳当てのあるニット帽。映像作品を見ていてよく思うのが、耳当ての象徴は「耳が聞こえない、人の言うことに耳を傾けない、耳を塞いでいる」人物ということ。ミシェル・ゴンドリー監督映画『恋愛睡眠のすすめ』でもメキシコから来た主人公ステファンが耳当て付きニット帽をかぶっていて、特に人からあれこれ言われたくない時は目深にかぶっています。小説『ライ麦畑でつかまえて』の研究書には、主人公がかぶる耳当て付き赤いハンチングにそういう意味が込められているとあったような気がします。これを読んだ頃は考えすぎではと思ったのですが、他の作品でも耳当て帽はそういう扱いなのでそういうもんだろうと思いました。また、ゴンドリーさんは作品の中で象徴とかそういうものをとてもよく使っている方です。
SHERLOCK』では、その後モリアーティがイヤホンをしてロンドン塔の事件を起こしているのと対になっているようです。

■ロンドン塔の鴉
衛兵さんが代々飼っているというのをTVで見たことがあります。レイブン(大鴉)でクロウ(烏)とは分けて呼ばれているそうで、ポーの詩に書かれているとか。

■宝冠
現代のモリアーティが狙う場所として最も難易度の高い3か所の一つとしてロンドン塔が選ばれました。そういう意味でも納得ですが、「宝冠」は原作の中では「緑柱石の宝冠」「マザリンの宝石」を思わせます。

■ボイラー修理
モリアーティの公聴会の時に「商売で犯罪を請け負う人」という説明をしているシーンにボイラー修理はしないとかなんとか出てきました。全く関係ないかもしれませんが、モンティ・パイソン美術担当だったテリー・ギリアム監督『未来世紀ブラジル』にボイラー修理人(しかもロバート・デ・ニーロ)出てきたのを連想しました。原作の『犯人は二人』でホームズが配管工に変装してミルヴァートン邸に潜入したことからか?

■蒔絵のお盆
モリアーティの来訪を予測してシャーロックがお茶の用意をする場面。ティーセットの方はネットで話題になり、そちらばかり見ていたので見落としていたのですが、お盆は日本の蒔絵のものに見えました。もしかしたら中国の骨董かもしれませんが、ドイルは日本のものを登場させていた(正倉院、バリツなど)ことから日本のものかなと思います。

■モリアーティのキャビー
原作ではマイクロフトが御者に変装していました。グラナダ版ホームズでは「マザリンの宝石」でマイクロフトの御者が登場しています。

■A case of identity
日本では「花婿失踪事件」というタイトルで知られていますが、男子トイレでシャーロックが待ち伏せしていた記者のキティ・ライリーの推理をする場面の元ネタです。ドラマの中の手についた圧迫痕、指についたインクは「花婿失踪事件」に登場し、依頼者メアリー・サザーランドの職業がタイピストかミシンを使うお針子と推理します。キティはスカートの丈を直していることから、流行の丈のスカートが買えない→給料が安い、特ダネを狙うハングリーな三流記者の根拠の一つにしています。メアリーの方は、流行の派手な身なりをしていることから、かなり裕福と懐具合と仕事を推理しています。

原作のストーリーは、メアリーが結婚式の日に花婿にドタキャンされる話で、その花婿は素性を偽ってメアリーとつき合っていた疑いがあり「身元(アイデンティティ)に関する事件」とつけられています。キティはメアリー同様、素性を偽ったモリアーティ(リチャード・ブルック)に振り回されます。S2E3のテーマがシャーロックがfake(偽物)かどうかという”A case of identity”なんだなと思いました。それに対して、これも以前に書いたことがありますが、誘拐された女の子の持っていたグリム童話の本の中の「Faithful John(忠臣ヨハネス)」というタイトルが一瞬映ります。ジョンはシャーロックのことを信じていました。(関連記事:Faithful John

■Fairy tale
フェアリーテイル、童話、寓話です。前回(バスカービルの恐犬家事件)のコンティグリー妖精事件のフェアリーとドイルから、繋がっているかも。ストーリーの中で「コンピューター神話」の盲目的信仰の裏をかくモリアーティ。寓話対現実というテーマもあります。コンピューターの0or1のバイナリコードも登場しますが、ジョンが受け取った封筒に入っていた「bread cramb(パンくず)」というのもブレッドクラムリストというネット用語があります。「ヘンゼルとグレーテル」と「コンピューター」、改めてよくできているなと思います。

■You are the best man.
お墓の前でジョンは語りかけています。S2の時から言っていたのね。

当時は分からなかったことも、今だからわかることがたくさん出てきて、魅力も深まると同時に神秘性も薄れるのは仕方がないことです。モリアーティの死のトリックがあると仮定しても、少し距離を置いて見られる今なら、空砲とか協力者とかいろいろ手段はあったのだろうし、すでにbest manと言っていることからもある程度は決めて作っていたのではないかと思うのでした。公式発表は違うかもしれませんが。

(Jacket images from Amazon, IMDb)

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Comment

れすとら says... "楽しみです!"
ナツミさん、ご無沙汰しております。リンクの件オッケーですよ!ナツミさんの過去記事に、もしかして書かれていたかなあなんて思いながらこの記事は書きました(;^_^A
ナツミさんのご考察楽しみにしています!
2017.06.18 10:58 | URL | #DUxG7W6M [edit]
ナツミ says... "キティ・ライリーの元ネタ"
私も再放送楽しんでいます!たくさんの「新たな発見」、興味深く読ませていただきました。
蒔絵、気づかなかった~!
キティ・ライリーとメアリ・サザーランドの共通点についても、なるほどなあ、と思いました。服装から裕福さを推し量るようなこと、原作のホームズとワトスンは面と向かって言わないですよね。
れすとらさんの記事の蛇足のようなものを書いてみたのですが、ご迷惑でなければこの記事へのリンクを貼らせていただいてもよろしいでしょうか。
2017.06.18 10:06 | URL | #0kvoUBVw [edit]

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