GET SHERLOCK

BBC「シャーロック」とCBS「エレメンタリー」のマイクロフトの周辺について

Rhys Filmarathon / Talented little liars (才能あふれる嘘つき)

『ジャニスのOL日記』(原題 Janice Beard 45wpm  1999)

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今回かなり古いショートフィルムです。
ジャニス・ベアードという女の子が主人公です。リス・エヴァンスは主人公の相手役らしくDVDジャケットが楽しそうで、めったにないリスさん若い頃のラブコメっぽいので、できたら見たいと思っていましたが日本版DVDがなく、UK版で見ました。
UK版、せめて英語字幕くらいあるだろうと思ったら、ない。英語だからまあなんとかわかるだろうと思ったら甘かった。ジャニスがスコットランドなまりで、リスさんもウェールズなまりなのかゴニョゴニョ言っていることが多い。どちらも地方出身者の設定なのだろう。

ベアードは「あごひげ」の意味なので、予想では男勝りの仕事人間のジャニスが、郵便室で働く青年(そこは知っていた)に恋して、青年も燻らせていた才能を認められて会社で昇進するめでたしめでたし的な話だと思っていました。パッツィー・ケンジット(エイスワンダーのヴォーカルだった、女優、元OASISのリアム・ギャラガーの奥さん)も写っていて、いけてる美女のライバル役と思っていました。

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リスさんがそんなに素直なラブコメををやるはずもなく。
USドラマ『アグリー・ベティ』のようなダサい女の子が活躍する話でした。以下ややネタバレしますが、細かいところは不明です。

ジャニス(アイリーン・ウォルシュ)は生まれた時にお父さんが亡くなり、以来ウツで引きこもりの母を楽しませる努力をしてきた(主に作り話で)。23歳のジャニスは治療費を稼ぐためスコットランドからロンドンへ働きに出る。タイトルについてる「45wpm」というのは”45 words per minute”(1分間に45語タイプ)という意味で、タイピングが遅く職が見つからない。オープニングのキャストのクレジットが校正記号でどんどん訂正されていくのでおもしろい。

ジャニスは大切にしていた南米の民芸品を生活費の足しにするため、蚤の市に売りに行く。ネックだけリュックからのぞいていてギターにしては小さいしと思ったらチャランゴ(アルマジロを使った南米の弦楽器)だと思われます。

民芸品も売れず職も見つからず困っていたところを幼なじみのヴァイオレットに出会い、彼女の働く自動車会社の臨時職員になる。その会社は新車発表会を間近に控えて慌ただしくしていた。ジャニスはいつもハンディカムを持ち歩き、母に見せるために嘘満載のビデオを撮影していたが、初出社の日にデスクの上の設計図を映して怒られる。ジュリア(パッツィー・ケンジット)は、スマートなスーツで決めてできる女演出が激しい、ジャニスの部署の女子職員のまとめ役。郵便室で働くショーン(リス・エヴァンス)が来るとジャニスの頭の中に音楽がなっちゃうんです。ショーンはやっぱり寝癖つきですが、親しみやすいイケメンで社食では女子社員が周りを囲んじゃう人です。固くなった中華麺みたいなスパゲティ(パスタじゃない)がものすごくまずそう。ショーンはジャニスが社内でビデオを撮っていたことから彼女に興味を持ちデートします。自分はロンドンっ子で音楽家の両親を持つボンボンだと嘘をつきますが、ジャニスもそういう嘘は大得意。ショーンに裏があるのは最初から見せていて、利用するために近づいたものの、ジャニスが気になる。二人とも作り話がうまいとか、鼻の穴を動かせるとか、寝癖とか、実は似た者同士。

独特の服装のジャニスは周りの女性社員に溶け込めませんでしたが、実はセンスがいいことがわかりだんだん人気者になっていきます。幼なじみのヴァイオレットも裏切られたような気分だし、いけてる女子社員ジュリアも、実は努力で今の立場を築いてきたから奪わないでほしいとジャニスの前で泣き、二人は打ち解けます。そして新車発表会の日に事件が起こり巻き込まれたジャニスは解決し、それをきっかけにお母さんの引きこもりも治り、紫しか着られなかったヴァイオレットもジャニスのおかげで呪縛が解け(セリフが分からないので事情が分からない)、ジャニスは最後に大嘘を放ち、それで彼女は成功するかもしれません。世の中そんなに甘くないのがUK映画かもしれないけど。ショーンは結局ジャニスに惚れましたが、彼女は彼の手は取りません。まあ悪い人だったし。ベアードは心臓に毛が生えているみたいな度胸のいい嘘つきということ?

そういうエンディングなのも、これも女性による女性のための映画だったからで、『悪女』、『ナニー・マクフィー』とリスさん映画では3本目。地方出身者とか格差が背景にあるみたい。でも楽しい映画でした。20年近く前の映画なので今と比べるとどうかわかりませんが、いけてるジュリも自己演出がうまいだけで実態はお茶汲みを言いつけられたり、ジャニスはOLらしい服装をするように他の女子社員に言われスーツの載った◯ッセンみたいなカタログ回されたり、トイレ会談や給湯室トークや、日本みたいと思いました。

あまり英語がわからないのに、
A「私髪ショートにしようかしら」
ジャニス「やめたほうがいいと思う」
A「そうね、顔が丸すぎるもんね」
ジャニス「ホント △◯×◎□△◯×◎」(口が滑った感じ)
A「……」
ジャニス「あ、そういう意味じゃないから」
っていうのが不思議に伝わる。

そしてリスさん、いい雰囲気のシーンもあるのに、やっぱりただの好青年ではありませんでした。みんなでサルサを習っているシーンでは、巻き込まれたリスさんはダンスしながら背中にあるものを隠すコミカルな動きがこの人らしい。完全な悪人になりきれない役柄も良かったです。クライマックス、車が飛び込んでくるシーンは低予算映画ながら映像も頑張っています。引きこもりだったお母さんが、ジャニスの共犯と疑われてロンドンに連れて行かれるシーンで、美しい木立に思わず笑顔になるところも好き。以前紹介したリスさん映画『ギャング in UK』と同じ頃なのと気楽に楽しめるコメディの雰囲気が似ています。

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image from amazon


この作品の日本版ポスターは「のだめ」の二ノ宮知子さんのイラストで女の子二人だけのもの。
リスさんでミスリードするUK版のポスターとはちょっと違い女の子が活躍する話として公開されたのかなと思います。DVDには「73%の社内恋愛は悲惨な最後をとげる、これもそんな話」とキャッチコピーが書いてありました。

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Rhys filmarathon/ Christmas Carol

まだ暑いのにもうクリスマスか、とお思いでしょうが、少し前に発表されましたが、リスさんは今年はオールド・ヴィク劇場で『クリスマス・キャロル』のスクルージをやるんです。

去年は秋の終わり頃に同じオールド・ヴィクで『キング・リア』に出演、道化役でした。『キング・リア』は現代版なのか衣装がスーパーマンのロゴ入りガウンでした。リア王役はグレンダ・ジャクソンさんという女優さん。wikiによると現在81歳、女優から労働党の政治家になり運輸大臣を務めたこともある方のようです、同一人物か自信がないですが、お顔が似ています。

オールド・ヴィク
こちらのサイトのレビューにも、80歳だけど彼女は素晴らしい、と書いてありますね。
wiki グレンダ・ジャクソン

リスさんは女性監督の作品に3本も出ているし、リスさんマラソンをするまではそういうことも知らなかったので意外でした。
最近は「ブレグジット撤回せよ(CANCEL BREXIT)」Tシャツで写っていたり(Instagram @lahamnett デザイナーのキャサリン・ハムネットさんが行っている運動、少し前に市内でデモもされたようです、シェルターcymruというウェールズのホームレスシェルターのアンバサダーをされたり、今年3月ごろ難民の子どもに適職や生活や教育をというデモにもトビー・ジョーンズさんやジョエリー・リチャードソンさんと参加していました。ごく最近の話題ではウェールズの地元のパブが閉店しそうなので新しい出資者求むという広報活動もされていました。パブの話は、ニック・フロストとサイモン・ペグの映画『ワールズ・エンド』でも故郷に帰ったらチェーン店のパブばかりになっていたとか、TV番組でも大勢の町民が出資して維持しているパブが出ていましたし、そういう時代なのかなと思いました。他にもウェールズ語を残す活動もされています。出演作の映画『アンダー・ミルクウッド』(ウェールズの詩人ディラン・トマス作)も英国の映画賞を取っていましたが「外国語部門」なのに驚きました。同じ国じゃないのって、連合王国なのにさ。でも本当にウェールズ語は全く違います。

いろんなことをされているようで、いろいろ織り交ぜたのがリスさんと思います。過去のインタビューによると40過ぎてから車の免許を取ったそうですが、その時の有名人御用達のドライビングスクールの先生が「一番おもろい生徒だった」とFBに投稿しているのをファンサイトの方が発見していました。

さて『クリスマス・キャロル』ですが、おじいさん路線だあと思ったのですがニュー・エディションと書いてあるので、原作そのままではないようです。またヴィジュアルが20年くらい前のすごくいい写真使っていてちょっとずるいなと思いました。ディケンズの『クリスマス・キャロル』はけちんぼのスクルージが3人の幽霊に脅されて改心する話というくらいしか知らないので読んでみました。新潮文庫は村岡花子さんの訳で、ホームズの延原謙さんの訳のように現代に合わせて少し改変されていますが、ユーモラスですぐ読めました。やっぱりキャラがリスさんにはまる気がして、リスさんの声で脳内再生して読めました(ちょっと危ないやつかもしれない)。リスさんは日本語喋るわけはないのですが。

スクルージは金貸で共同経営者が数年前に亡くなり一人きりの雇用者に厳しくするばかりで、クリスマスの寄付を募る男にも、私は税金をたっぷり払っているし困っている人は税金で運営する救貧院に行けばいいと寄付を断る男です。そんなスクルージの元へ過去、現在、未来を見せる幽霊が3人順番にやって来ます。幽霊がやってくる前、ドアの取っ手が亡くなった共同経営者の顔に見えるのなど軽いホラー表現、ディズニーの喋るカップや動く燭台などに慣れているのでそんな感じに想像できますが、さて舞台の上ではどう演出するのだろう。そしてディケンズは19世紀前半の人だけどそういう想像をしていたのだなあと。原作を読んでみて初めて知ったのが、スクルージには若い頃に恋人がいたこと。でも仕事にのめり込むスクルージのために、彼女は持参金付きの嫁をもらうべきだと思って身を引いたそうです。そういう若い時代も演じるのかなあと、見に行けるはずもないのに色々妄想。元恋人の夫がクリスマス前に一人で事務所にいるスクルージさんを見たよ、寂しそうだねと妻に話しています。そのもっと昔のスクルージが丁稚だった時代、店の主人は今のスクルージよりもずっと優しい人でしたが、スクルージと他の丁稚は「仕事が終わると帳場の下の寝床に潜り込む」と書いてあって、地下なのか、どんな状態か構造か想像もつかないです。

スクルージの身寄りは甥の家族がいるだけで、彼らにも長い間会っていない。3人の幽霊に、雇用者一家が貧しいながらも家族で楽しく過ごしている様子や「あんたそんなじゃろくな死に方はしないヨ」という未来を見せられてスクルージは改心します。昔の小説で子どもも読めるものだからか、私の感覚ではスクルージの改心がとても素直に思え、もっと頑固者を強調したくなりました。原作の時代には変わり者だった人が、現代にはとてもたくさんいる気がします。

Rhys Ifans in the Campaign film of Smythson

Smythson(スマイソン)秋冬キャンペーンのフィルムにリスさん登場です。
非日常への旅ということで、とても素敵なフィルムです。

Where is the palace?

↓↓↓Smythson HP(リンクははっていません。)
https://jp.smythson.com



Rhys filmarathon / SPIDER-MAN and Peter Pan

スパイダーマンホームカミング」おもしろかった。
ELEMENTARY」のマイクロフト役のリスさん好きから「アメイジングスパイダーマン」を見て、アメコミみたいな絵が描きたくなりよりぬきコミックを買ってみると、アメスパは原作に沿ったお話でした。悪役コナーズ博士の細かい設定もわかりました。

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今回の「スパイダーマンホームカミング」はアヴェンジャーズなどのヒーローものとからめた新しいシリーズで、ピーターが子どもだというところがおもしろかった。トム・ホランドのスパイダーマンに比べるとアンドリュー・ガーフィールドはすごくしっかりしているし、秀才として描かれていました。もう一つ前のスパイダーマンは、あまり覚えていないけど、わりと普通の高校生だった気がします。

キーワードは「忍耐」。企業で働くか一匹狼でいくかみたいなね。忍耐が足りない時ってピーターくんみたいなもんなのかなあ、と思ってちょっと息苦しかったです。まあ、私のヒーローは、ギャヴィン・カヴァナ(『パイレーツ・ロック』でリス・エヴァンスが演じた)、「Are you breaking laws? Are you breaking rules?」というDJです。法をおかしたいわけではありませんが、自分は真面目なのでこういう適当な人になったら楽しそうだなと思います。キャストも楽しく、バットマン→バードマン→翼男とか、ジョン・ファブロウ&ロバート・ダウニーJr.は私にとっては「シェフ」。「バードマン」も「シェフ」もどちらも好きなので。ドラマ「ベター・コール・ソウル」の悪役マイケル・マンドゥも出てきたし、学力大会のメンバーは「グランドブダペストホテル」のゼロ。

アメスパでは、ピーターはGFのグエンの部屋の窓から彼女を連れて夜空を飛ぶ場面が描かれていてピーター・パンしています。映画でよく使われる表現だと思っていました。しかし原作コミックにピーターがずっと大人になった時、もうヒーローに憧れた子ども時代は終わりにしなくてはとスーツを捨てている場面があるのです。空を飛び敵と戦う子どもと大人という対立概念こそピーター・パンです。そう考えると、自分で実験して右腕を失った隻腕のカート・コナーズはフック船長でスパイダーマンの敵役にふさわしく、フックを演じたリスさんにぴったりです。

「スパイダーマンホームカミング」は全く違う描き方でおもしろかったけど、ビルの瓦礫に埋まるのは原作だなと思い、GFとお父さんはアメスパだなと思いました。「スパイダーマンホームカミング」のエンディングのイラストがかわいく子どものスパイダーマンにぴったりでした。アメコミみたいな絵はまた挑戦したいです。

Rock, comic, novels, and miles of films(6) 薦めていただいた作品5 カサゴだっていいじゃない

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SHERLOCK/メアリ(4)最後の挨拶

これまでも長々とメアリのイメージを読み取ろうとしていたけれど、やっと「最後の挨拶」にたどり着きました。読んでみるとそういうことかとわかります。

この話はホームズシリーズの最終話で、第一次大戦中ホームズが敵国ドイツのスパイを出し抜く胸のすく話。作者ドイル先生が激化する戦況を憂い、前作からだいぶ間が空いていたのにわざわざホームズに解決させるために書いたものだそうです。

アメリカ人のアクセントもかすかにあるメアリ、私は生まれはアメリカで過去を捨ててイギリスに渡ってきた人だと思っていましたが、ロザムンド(これは本名ですよね?)というイギリス人らしい名前とE1でエイジェイを巻くために逃亡していた飛行機のシーンでアメリカ人女性の振りをするのが、「最後の挨拶」だと思いました。詳しくは読んでみてください。

少しだけコベントリーの悲劇を思わせるドイツ人スパイの失敗談(英国はこの逆をやっていた)や、S3の時に色々なネッ友の方と話させて頂いた時懸念されたシャーロックのスパイ化問題に、私はわけもわからず「最後の挨拶」という原作があると反論しました、また別の方のメアリの登場によりシャーロックが物語から追い出されているようだというご指摘(とても鋭いですね)、本来ホームズがやった役をメアリにさせている、全部ここに向かって流れていたのだなと思いました。

S4E1の飛行機もボンドエアーやS4E3の飛行機に乗った少女に呼応しています。S4は今まで通りの原作のエピソードとさらにシャーロックたちが通過してきた過去に襲われる構成になっている過去エピソードやモチーフが違う形で埋め込まれている複雑なストーリーなので、シナリオを書くにも制約があったと思います。一見穴や矛盾がたくさんあるようですが、当たり前だけどセリフにはきちんと意味があり、作者のやろうとしていることのための必然性がある本当によくできた作品だと思います。もちろん自分はただの読者、視聴者なのでそのようにしか見られませんが。名付けにしても「シャーロックとつけろよ」というのを、S4での3人が内輪ネタにして笑い、S3とうってかわった弛緩した雰囲気が好きだし、洗礼シーンには「ロザムンド」がわかるとそ同時にまた別の意味があると勝手に思っています。

最後に飛行機でアメリカ人のふりをしていたメアリ、あけすけで品のない感じが『ダウントン・アビー』の、アメリカ出身のクローリー伯爵の妻コーラの母親(シャーリー・マクレーン)のようでした。「誰がイギリスから太陽を隠したの?戦争中に盗られちゃったの?」というセリフも「最後の挨拶」に呼応していながら、第二次大戦戦勝国の英国のたどってきた歴史との皮肉が効いた英国人の自虐になっていておもしろいので比べてみてください。

映画『聖トリニアンズ女学院』

『聖トリニアンズ女学院』(2007)



学園コメディです。
ルパート・エヴァレットとコリン・ファースが共演しているので前から気になっていたのですが、とっってもバカバカしいコメディが見たいときにいいです。女性陣がボンドガールだったジェンマ・アタートン、タルラ・ライリー、ジュノー・テンプルちゃんと、この世代の女優さんはクリスティものや映画でよく見るので好きです。他にもスティーブ・フライとかトビー・ジョーンズと豪華です。学園長がルパート・エヴァレット、悪の巣窟の学園を潰そうと敵対する文部大臣をコリン・ファースが演じていて過去作品『アナザー・カントリー』や『高慢と偏見』などをネタにしていました。何十年経ってもネタになるのがおもしろい。映画では学園長の姿をスルーしていて、深読みしたくなりました。漫画原作で過去にも映画が作られているそうで最初のは1954年なんだそうですよ。このメンバーでは2もありますが未視聴です。

SHERLOCK S4/メアリ(3)殺し屋とガーディアン

メアリについてもう少し書きたくなりました。
S4E2でアイリーンからメールが来て彼女のことがシャーロックとジョンの話題にのぼります。このシーンでアイリーンとメアリが犯罪者同士で呼応していて、犯罪マニアのシャーロックとスリルジャンキーのジョンにふさわしい。

(1)有名なメアリ
メアリは、二人のことを許し先に進ませる人物なので、S3E1でシャーロックがスキャンした時に出てきた「Guardian」、メアリと爆弾犯という記事では新聞のガーディアンの意味を取りましたが、守護者も含むダブルミーニングなのだと思います。Maryという名前は単純に考えて聖母マリア様。関係あるかわかりませんが、S3E2の私は誰でしょうゲームの時「madonna(聖母)」というキーワードが出ており、この時はジョンのことを指していると言われていました。

前回骸骨について考えた時、もう一人のマリア、骸骨と一緒に描かれるマリア・マグダレーナ(Mary of Magdala リンクから絵が見られます)を連想しました。聖書に疎いのですが、この人も重要人物でダ・ヴィンチの「最後の晩餐」ではキリスト様の隣に描かれていて、娼婦だったのがキリストによって悔い改めた人です。過去を改めるという意味でも罪深く振り幅の大きい職業殺人者にしたのではないでしょうか。またマリア・マグダレーナはキリストの子を産んだという説もあるので、聖母マリアとともに出産エピソードも合います。

ちなみに作者ドイル先生の母上の名前がメアリだったので作品にメアリが何人も登場しています。


※この話に宗教イメージはいるのかと思いながら書きました。名前の意味にもこだわっているのは感じているので書いておきます。

(2)家庭教師について考えてみる
原作の中では、メアリ・モースタンは寄宿学校在学中に、インドに駐留していた軍人の父親が行方不明になり、その後住込家庭教師をしていました。母は亡くなっているらしいのでドラマの中で孤児設定なのにもうなずけます。以前家庭教師と殺し屋の心もとなさが似ていると書きましたが、まとめて書きます。

ドイル先生の原作『四つの署名』でも、メアリの父の友人だった軍人ショルトーはインドからひと財産持って帰ってきた人でした。あの時代そういう人が原作の中にはけっこう出てきます。そして孤児のメアリは苦労人だと思います。雇い主が優しい婦人で気に入られていたので良かったけど。

『100回読んでもまだ面白いシャーロックホームズ 大人の楽しみ方』諸兄邦香 2006年 P44~45
当時家庭教師のことをこのように書いてあります。「彼女たちは上流または中流階級の出身で不自由なく育ち、しかるべき教養を備えたのだが、結婚前に家運が傾き、働かなければならなくなってしまったのだ。いわゆる「零落した紳士」の娘でメイドではないという誇りを持ちながらも、実態は住み込みの雇われ人だった。年棒は40ポンドから50ポンド(96〜120万円 この本では1ポンド=24,000円)。当時、2万人強の家庭教師がいたそうだ。」ワトソンはメアリが優しい主人に仕えていたので安心したことも書かれています。
家庭教師は身なりも整えないといけないので大変だろうと思います。この本によると、ドイルは決して作品に出さなかったがというただし書つきで、女性の職業では、当時は身売りしていた人が一番多く16人に1人だったそうです。ちなみに当時軍隊は下士官や兵隊は結婚が禁止だったそうです。

家庭教師も子どもが大きくなれば寄宿学校に行くので用済みになり、結婚相手を見つけるか次の雇い主を見つけないといけないし、見つからなければ身売りする場合もあるとどこかで読んだような気がします。クリスティのドラマ版『そして誰もいなくなった』(チャールズ・ダンスさんが判事役のもの)では、家庭教師の女性が財産と恋人のために教え子を殺したことが、手の焼ける子ではなかったのになと感情移入できませんでしたが、もう小さい子ではなかったので暇を出される日も近かったのかもしれません。

この前から書いている映画『悪女』から家庭教師と軍人は大変だという話を書きます。以下長いのでこの先の(3)まで飛ばしても大丈夫です。

映画『悪女』はサッカレーの『虚栄の市』の映画化で、女性監督によって描かれています。調べて見るとナポレオン戦争の時代(1803年–1815年)なのでホームズよりは7、80年前でイコールではないですが参考までに。
関連記事:Rhys filmarathon/リースと悪女

主人公は孤児なので寄宿学校ではメイド兼生徒で教師の扱いがひどく、卒業後家庭教師になります。雇い主の家に行く前に滞在したお金持ちの親友宅から乗合馬車で出発するのですが、その日は雨でお金がないので馬車の屋根のある部分には乗れず外に座って行きます。見かねた親友が差額を出すと申し出たのですが断ります。雇い主の準男爵の屋敷は田舎で(多分領地にあるマナーハウスと思われる)、着いたときには髪はボサボサ、ぬかるみの中に放り出されたトランクを引きずりドレスの裾も泥にまみれて、ひどいなりで主人に会います。主人は田舎者で気さくな人だったので良かったですが普通なら蔑まれそうな場面です。夜主人公が自室でもう寝ようかなとくつろいでいると、主人が勝手に入ってきてもう消灯だと言って出て行く。そんな人ばかりじゃないだろうけど他人の家というのは大変。また親友の婚約者に会った時、この人は富豪の息子で主人公に気がありながらも、いくら美人でも孤児の家庭教師を妻には絶対できないと蔑みます。社会的地位はそんな感じです。

その後、主人公は雇い主の軍人の次男と結婚します。彼は爵位と財産を持つ伯母の相続人でしたが主人公との結婚で勘当されます。財産がないので、戦地にいない時は多分お給料がほぼなさそうでカード賭博で稼いでいました。召集がかかり戦地のブリュッセルに妻も同行、戦勝祈願パーティ(最高に着飾っていて、緊張感なくとてものんきに見えます)の最中に出撃命令がかかり、妻に自分が死んだ時の当面の暮らしの立て方の指示をして出て行きます。夫はパーティ中も妻のためにカード賭博で稼いでいて、その他も新しい制服と馬は置いていくから売れと。親友の方も婚約者の軍人と結婚したのですが、こちらは夫が戦死して、実家は破産しているし夫の実家には勘当されているので、その後両親と貧乏暮らししながら子どもを育てます。軍人はもともと財産があるか、軍功を立てるか、海外赴任で稼ぐかしないと大変そうです。

この映画は主人公がとても明るく強く辛気臭くないのでおもしろく見られました。時代背景は結構忠実に描いているということでした。まあ、現代的かもと思うところもありましたが、経済状況が詳しくおもしろかったです。

2004年、ミーラー・ナーイル監督
リース・ウィザースプーン主演『悪女』

(3)死んでいた子ども
S3E3で自分の素性を明かす時、同じ年頃の死んだ子の墓からメアリ・モースタンという名前をとったと言っています。映画『ジャッカルの日』に出てくる殺し屋の男が偽の身分を手に入れるのにメアリと同じように生まれの近い子の墓石を見つけて出生証明書をとった(死んでいるのにもらえるものなのか不思議でした)と言っていました。

方法はさておき、シャーロックとジョンはモルグで出会った時死んでいた(比喩です)と書きましたが、メアリも過去を捨てて一度死んだ人。メアリに出会ってジョンもシャーロックを失って死んだみたいだったのがちょっと生き返っているのですよね。「Many happy returns」でジョンはまだ半分死んでいます。

「Many happy returns」、そういえばシャーロックが自分の誕生パーティに欠席したからビデオレターが残っていたという話では… S4E2でアイリーンからメールが来て誕生日が分かったと思ったのになんでだろう。まああのシチュエーションは再生した二個目の誕生日と言っていいけれど。ここでもビデオレターが出てきたのですよね。つくづくすごい構造だと思います。

いろいろ書いてきましたが、メアリは女性とか関係なく危険な仕事を夢中でしてきたけど(この人もアドレナリンジャンキーだと思います)ふと気がつくと、あれ、となったのだと思います。そんなわけであの突入で一人生き残ったのもチャンスと思ったのではないかと。出産にはラストチャンスな感じだし、マグヌセンの手を払いのけるには妊娠は足枷。仕事だけでいいと思っていても何を得てきたのだろうと虚しくなる時もあるし、平穏な暮らしに移れば忙しい日々が懐かしくなる。今は仕事か家庭かという時代ではないけれど、両方取ってももっと大変で難しい、そういう現代の女性を描いていると思います。ゲイティス&アマンダさんコンビで名探偵ポワロ「鳩の中の猫」を見たことがありますが、彼女は容疑者なのにちょっとお茶目な人で、メアリはアマンダさんの持ち味で宛て書きの部分もあるかと思います。彼女だからこういうメアリにできたのだと思います。

小ネタですが『忌まわしき花嫁』でメアリは乗馬服を着ていましたが、S4でバイクに乗っていたのが嬉しくなりました。ほらバイクはSteel horse(鋼鉄の馬)と言うし。飛行機でアメリカ人女性の振りをしていましたが、ロザムンドという名前から推測して実はメアリはイギリス人でしたという種明かしのシーンだと思います、多分。もう一つ、メアリはマイクロフトがつけた監視役疑惑がありました。S4を見るとどっちだろうという感じですが、彼女はS3でnurse(看護師)と言われていましたがnurseには子守の意味もありguardianにも監視者の意味があります。

SHERLOCK S1E1/シャーロックとジョン、モルグで出会う

ネッ友の方が、同じものを見ているはずなのにまるで使っている望遠鏡が違うのかピント合わせが違うのか見えているものが違うようですね、とおっしゃっていて言いえていると思いました。私のチューニングはS4E2(HOMEという記事でうっすら書きました)です。ずっとこの結末に向かってストーリーは進んできたのだなと思いました。そこが受け入れられる人、受け入れられない人で受けとめ方も違うのですが、私はおもしろいと確信しました(が、すぐひよる自分…)。採点ポイントがそれぞれ違うので仕方がないし、いろいろな考えを知るのはおもしろいです。別のネッ友の方が、西欧では自殺は忌避ですとご教示下さいまして、前回書いたことはいつ死んでもいいとか死のうが生きようが構わないとかそういう気分を含んでいますと追加です。S3E3は第二のライヘンバッハだと思うのですが、もう少し考えるので、今回はS4E2と離れたところを書きます。こんなヘボ記事にネッ友と書かせていただくのが申し訳なくて控えていましたが、書きます(ご迷惑かもしれませんが)。S4の初めの方に書いた記事はずれているし核心をついていないと思うので、ぼちぼち手を入れていきます(- -;) ネッ友の方の記事を拝読して、お互いの描く骨格はだいたい近付いたけど肉付けの解釈が違うので、自分まだぶれているんだろうなとか、性格の一貫性とか敏感じゃないしストーリーの進行で変化もあるということにしているので結論は保留です。

杖と傘、ジョンとマイクロフト
ジョンがマイクロフトと初めて会ったところが見たくて「A study in pink」を見直してみました。
「昨日出会った二人が一緒に捜査を始めて、週末にはおめでたい報告(happy anouncement)が聞けるかも」と皮肉を言われていたなと。この時のジョンはPTSDで足が悪く杖をついていました。初登場のマイクロフトは傘をついて片足をちょっと後ろに組んだ鶴のような(正確には違うけど)独特のポーズで立っていました。杖と傘、片足が対になったシーンで鏡に映った二人のようです(左右は違うけど)。さながらシャーロックを間に二人が対決しているようです。

ユニオンジャックとビリー・ザ・スカル
引っ越ししたての221Bにユニオンジャックのクッションがあって、いつもジョンの椅子の方にあったので彼のロイヤリティの象徴だっと思っていたのですがいつの間にかなくなっています。ユニオンジャックはもちろん兵士だったジョンのロイヤリティをあらわし、消えたのはだんだん日常に馴染み兵士からシャーロックの助手という役割に変わったからだと解釈できます。

骸骨のビリーもいつの間にかなくなっています。ジョンという話し相手がいるので必要なくなったのでしょう。クッションとビリーがビフォー・ジョンのシャーロックの世界を表す二つの小物だと考えた時、ユニオンジャックはマイクロフト、ビリーは友人(S4の井戸で見つかった骨と呼応)でありシャーロックのいつ死んでもいい願望もあらわしているように思いました。

もともとシャーロックは死の気配がつきまとう印象で、ジョンのいない世界=死だと思いました。シャーロックとジョンはモルグで出会って、この時のジョンは戦場帰りで死んだみたいになってるしシャーロックは死人にムチ打っているという、ドイル先生すごいな、モファティスすごいな。二人とも死の側にいるのが殺人運転手「A study in pink」で化学反応を起こし、生の世界へ二人は移動する。いつ死んでも構わない感じが漂うシャーロックが連続自殺事件という自殺を扱っているのもよくできていると思います。

ここまで考えてみて、何かエビデンスがあるといいなと思いました。
昔の絵画のテーマでよく頭蓋骨持って瞑想、もの思いにふけるみたいなのありますよね。「メメント・モリ」、死を忘れるなっていう(門外漢なので…)。

Human_skull_symbolism 骸骨の象徴するもの(リンクしています)
(全部きちんと読んでいませんので参考程度に。)
ここからおもしろいと思ったところを抜粋します。(横着してざっと流し読みなので間違っていたらご指摘ください。)

One of the best-known examples of skull symbolism occurs in Shakespeare's Hamlet, where the title character recognizes the skull of an old friend: "Alas, poor Yorick! I knew him, Horatio; a fellow of infinite jest. . ."

よく知られている骸骨の象徴の例にシェイクスピアの「ハムレット」があり、主人公は骸骨は自分の古い友だとしている。
「ああ、可哀そうなヨリック、
ホレイシオ、おれはよく知っているんだ。素晴らしく奇抜な冗談ばかり言っていた。」※


※台詞の翻訳はハムレットの対訳サイトから引用しています(リンクしています)。


シリーズの最初の方に「ハムレット」との関連の説明を読んだ気もします。
長々ともういいよという感じですが、この引用セリフがあるシーンにはオフィーリアの死は自殺か事故かわからない話があり、S4E3ではNTL「ハムレット」のオフィーリア役の人がユーラス。NTLのオフィーリアは目撃者であるという解釈も現代ミステリーみたいでおもしろかったです。


Our present society predominantly associates skulls with death and evil. However, to some ancient societies it is believed to have had the opposite association, where objects like crystal skulls represent "life": the honoring of humanity in the flesh and the embodiment of consciousness.

現代では骸骨を死や悪と結びつけるのが主流だが、古代にはクリスタルの骸骨を生命の象徴と考えているものがあり、そこでは肉体(直訳しましたが生身、生きている人間ってことですよね)の中の人間性や意識の具象として敬意を払われています。

クリスタルスカルは、ミニエピソードの「Many happy returns」の中でジョンの家(メアリーと住んでいた)のリビングのキャビネットの中に出てくるとネッ友の方に教えていただきました。美術さんのコメントに書かれているということも教えていただきました。その時はジョンがシャーロックの死から酒に逃げていた時代だったので、うつろなジョンの心を表しているのかなどとコメントさせていただいたのですが、正解は「生」を表しシャーロック復活を意味していた。

同時に、シャーロックにとってジョンのいない世界は死んでいるにひとしく、「死んでいた2年間」はジョンと離れていて、S4でジョンに手助けを拒否された後は薬に溺れ死の側に寄っています。クリスタルスカルのことはこじつけかもしれませんが、Jhon=lifeだと思います。

ジョンはマイクロフトに「time to decide」(シャーロックと関わって戦場を見る生活をするか決めなけれないけない)と言われ、シャーロックはホープに薬を渡されて「time to choose」(選ぶ時だ)と言われています。こういうおもしろさが翻訳ではわからなくなる… まだ少ししかわからないので、もっと英語がわかるようになりたいです。

紹介したwikiの英語記事を読んでいる時、mortality(死)がmoriartyに見えて仕方がなかったです。彼のことはずっとラテン語の死(mori)メメント・モリ、死を忘れるなをずっと連想していたのですが、アナグラムっぽいです。(モリアーティのスペルを間違えていたので訂正します)

SHERLOCK S4/メアリ(2)〜マグヌセン顛末と誓いについて〜

S3E3のシャーロックのマグヌセン射殺についてまとまりました。
シャーロックは、ジョンとメアリの間から去りたかった、一種自殺なのではないかと思いました。

おさらい
クリスマスのシーンで、マイクロフトとシャーロックはタバコを吸っている。
マイクロフトはマグヌセンは必要悪さと容認しながらも、「ドラゴン退治が必要だ」と言っている。さらにその前に極秘情報の入ったパソコンという餌をちらつかせている。マイクロフトの思惑をシャーロックは知っている。マイクロフトもシャーロックが理解していると思っている。薬でみんなを眠らせ、シャーロックとジョンはマグヌセン邸にメアリの情報資料を奪いに行く。

ヘリでマイクロフトたちが来ているのも狙撃手がいるのも見えていて、シャーロック自らマグヌセンを撃った。必要ないのに撃った。

その直前マグヌセンに顔を弾かれていてもメアリのために耐えているジョンを見るのにイラついた。
(銃はジョンが持っていてシャーロックがジョンから取って撃っている)
どうしてジョン自ら発砲しなかったのかという疑問を自分は思いつかなかったけど、メアリの暴力的な過去を否定したし丸腰の相手に暴力に訴えたくなく、従う形で抵抗していたのではないでしょうか。

表向きは、頭の中にしか情報がないのなら頭を破壊するしかない(怖いこと書いてる)。
またおさらいで、例えば逮捕の場合は、証拠不十分で不起訴、あるいは彼の新聞社やメディアを使って不当逮捕のキャンペーンをする・政府の信頼失墜・対外関係悪化、有罪になってもいずれ出所する。奪うべき書類や情報がないので、本人が生きている限りは脅かされる結果になる。
というわけでマイクロフトの作戦では政府の極秘情報を持っていた疑いで抹殺となるはずだった。

この時点ではS3E2の誓いからメアリのために身を挺してシャーロックは守ったと思っていました。
S4を見るとシャーロックはこのどうにもならない三角関係がしんどくて逃げたくなったのだと思いました。
S4E1のメアリ、なんだか居心地悪いかも、身を引きたいかもという気がしました。自分が勝ち取ったら、意地でも離すなという意見もあると思いますが、なんだかそう感じました。子どもがいるのでそうもいかないのもわかるし。そんなわけで、S4E1、2はメアリもシャーロックも死にたがっているような気がしていました。それはすでにS3E3でシャーロックはそうだったのじゃないかという気がして、この事件の説明がつくような気がしてきました。多分自分でもそこまでしようと思っていなかったのに衝動的行動に驚いたのがあの顔、子どものシャーロックは感情のまま行動したシャーロックなのではないかと(兄からもそう見えているのだと思う)。
※追記 本当に正義感から憎かったのだと思う、途中までは。

メアリがシャーロックに手を汚させてしゃあしゃあとしている、という点を弁護するなら。
一度目の襲撃が失敗してももう一度襲えばいいのにと思ったんです。でも妊娠していたから身軽に動ける最後のチャンス(でも相当しんどいかもしれない)だったんじゃないかと思いました。S3E3のシャーロックへの発砲は生かすか殺すか迷ったためらい傷(発砲)のような気がしてきました。避けたにしてはみぞおち近くで危ない場所でした。

S3E2の「His last vow」というものが、メアリに向けてのジョンを取らないという誓いだったのかなという気がしてきました。

ワトソンも育児疲れもあるかもしれないけどこの三角関係も浮気メールの原因かもしれないと思いました。というわけで、ジョンが距離を置くべきではなかったのでしょうか?悪いのはジョンになってしまった。とはいえ仕事変えるのも無理があるしね。S4E2で「なぜメアリを守らなかった、誓ったのに」となんでそこまで誓いにこだわるのだろうと不思議な気がしたので、ジョンは二人より鈍感で逼迫していないのかもと思いました。シャーロックも兄の任務とか理由つくって逃げたらよかったのに「逃げる」のは嫌いなタイプだし。そう考えるとS4E3も小姑との戦いに見えてきました。

結局メロドラマになってしまった。よくできた二次創作といわれるのもわかる気がします。
でもこういう表現ならいいかという気がします。あまり原作の主人公二人がタイムスリップしてきたみたいな気がしなくて、やっぱり別の人という気がする。(と、書きましたが、やっぱりつながりを感じると追記します)

もうひとつ、自分は他作品情報で補完してみているところがあるのですが、この前書いたサッカレーの『虚栄の市』の映画版『悪女』、ホームズの時代よりは数十年前ですが住込家庭教師が心もとない存在だったことがよくわかるので、現代版で「殺し屋」というのもだいぶ違うのに心もとなさが通じる気がしました。『悪女』の中では、軍人の妻で夫を戦争で亡くした人も出てくるのですが、実家が破産していて夫の実家には勘当されているので暮らしはすごく大変。軍人も戦争がない時は暮らしが大変そう。そんなわけで軍人の父が行方不明で家庭教師をしていたメアリ・モースタン、優しい主人のおうちにいたので良かったけど、なかなか心もとない境遇だったろうなと思います。

SHERLOCK S2E1/カラチ

S4でアイリーンは生きているらしいことが明かされました。
それまではシャーロックはカラチでアイリーンを助けたという意見と、あれは想像で現実ではないという2つの意見がありました。私は前者の助けた派。どちらにも取れるように作ってあるけど、助けた確率の方が高く見えていました。

助けていない派の人の理由は、実際にシャーロックが現地に行ってジョンが気がつかないのが不思議とか、一人でテロリストをやっつけられるのかとか実現性の低さからのようでした。

S2の段階では、

アイリーンは生きているのか
マイクロフトがカフェでジョンに言ったことは本当だったのか
マイクロフトはシャーロックに協力していたのか

という3つの疑問が残りました。

助けた派の私は、221Bにいるシャーロックの表情から本当のことだろうなと思い、まさに処刑されようとしている時にあの着信音が聞こえてくるアイディアはおもしろく妄想で終わるにはもったいなく、さらにシャーロックが妄想するタイプじゃないからとか、なんとなくでした。しかし今回見直すと、ちゃんと答えが描かれていました。

シャーロックがジョンに無理やり渡させた証拠品のアイリーンのスマホを見ると、画面にそれまでのメールが現れます。
ゆえにジョンが言った「スマホの中は空っぽだ」は、マイクロフトがジョンに嘘を言っていたということ。マイクロフトがジョンに話したことは大部分嘘で表向きの話。ということで、兄弟二人で極秘作戦というか私的作戦を行っていたのではないかと思います。本音はやっぱりシャーロック一人で助けた方がいいのですが、マイクロフトの関与ありだと思います。あの頃はその後のアイリーンがマイクロフトのエージェントとして働いたらおもしろいかもなどと思っていたものですが(エンタメですから)、きっとそういうことと無縁の暮らしをしていると思います。

それにしてもS4E2でアイリーンからメールが来たからバースデーメールだと推測するジョン、すごい。

今見るとS2の時はジョンがアイリーンに対してあんなに険しかったことが新鮮でした。その後、モファットさんはカラチの熱い夜を独自に書かれました。その時もそれってどうなのとざわつきましたが、それがあったのでシャーロックはS4終わり頃にはそうでもおかしくない気になっていました。たぶん、これも嘘。

SHERLOCK S4/Home

お盆休み後半でS4とか前作見直しとか、無駄なことをやってしまいました。この前、アイリーンのところを見てやっぱり答えが書いてあったと思いました(実際に救出派、そしてマイクロフトも関与)が、S4もそうでした。周りの前評判が良くなかったので、いいところを見ようと(セリフの中にも出てきましたね、モンティ・パイソンテーマ)していました。S4はエピソードがパラパラしていてマイクロフトが録画を改竄しているんじゃないかというくらい、初めて見るような気がしていました。『忌まわしき花嫁』はスペシャルとしてはおもしろかったけど、実はシリーズの流れの中ではそれほど好きじゃなくて、ライヘンバッハの滝がやりたかったんでしょうという。『SHERLOCK』はルパート・グレイブス(レストレード)だし、『ELEMENTARY』はリス・エヴァンス(マイクロフト)だなと思いました。

S3・S4がシャーロック視点に転換していて、余計心情がよくわからないという構造は原作の「白面の兵士」とか(「ライオンのたてがみ」もかな?)がホームズが書いたことになっているからでした。「白面の兵士」は当時不治の病とされていたハンセン氏病にかかった疑いのあるワトソンの友人を助ける話で、病気のことを医者が書くのは都合が悪いからという理由でホームズが書いたことになっているとか。この話は結末が爽快だったので子どもの頃読んだのを覚えていましたが、よく読ませていただいているサイトの管理人様がお好きな話でよく書かれています。ちらっとだけ出てくるホームズの心情、読まれてみてはいかがでしょうか。やっぱり鋭いなーと思いました。ドラマがシャーロック視点になって、ジョンとの問題を語っているのはやっぱりうまいなと思いました。パッと見ておもしろい映像作品もいいですが、構造とか要素とかがわかってくる作品もやぱりおもしろい。でもドラマとしてそれでいいのかどうかよくわからない。

SHERLOCK S4/メアリ(1)

S3の時はとても好感度の高かったメアリですが、悪い人になると知っていたので、騙されないぞと思って見ていました。今は弱いチームに肩入れしたいサッカーファンみたいなもので、メアリおよびシリーズを応援するほうが自分にはおもしろそう。念のために、あの主役二人の役者が演じていれば何でも完食して、褒めちぎる、というタイプの視聴者ではありません。

シリーズを見るとS1とS2がモリアーティ、S3とS4がメアリという主要人物を配した2シーズン1セットのストーリーと分けられ、ビフォー・ライへン、アフター・ライヘンでジョン視点(S1とS2)、シャーロック視点(S3とS4)と切り替わるドラマと言えると思います。

というわけで、メアリはとても重要な人物として描かれています。シャーロキアンの方々の間でも、大切に扱われている人のようです。S4では初見では二人の間に割り込んだことの後ろめたさで居心地は良くなかったかもしれないと思いました。そんなわけでさっさと身を引いたにしては幼い娘に執着がないと感じました。無理に理屈をつければ、どうせ逃れられない運命なら、娘のために、とか言えそうです。

S3のなんとしてもワトソン一家を守るんだというシャーロックの誓いがどういう気持ちで言っているのかまったく語られていなかったのでよくわからなかったのですが、S4E1ではシャーロックは「She is my friend.」と言っています。だから守るんだと。シャーロックにとって「friend」は特別、バスカーヴィルで「友達は一人もいない」と言ってジョンを怒らせました。そして赤髭。S3の頃は、メアリにジョンを取られ、なんとか親友の妻として尊重しようと努力しているようにばかり思っていました(ドラマは見せているだけで想像しているのは視聴者)。このへんな3人の関係はシャーロックが変人ゆえ二人から距離を置かないせいだろうと思っていました。でもS4を見ると、メアリは男のフリーランスチームの一員でやってきたことから、SHとJWは仲間として自然に上手くやれる人物だという説明のようにも思いました。S3の時は一人で仕事をするタイプのスパイだと思っていました(今はソロでもチームでもできると思う)。原作も夫への秘密を抱えた女性が恐喝され警察にも訴えられず八方塞がり、というおもしろさがありました。さらに夫は自殺してしまい彼女は捨て身で復讐に行く。メアリは、自分に能力があり(多分シャーロックより下と思っていない)まして秘密を人に漏らしたくないので自分でなんとかしたかったと思います。

S3を見直してみるとメアリ=シャーロックで、ジョンから見るとメアリは女性版シャーロックでブロマンス的なことを解消できる人物(その辺深掘りしません。あざといキャラとかそういう風に言うつもりも全くありません)。シャーロックは自分と同等、同質の人物としてメアリをしぶしぶではなく積極的に認めていると思えました、性別関係なく。前に能力主義と書いたけど、ただ有能だからというわけではなく、メアリ全体とか寂しさとかから認めている気がしました。子育て中のメアリを捜査に連れ出すのもシャーロックなりの気遣いと変人ゆえの常識にとらわれないところなのかも。単にお子様なだけかも。

S3E3クリスマスのシャーロックの両親宅のシーンで、パパが、妻は天才だけど私はそうではないから口喧嘩もできない、でもいい女だから愛している、と言っているのが、メアリとジョンの状態でもあるような気がしました。メアリが頭が良くて戦闘能力が高くても日常生活の能力とはまた別分野だしなんとかなっている気もする。彼女のジョンと違いすぎることとか過去を語れない悲しみのようなものはシャーロックの天才の孤独(陳腐だ)に通じるのかもと思いました。そして彼女がシャーロック女性版だったら相手のことが見え過ぎちゃって困るだろうと思ったりもしました。多分、好きな相手のことは敬意を持って上手くシャットアウトしていると思うけど。凄腕のメアリですが、S1E2でシャン将軍が「殺し屋が撃って死なないのは本気で撃っていないから」というセリフも、一応『SHERLOCK』の世界観としてまだ生きていると思っています。さらにS4E1でメアリが逃亡してシャーロックたちと再会し、Ajayに狙撃された時、銃をシャーロックに渡す時があり(メアリが持っている方がいい気もしたけど)シャーロックを信頼しているということだろう。

ノーバリさんとの対決はあのアーチ状の水槽は、シャン将軍のいた地下のアーチ状の壁を思わせます。あの時はシャーロックが弾道がどうのって言って発砲を防いだんだけど。あの時ノーバリにシャーロックが言っていることは容赦がない内容だけど、内容よりも(だって男性にも容赦ないし)常識のある人はそういうことを言わないというシャーロックの変人ぶりがおもしろいというかおそろしいというか。シャーロックはここでも死にたい願望があったのかもと思いますが、マイクロフトや警察呼んでいるし…。挑発せずほっておいたら証人のメアリを撃つ? ノーバリさんとメアリは日の当たらないところでやってきたことで共鳴していたと思います。

女性の扱いがどうとかということは、あまり『SHERLOCK』で思わない。むしろ世評にそうかなあと思う。UKものは共通して、女王陛下の国、かつての女性首相、レディ・スモールウッド(S3を見るとエドウィン卿よりもえらい人のような気がする)など、女性優位な部分を取り出して男性の自虐、自嘲みたいな感じはある。それがエクスキューズになっているとかということでもなく。「常識のある人はそういうことを言わない」と似て、反フェミニストなら叩かれそうなことには絶対近づかないのではと思う(勝手な持論です)し、なんとなく現代の文化人で反フェミニストも難しそうな気がします。「縁の下の力持ち的な人にスポットを当てている」というご意見を読んだことがあり、そちらに一票かなと思います。ノーバリさんの報われない状況、どうなんでしょう。S1E1の男性のホープにも似ている。彼女が女性だから報われないというのであれば社会ではよくあることだし、作り手はないみたいな顔をしているよりはスポットを当てるほうがいい。この人の上司がレディ・スモールウッドで、大使もわざわざちょっと嫌な女性だったし、そういうところを言われているのかな?ないものとして全く取り上げないよりはよほどいいのではないだろうかと思います。
(2017.8.20追記)
さらに、ストーリー上主人公のために女性が犠牲になっているからといって、それが特有の問題であるように取りざたするのも違うと思います。『忌まわしき花嫁』で感じたことはその問題を違う面から眺めていたのだとわかりました。もっと強く同じことを感じた作品は映画の原作本『ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件』(ミッチ・カリン)でした。AだからBだという考え方はしたくないけど文面からそう感じました。(何を書いているかわかる方はわかっていただければ良いかと)そう感じるのも仕方がないけど、特有の問題として責めたくない、です。

S4E1はメリル・ストリープのサッチャー元首相の映画と救出を待つ大使たちが『アルゴ』を思い出しました。

なんでも100%はない、善人や完璧な人物やヒーローはいない、というのがS4だと思いました。特にジョンのことをみんなが完璧な人と思っている。最初に出てきたチャーリー・ウェルズバラ事件で、車についたヒーローのフィギュアが燃えおちたのもなんだか象徴的でした。

SHERLOCK S3E1/メアリと爆弾犯

S3E1は「空の霊柩車」で、2年間死んでいたはずのシャーロックが帰還し、ジョンに怒られる。ジョンの婚約者メアリが登場。ロンドンではテロリストの不穏な動きが警戒され、マイクロフトから探るように言われる。
メアリをシャーロックがスキャンした時、猫好きとか自分でパンを焼くの他に、見えないところにタトゥー、自由主義、ガーディアンなどのよくわからない言葉も出てきました。
タトゥーはどこかロシア・東欧の国で囚人だったとか?のような想像をしました。S3E3の中で出てきた、マグヌセンのオフィスのボディーガードがそういう人だったし。

わからなかった自由主義とかガーディアン(新聞)、今見るとメアリが爆弾犯だとミスリードしようとしていたのですよね。ドラマの中では11月5日ガイ・フォークス・デイに国会議事堂を爆破するというまさにガイ・フォークスのような陰謀が計画されていました。カトリックがイングランドにより弾圧された時代にカトリック教徒のガイ・フォークスが実行犯になり王宮を爆破しようとした事件です。11月5日はガイ・フォークスのお人形を篝火で燃やして花火を打ち上げるというお祭り。英雄なのに燃やすの?と思うのですがイングランドからしたら悪いやつなのでしょうね。UK映像作品にはよく登場します。S3E1の犯人は貴族の世襲上院議員だったのですが、真逆の自由主義、反政府派によるテロとミスリードしたかったんだなあと思いました。今さらすぎるけどその時はわかりませんでした。

当時メアリがいくらキュートでチャーミングで評判が良くても、悪い人になると知っていたので、意地を張って好きにならないぞと思って見ていました。

SHERLOCK S4 / 信用ならないドラマ

S4E1のっけから、公式記録映像に改竄をやってのけたマイクロフト。
ドラマの中の映像が信用ならない宣言でした。

E3の飛行機はあやしいかなと思っていました。そしてユーラスの問題で処刑される人たちも実は映像トリックではないかと密かに期待していましたが特にそういう話は出ませんでした。見直してみると、映像はミスリードしているよう。ユーラスが所長の奥さんに向けて引き金を引くとき、椅子の背もたれでわざとその瞬間を見せていないし、撃たれた後血飛沫もない。所長の方は自殺してガラスに血が流れました。ガリデブ兄弟のときも、無罪の二人が落ちたときすぐに水しぶきが上がってきてわずか数10センチ下に落ちたかのような早さ。でも俯瞰したシェリンフォードは海面からかなり上にある。落ちましたよってすぐにわからせる演出なのか他に意味があるのか。

ユーラスの独房のガラスのことを以前も書きましたが、シャーロックとユーラスが初めて対面したときガラスはなかったのに、それ以降ジョンが気を失って目覚めたとき、所長の自殺のとき、5年前モリアーティが来たとき、事件終結後のバイオリンの協奏のとき、ずっとガラスの写り込みがありガラスがあることが表現されています。初めての対面のときは、そのあとシャーロックは首を絞められたので失神していた間の夢と混ざっているとか、もしくはジョンが失神中に見た夢なのか、このあたりはっきりしていません。

そしてマスグレーブが残っていることに混乱しました。鈍い話ですが、ユーラスを見つけたシーンで屋根が一部燃えて天井の骨組みが見えているので、はじめのマイクロフトの説明の映像が嘘(聞いている方が勝手に想像していて、ミスリード)で燃え落ちるほどではなかったのかなと思いました。それにしてもシェリンフォードからシャーロックとジョンを連れてマスグレーブへの移動は大掛かりで不思議です。

最後、ホームズ家の両親があの子を連れて帰れないのかと聞いたとき、マイクロフトは「People were died.」(と言っているよう? 何人も死んでいる)、また機会があれば殺すだろう(ここではkillを使っているみたいです)と続けていて、やっぱり犠牲者全員に本当にユーラスが手を下したかどうか微妙な気がしてきました(手を下さなくても暗示で自殺した人もいるという意味にも取れるし、考えすぎかもしれません)。文章を書くときは、すごく近くに同じ単語を連発しないという決まりもあったと思います。そのせいで「Euros killed many people.」と言わなかったのかなあとか、結論はありません。マイクロフトがユーラスを嫉妬して閉じ込めたのか、本気で公益のためにやったことなのかどちらかわからない感じにしてある気がして、信用ができないE3でした。

それがダメと言いたいのではなくて。
映像の改竄という力を持つことがブラックボックスというか少しアンフェアな気もするけど、現実でも映像は作れてしまうのだから、ドラマの中で禁止っていうのも変だし。S3E3でマグヌッセンが「書いてしまえば本当になる」というのとある意味似ている。とっても特別なことでもなく、プロじゃなくてもある程度は作れてしまう。そういう境目の危うい感じが現実と地続きな感じです。

S3はシャーロックの視点で描かれていると言われていました。そしてアンダーソンたちの妄想映像もガンガン入ってきて。『忌まわしき』では、ワトソンの小説のイメージが二人に及んで来たり、シャーロックが思っている登場人物像が投影されていたり、物語があまり客観的に語られなくなりました。S4ではさらにジョンの思っているメアリとかシャーロックの思っているジョンとか「私はみんなの思っているような女じゃありません!」と主張するハドソンさんになっています。
まあ信用ならないと思いました。そこもおもしろいのですが。

ラズボーンプレースはどういうところなんでしょう。二人はどう変化するのだろう?