HOUDINI & DOYLE(2016)

脱出王ハリー・フーディーニとシャーロックホームズの作者ドイルがスーパーナチュラル系の事件を捜査するというドラマです。itv、イギリスとカナダの共同制作のようです。
フーディーニは好きなのですが、前に見た映画が期待した感じでなかったせいもありスルーして、見始めたのは5話から。元ネタがドイルの伝記のようです。2010年代以降の伝記は、それ以前は遺族が許可しなかったことが描けるようになり、それが盛り込まれているようです。

ドイルは、ホームズを滝壺に落としてしまったので、なんとなくスランプで、仕事よりもフーディーニと犯罪捜査する方が楽しいよう。

フーディーニは子どもの頃東欧からアメリカに移民し、水中の箱の中からの脱出など危険なマジックで名を馳せた人です。また当時のスピリチュアルブームにかこつけた詐欺を暴く心霊術ハンターでもありました。好奇心を掻き立てられる人物です。フーディーニは母親への思慕が強く、もともとスピリチュアルなものに近づいて行ったのも亡き母の言葉を聞きたかったからというのを映画だったかドイルの伝記だったかで知りました。でね、私の好きなエピソードですが、あるスピリチュアリストが母の言葉を伝えたところフーディーニはインチキだと言います。なぜなら僕の母は英語が喋れないのに英語で話すわけがないと。私がフーディーニのことを知ったのは中島らものエッセイですが、『永遠も半ばを過ぎて』という詐欺師の小説の中に、フランス文学の翻訳家を名乗っているにもかかわらずフランス語が分からず見破られてしまうというエピソードがあり、フーディーニからインスパイアされたのかもと思いました。映画はガイ・ピアース、キャサリン・セダ・ジョーンズ、子ども時代のシアーシャ・ローナンが出演、フーディーニは母に似たインチキ霊媒師のキャサリン・セダ・ジョーンズと恋に落ちる話でした。『HOUDINI & DOYLE』の中ではフーディーニは母上の再婚に反対で独占していたい、ドイル先生は奥さんが病気(結核だった)と、満たされない愛情でつながっているコンビのようです。

5話では、ドイルホームズが自分の一番の作品と言われるのが嫌で、自分の娘が「お父様、ホームズを読んで」と甘えてきても大ボーア戦記を薦めたりするのがツボでした。でもそのあと、女性巡査アデレードの上司ティム・マッキナリー(『ノッティングヒルの恋人』のマックス、『忌まわしき花嫁』のサー・ユースタス)は、ドイルが賛成していたボーア戦争で息子を亡くした話をしていました。実際のドイルも息子さんが戦死していて、そこからスピリチュアルに傾いていった説があります。

6話で異星人が人をさらったエピソードがありましたが、『SHERLOCK』の「バスカーヴィルのハウンド」もちょっと思わせる荒野、「悪魔の足の根」元ネタの幻覚剤を盛られたり、原作バスカーヴィルの犬っぽい部分あったり。「黄色い顔」も少し入っているのかな。でまあ、オチはH.G.ウエルズの『タイムマシン』の方でした。

そして中盤の山場エピソードか、7話ではドイルが精神病院でホームズと出会う、アルコール依存、精神を患っていたドイル父との意識の中の対話の回はおもしろかった。父は雑誌パンチの挿絵画家である兄への劣等感を持ち、売れっ子小説家になってしまった息子へも劣等感を持っている。アルコールに依存するしかないとか、本当はそうじゃないのに精神病の烙印を押されてしまったとか、父に語らせていることになるほどと思いました。伝記はどうしても息子ドイルの方から描かれますから。父は挿絵などで身を立てたかったのですが、スコットランドで公務員、絵心を生かして建設関係の部署で製図をしていたのが、だんだんお酒に溺れていったそうです。チャールズの兄でドイルの伯父は、父親が病気で不遇のドイルに確か医学部の学費を出してあげていました。父側からの気持ちの真偽はどうかわからないというつくりです。本当は病気ではない妻を精神病院に閉じ込めてしまう話もホームズにはありましたし、ドラマの中の医師はロボトミー手術が大好きだったり‥自称ホームズの患者をユアン・ブレムナーさんが演じていて、出てきた瞬間から、わあいでした。『トレインスポッティング』のスパッドです。ジョニー・リー・ミラーがホームズをやっているんだし、ブレムナーさんの変化球のホームズもいいなと思った。吹き替え版で見ていますが、策は何通りあって第なん番目がなったらかんたらみたいな台詞は、ジョニーのエレメンタリー・ホームズみたいです。

事件のおもしろさは若干薄いけど期待していなかった分おもしろいので、ディスクも出ているのでそのうち最初から見ようと思います。とはいえ地味なドラマです。伝記などは、読んでから数年経ちますので記憶違いの箇所等ありましたらご容赦ください。

参考
『コナン・ドイル伝』ダニエル・スタシャワー著 日暮雅通訳(2010)東洋書林
『裏読みシャーロック・ホームズ―ドイルの暗号』(2012/9) 小林司、 東山あかね著 原書房
『コナン・ドイル シャーロック・ホームズの代理人』(2012/8/10)ヘスキス・ピアソン著 植村昌夫訳 平凡社
映画『奇術師フーディーニ 〜妖しき幻想』(2009)
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Rhys Filmarathon / Welcome to the ugly lovely town!

『Twin Town』(原題 Twin Town)1997

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いよいよ、リスさんマラソンの最終回を飾るにふさわしい作品です。
リスさんが『ノッティングヒルの恋人』でブレイクする前の映画初主演作品です。
ダニー・ボイル製作総指揮、『トレイン・スポッティング』とほぼ同時期の作品です。一般の方のレビューに「笑えない」「登場人物がクズ」と書かれていたので危ぶんだのですが、これ今見たらすごくおもしろい!どこに惹かれるかわからないけど何回も見てしまいます。『トレイン・スポッティング』は今でも伝説的な作品ですが、私は『Twin Town』がすごく好きです。愛犬家の方にはちょっとお勧めできません…。

◾︎制作チームについて マクドナルド、ボイル、ホッジ組と『トレイン・スポッティング』
アンドリュー・マクドナルド/往年のフィルムメーカー、エメリック・プレスバーガーを祖父に持つ。広告業界を経てアメリカで映画製作を学ぶ。
ダニー・ボイル/舞台の演出から入りBBCのTVシリーズ”Inspector Morse”を手がける。
1995年、この二人に脚本家ジョン・ホッジを加えたチームによる『シャロウ・グレイブ』(95)の斬新な感覚が注目を集め翌年の『トレイン・スポッティング』では興行的にも大ヒットを記録。マクドナルドの主宰するフィグメント・フィルムズは一躍イギリス映画再興の騎手となった。マクドナルド、ボイル、ホッジ組の作品はアメリカ映画で『普通じゃない』(97)、”Alien Love triangle”(99)、レオナルド・ディカプリオ主演”The Beach”(99)と続いている。(『Twin Town』ディスクの解説より)

当時とても流行った『トレイン・スポッティング』は若者の閉塞感を打ち破る痛快さと、イギリス映画再興という功績が大きかったようです。

◾︎ウェールズのカルト・ムービー
『トレイン・スポッティング』と同時期に作られた『Twin Town』、ダニー・ボイルたちは「脚本の生意気さが気に入って製作を決めた」そうです。リスは実弟のリル・エヴァンスと初主演、ケビン・アレン監督の故郷ウェールズのスウォンジーという街を舞台にウェールズ人のキャストにこだわり、若い方の刑事テリー役ダグレイ・スコットさんのみスコットランド出身ですが、当時ウェールズで活躍する俳優さんでした。




トレーラーでは、「ウェールズ名物、ラグビー!男声合唱団!ディラン・トマス!トム・ジョーンズ!シャーリー・バッシー!アンソニー・ホプキンス!むにゃむにゃ●✖️▲□★#●✖️▲□★●✖️▲#%&□★●✖️▲□#%&★●✖️▲□★ゴーゴーゴーシュ!(ウェールズ語)」と言っています。

※"Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyll-llantisiliogogogoch" is the name of a town in North Wales. The name translates as "The church of St. Mary in the hollow of white hazel trees near the rapid whirlpool by St. Tysilio's of the red cave". IMDBより

ディラン・トマスはスウォンジーに生まれ育った20世紀を代表する詩人です。リス・エヴァンスの映画デビューはアンソニー・ホプキンス監督作品のチェーホフ原作『8月の誘惑』(未視聴)。アンソニー・ホプキンスもウェールズ出身ということも初めて知りました。アンソニー・ホプキンスといえばハンニバル・レクター教授ですが、この時の縁が後に『ハンニバル・ライジング』でのリスさんのグルータス役につながったのかも、などと思います。

20年近く経っているのに、向こうでは今でもカルト的な人気映画なのだそうです。そして、2014年はディラン・トマス生誕100年のメモリアルイヤーで、いろいろなイベントが行われたそうです。その時リス・エヴァンスはスウォンジーの大学から映画での貢献で賞を贈られてもいます。ネット動画を漁っていると2014年に『Twin Town』のメイン出演者リユニオンの台本を読むイベントが開かれていました。ツインズ弟が「サッカーの試合の旗に四角と三角の2種類ある違いは何だ?」というくだりで、にいちゃんそんなことも知らないのかよと説明しながら唇を鳴らす印象的なシーンをやっていて、会場からは笑いが起きていました。そうそう、このシーンは字幕が、弟「バッカじゃなかろうか」、あとの方でにいちゃんが「ヤーイ、おまえってチョロいな」って訳してあるのも好きなのです。昨年2017年、公開から20年記念で上映会が開かれていました。20年後の続編を撮り始めたということは知っていますが、続報がわかりません。


◾︎明るく過激なストーリー
前置きが長くなったのですが、DVDのコピーには「悪ガキVS悪オトナの復讐合戦が始まった!」とあります。街の鼻つまみ者の「ツインズ」(3歳違いの兄弟だけどいつもつるんでいるので双子といわれている)はジャンキーで車泥棒、無職、薬物依存治療の一環で社会奉仕活動をしなければならない。とんでもねえって思いましたか?それがね、なんだかあっかるいんです。「車泥棒」というのも「盗んで売る」わけではなくて無断で乗りまわす。ペットボトルにチューブがささっている「水パイプ」なるものも出てきます。ウェールズの港町はもしかしてイギリスでも天候がいいのかなと勘違いするくらい明るくのびのびして、おまぬけでブラックです。

舞台のスウォンジーは、ウェールズの首都カーディフに次いで第二の都市、タンカーが寄港する港町でラグビーと男声合唱団が名物ののんびりした地方の街です。そして街の人はカラオケが大好き。詩人ディラン・トマス曰くスォンジーは「The graveyard of ambitions (大志の墓場)」、駅前ロータリーには「Ambition is critical(大志に危機あり)」と書かれています。「Ambition is f**kin’ criticalってどういう意味だ?」「いや、クソ、は入ってないから」とこの話を汚職刑事コンビが長々話しているくだりも大好きです。「大志に危機あり」の方は、市役所員が観光名所にしたいのに大志の墓場ではまずいとソフトに変更して書かせたようです。ディラン・トマスはスウォンジーを「ugly lovely town(醜く愛しい街)」とも詩に読んでいます。テリーは結局「Pretty shitty city」(このチンケな世界の片隅にってことでしょう)と言います。


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この二人組の刑事テリーとグレヨは麻薬密売に手を染めていて、テリーは街の有力者ブリンと組んでいます。ブリンは、ラグビーが大好きで少年ラグビーチームのオーナーもしています。ブリンはラグビーのクラブハウスの屋根修理をツインズの父親ファティに頼むのですが屋根から落ちて骨折。ツインズは補償をくれとブリンにかけあいますが奴は日雇いだと、鼻も引っ掛けられないほどにあしらわれたたことから復讐合戦が始まります。確かに笑えないのですが、笑えない話をこんなにおもしろく描いているのがすごい。味のある脇役とか、ツインズが放り投げられて放物線を描いて飛んでいったり、ナイトクラブでの乱闘シーンとか、ああこれ知ってる感じ、がたくさんありました。

◾︎感想など

少し音が悪いです。


最初に車が飛んでいるのは、住宅街のアップダウンがとてもきついからですが、スウォンジーは高低差の大きな街なのだそうです。同じような長屋式の家がずらっと並び、山手とか街の地域によって暮らし向きがはっきり分かれているのだそうです。そこもツインタウンなんだろうと思います。ルイス家はトレーラーハウスに住んでいて車もなくゴミ置場のそばで、お父さんは日雇いの大工さん、お姉さんは風◯店の受付嬢で、ツインズは無職で処方箋を悪用して薬物を扱っている。でもそういうことを感じさせないルイス家の明るさと仲よさがすごくいいんです。両親のとぼけた愛情と、ツインズが実の兄弟だけあって兄がさりげなく弟を気遣う感じに惹かれるのだと思います。



家族愛がツインズを復讐に走らせます。お父さんも入っている男声合唱団のメンバーのおじいちゃんと妻もいいんです。ワンちゃんを抱っこするリスさんも素でいい顔していました。保護司とのツインズの面談で、お父さんのファティを追い出すと、保護司はすぐに隠していた酒を飲み始めてしまいます。ツインズは慣れっこ。ブリンは昼間は威張っていても日雇いの大工のダイや汚職刑事も遊び仲間で善悪や白黒が入り混じった世界です。ブリンの奥さんや娘への態度を見るとなかなかに嫌な男なのですが、誰かになるならブリン、いいかもと思う自分が不思議でした。加齢による変化でしょう。お金持ちらしく着飾ったミセス・カートライト(ブリンの奥さん)のフーシャピンクのジャケットとツインズのお姉さんのお店の制服が似ているのもあえてだろうなと思いました。奥さんも籠の鳥的な感じだったし。そして映画のラストの美しさに本当に驚きました。大人向けブラックコメディで、現実を美化しているわけではないけど、とにかく明るい。随所に言葉遊びと皮肉が効いている。ウェールズは、「人より羊の方が多い」とか、「みんな靴を履いていない」とかとにかくバカにされている自虐ネタがたくさん出てきます。「国産」のソーセージはドイツのものより材料がいいとツインズは言うのですが、「肉以外しか使っていない」というブラックジョークをネッ友の方に教えていただきました。

映画の中では、懐メロが歌われます。

Petula Clark - The Other Man's Grass ( Is Always Greener )



隣の芝は青い、ってことですね。


DANA - IT S GONNA BE A COLD COLD CHRISTMAS


Mungo Jerry - In The Summertime ORIGINAL 1970


この曲は、男声合唱団も歌っているシーンがあります。彼らがツインズの復讐にちょっとだけ協力してくれるのは、ツインズの父親がメンバーだったからだけでなく、無謀にも悪党に立ち向かう彼らの若さが羨ましく応援したかったんだろうなと思います。

Petula Clark - Downtown


Down Town, everything waits for you (でもツインズには何も待っていない)

Gloria Gaynor - I Will Survive (Official Video)


女性が恋人に去られた歌で、一人で強く生きていくという内容。
間抜けな鍵を変えておけばよかった、
という歌詞が出てくるのですが、ツインズは鍵の空いているトイレの窓から侵入し、
カラオケ大会で『I will survive』を歌っているブリンの娘は、二人の復讐の犠牲者となり「I wish I were dead.」(死にたい)とつぶやく。ツインズはいつも「Piss off」(失せろ)と言われているのでそんな報復をするという、言葉遊びのようです。
後にリス・エヴァンスが出演した映画『リプレイスメント』の中の、バラバラだった寄せ集めメンバーが留置場で歌って踊ってチームがまとまるという重要なシーンでも使われています。


◾︎「ツインズ」はなりそこないのピーター・パン
前に紹介した『ネバーランド』の時に知りましたがバリーの小説『ピーター・パンとウェンディ』に「ロスト・ボーイズ(迷子の男の子)」がいてその中に「ツインズ」と呼ばれている双子が出てきます。
悪ガキVS悪オトナとも書かれているように、ジェレミーとジュリアンは大人社会から弾かれているのか入ろうとしないのか、子どもに属しています。導入部分にお姉さんのえげつない会話が意味するのも、二人で風呂に入っているのも(仲よすぎ)彼らが大人でないことを繰り返し表現しているのだと気がつきました。ジェレミーとジュリアンは、ロスト・ボーイズであり、ピーター・パンの変形なのだと気がつきました。だからラストの社会に背を向けて逃走する二人が痛快なのだろう。

オープニング曲は、「隣の芝生は青く見えるものだから、足元を見て自分の場所にしっかり立って、不運を嘆かず今手にしているものをしっかりつかんで」と歌っています。子どもの頃は良かったなあ、みんな楽しそうだなあ、という映像が流れます。足元を見た時、そこにあるのは自分の影。『ピーター・パンとウェンディ』の中でピーターは自分の影が取れて泣き、ウェンディが縫いつけますが、現実と繋ぎ止めているのが影なのではないかと、このオープニング曲から連想します。

IMdbにある当時のニューヨーク・タイムズのレビューには「オチがない」と書かれています。二人はアンチ・ヒーローなので、社会規範で切って「クズ」とか「ソシオパス」と見ると理解できない。『ネバーランド』はかつてのピーター・パンがフックになったという構造で、ピーター・パンを演じたリスさんがフック船長を演じている。ジェレミーとジュリアンの「ツインズ」は本物の双子ではないので、「本物のネバーランドの住人になれない偽物」という気がします。もちろんウェールズの映画だから地元で受けたのだと思いますが、ピーター・パンだから自国で受けるのかもしれません。私もリアルタイムで観たら、好きになっていない自信があります。でも今見るとクドカンテイストだなと、馴染みの感じなのです。

◾︎トリビア
IMdbのトリビアによるとFワードを300回以上言っているそうです。誰が数えたんだか。

◾︎ドキュメンタリー
長くなりますが、当時BBC1でメイキングのドキュメンタリー番組をネット動画で見られます。英語で聞いているので3割ほどしかわかっていないと思いますが当時の雰囲気や監督の様子がよくわかりました。6週間の撮影期間、ウェールズもやはり天気が悪くて大変だったそうです(ラグビーの練習シーンは小雨だった)。映画の中で派手なおばさん5人組がタクシーに乗ろうとして断られますが、監督の母上と親戚のおばさんたちだそうです。後のほうで出てくるマジックマッシュルーム入りのホットドッグを食べちゃう羊飼いの男はあ監督のコメディアンの兄上だそうです。羊飼いなのにラリっちゃうとか、紹介したトレーラーではカットされていますがテリー刑事がイギリスのスラングでちょっと品のないこと言ってるのに繋がっているんだなあと思いました。最初はわかりませんでした。

終わりの方のサンダンス映画祭での上映の様子、観客の反応などが映されていました。監督も「すっごくいい!とかクソつまらない!」とかはっきりとはみんな言わないし、「うんいいね、すごいよ」とかそんな感じだとおっしゃっていました。好き嫌いが分かれる映画だと思います。ジャケ写撮影シーンもあり、オープンカーの背もたれにツインズが座ってバックシートにボニー(ブリンの娘、ツインズとの絡みはないがヒロインぽくミスリード)とワンちゃんというカットを撮っていました。リスさんが噛みつき加減の表情の写真、撮影中は一秒ごと位にムキっとした表情を繰り返していて大変だなと。最後は地元ウェールズでのプレミア。エヴァンス兄弟もとっても嬉しそうでカッコつけてニコニコしていました。二人とも若い。

そしてそして、2015年、1954年にBBCで放送されたディラン・トマスのラジオ劇を映画にした『Under milk wood』を再びケビン・アレン監督とリス・エヴァンスのコンビが作っています。弟リルもあのお母さん役のディ・ボッチャーさんも続投!
一応2回ほど見たのですが、英語バージョン、ウェールズ語バージョンとあってついていくのが難しく、ちゃんとわかったらまた書きたいと思います。ストーリーよりも詩とか言葉の韻とかイマジネーションの世界で、ミュージックビデオを見ている気分でした。
さらに早く公開してほしい映画『Dominion』ではリスさんはディラン・トマス役です。こっちは一応世界で配給するというニュースを見たので、待っておきます。この映画のコピーは、「ロックミュージシャンのいなかった昔、彼がロックだった」(英語だけど)。なんかかっこいい。



リスさん、マラソンお疲れ様でした、最後の作品終わりました。
あれ?ゴールはあっちですよ?

We’ll go to Morocco by this boat with my brother right now.
(今からこのボートで弟とモロッコに行くんだよ)
Hey, is fuel enough? All right, let’s go!
(燃料は充分あるか?よし、行くぞ!)
Adios amigos!
(アディオス・アミーゴス!)

ああ、行っちゃいましたね、お気をつけて!
モロッコでじゅうたんに簀巻きにされないよう祈っています。


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まだやっていたのって感じですが、長らくリスさんマラソンにおつきあいいただきましてありがとうございました。これから観る予定の作品もあるので、そのうちリターンズを書くと思います。

当時の紹介番組


Reunion
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Rhys Filmarathon / Once he was Peter Pan. (かつてピーター・パンだった男)

『ネバーランド』 (原題 Neverland) 2011

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あまり似ていないけど三白眼なところが好き。ずっと前に描いたもの。




TV映画です。
自分、わりとファンタジー音痴(超大作が苦手なだけです)なので見なくてもいいかと思っていましたが、見てみると以前の作品で今までモヤモヤしていたことが急につながりました。単品で鑑賞してもそこそこおもしろいですが、他のことと合わせて考えるとおもしろい作品でした。

「かつてピーター・パンだった男」というのは比喩ではなく、リス・エヴァンスはああ見えて昔ピーター・パンだったことがあります。悪魔だった(リトル・ニッキー)こともあったけど。「アリス時間の旅」の方にも出演しています。やっぱりイギリスってピーター・パンとアリス。ちなみにこの監督さんはアリス(ティム・バートンのものとは違いますが)も手がけています。

『ネバーランド』ディスク2枚の1枚90分なり。有名な話なので、あとはどう脚色するかみたいなところ、今回は思いっきりネタバレします。

リスさんはフックさんだけど、感想はなかなかかっこ悪い男でした。コメディじゃなくてシリアスなファンタジーで、まあ、二枚目俳優じゃないし、だいたい裏のある役のことが多い。ピーターは『ライラの冒険』のチャーリー・ロウ君。TV映画ながら映像をがんばっています。

あらすじ

The planet is the second right, go straight till morning.
その星は二つ目を右に、そのまま朝までまっすぐ。

宇宙からはじまります。
修道士のようなフードの男が光る玉を持って山頂に立ち二つの隕石のパワーを入れようとしていたところ、ティンカーベルがやめさせようとして光る玉の中に閉じ込められてしまう。

1726年カリブ海、海賊の女船長が獲物として不思議な水晶玉を拾う。玉の中に何かが閉じ込められていて、玉を拳銃で撃つと不思議な光を放ち海賊船ごと異界へ飛ばされてしまう。

1906年ロンドン、ジミー・フック(リス・エヴァンス)はイーストエンド(貧民街)で剣術指南道場もといフェンシング学院を開きフェンシングを教えていた。その他よろず頼まれごと承っているよう。笛の得意な少年ピーター(チャーリー・ロウ)他6人の孤児たちを庇護し住まわせている。彼らはスリや泥棒稼業で稼いでいる。
ある時、ピーターたちはジミーから骨董店に強盗に入る話を持ちかけられるが、ジミーは大人の自分一人でやるべきだと思い直し、計画はなかった事にする。ピーターは普通の大人の安定した暮らしへの憧れがなく、敬愛するジミーの相棒になりたくて認めて欲しい一心で仲間を騙して骨董店に押し入る。この時、囮の少年がガイ・フォークスのコイン集めのふりをして「ガイに1ぺニーおくれ」と顔にもガイ・フォークスのペイントをしている。骨董店の夜警は「まだ9月だろ」と追い払おうとする。字幕では説明しきれないのでガイ・フォークス・デイのことはカット。ジミーは子どもたちがいないことに気がついて骨董店に駆けつけ、本来の目的である不思議な水晶玉を金庫室で見つけるが、水晶玉をうっかり叩いてしまったためその魔力で一緒にいたピーター以外の子どもたちとネバーランドへ飛ばされてしまう。ピーターはその時店の方にいたので吹き飛ばされなかったが、店の壁が崩壊、一人ねぐらに帰る。

ジミーの依頼人である謎の男の使いがピーターの元へやってくるが追い返す。男をつけていくと、ジミーの依頼人の老紳士の屋敷に着く。老紳士(チャールズ・ダンス)は水晶玉はネバーランドへの入り口でありノックすると開くと秘密を教え、協力しようというがピーターは逃げかえり、骨董店から持ち帰っていた水晶玉を叩いてネバーランドへみんなを追いかけていく。

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こちらもずっと前に描いたもの


ネバーランドにいくと、フォックス以外は海賊に連れ去られてしまっていた。ピーターとフォックスは木の妖精(ティンカーベルも木の妖精の仲間)に襲われたところをインディアンに助けられる。インディアンはそこに80年ほど年も取らずに暮らしていた。インディアンは山頂に住み村への道を秘密にしていたが、騙してカヌーを奪いこっそりジミーたちを助けに行く。船倉で寝ていた子どもたちを救い出し全員船に乗り込むがジミーがおらず、探しに行くとジミーは海賊の女船長ボニーにうつつを抜かして残りたいと言うので、ピーターは大変ショックを受ける。フォックスがピーターを探しに船に引き返していたところを海賊に見つかり、ジミーは守りきれずフォックスは刺し殺される。ピーターと子どもたちだけで脱出しインディアンの村に逃げる。

海賊たちは200年間ネバーランドに閉じ込められている。ネバーランドは地球外にあるという。ボニーは、不老不死と空を飛べる力を持つ銀の粉を少しだけ持っていて、大量に手に入れたいと思っている。ジミーはボニーと二人で銀の粉を手に入れ世界を支配したいと考える。ボニーと一番の手下のスターキー(ジミーにのりかえられるまではボニーの恋人)と数人を連れて銀の粉を探しに行く。ピーターも謎のフードの男の夢を見て、インディアンの酋長の娘のアヤ(英語名タイガー・リリー)と水晶玉を探しに行くところをジミーと海賊たちに見つかりあとをつけられる。ピーターとアヤは不思議な木の要塞のような場所に行き着き、そこにはフードの男がいた。彼はロンドンでジミーに水晶玉を探すよう依頼した謎の男(チャールズ・ダンス)だった。エリザベス一世の時代の錬金術師でリチャード・フラッド博士という。水晶玉の複製を作ることができネバーランドとロンドンに一個ずつあるので行き来ができるようになっていた。木の要塞にジミー一行も来てしまい、ピーターとフラッドは一緒に戦うがフラッドは死んでしまう(字幕では不老不死になっているが、不老だけど不死ではないみたい)。木の要塞も崩れ出し、ボニーにアヤを捕まえられ、ピーターは守ろうとして谷底へ落ちる。水晶玉はボニーたちの手に渡ってしまう。ここまでが前編。

ジミーは、ロンドンでの地位回復を願っており、グランビル・クラブのメンバーになりたいと思い謎の老紳士にもメンバーになれるよう口添えを頼んでいた。自分を閉め出した人たちを見返したいと思っている。ジミーは元武器商人、かつてピーターの母親の舞台女優ジェニーに恋をしたが、彼女は後から現れたピーターの父親と結婚し、ジミーは決闘でピーターの父親殺してしまった。ジミーが探した時、ジェニーは救貧院で亡くなり、孤児院にいたピーターを引き取る。これも罪悪感を薄めたいからしたことだとピーターに告白するが、自分の子として育てると誓ったとも言っている。ジミーは、蓋の裏にジェニーの肖像が描かれた懐中時計を大切に持っており、それはピーターの父親の形見だった。

後編では、ピーターはティンカーベルと木の妖精に助けられ、銀の粉の泉に浸かり生き返る。さらに空を飛べるようになる。海賊とフックは再び木の妖精の元に銀の粉を求めて向かい、木の妖精を焼き討ちする。ピーターが現れて、生き返った経緯を語ると、ボニーは真似して泉に浸かるが木の妖精の歌がなかったため死んでしまう。ジミーはスターキーに海賊船から出て行けと言われるが、インディアンをやっつけるためロンドンから大軍勢と武器を運んでこようと提案し、ボニーと二人で隠した水晶玉の元へスターキーたちと向かう。その企みを知ったピーターがインディアンに知らせ、海賊とインディアンの戦いが行われるがそこにジミーたちがいないと知り、ジミーたちを追いかけ、ロンドンに戻るのを阻止するため最後の戦いが洞窟の中で行われる。ピーターとジミーは剣で戦い、ピーターはジミーの右手を切り落とし、懐中時計も谷底のワニの口に落ちてしまう。洞窟は崩れ出し、子どもたちとインディアンは脱出するが、ピーターはいなかった。ジミーとスターキーが洞窟に取り残される。

子どもたちはインディアンの村に戻り、水晶玉は地中へ埋めてしまっていて、ネバーランドで暮らすことを選ぶ。

Sometimes a smaller is smarter.
(小さきものを侮るなかれ)ジミーの座右の銘。

感想
『ピーター・パン』はどちらかというと嫌いでした。しかし、その要素を含む作品は限りなくあり、愛されているのだなと改めて思いました。

地球外か~と思いましたが、有名な「二つ目を右に曲がって朝までまっすぐ」というネバーランドへの行き方をうまくいったもんじゃと思いました。
前編はまとまりが良かったですが、後編は行ったり来たりしている感じで、戦いも多くて、もうちょっとシンプルでもいいとファンタジー音痴は思いました。あまり期待していませんでしたが、けっこう力の入った作品で子ども向けではないです。映像的にはうねうねした木の要塞や森の造形を頑張っていた。

◾︎ジミー・フック
フックさんがやっぱり一番興味を引く人物です。
ネットでファンの人が紹介していたリス・エヴァンスの言葉に、
Every boy wants to play James Hook.
というのがあって、俳優としてはやりたい役なんだなと思いました。

フックさんは、なぜロンドン社会から締め出されたかは語られない。武器商人なのが悪かったのかなあ。
ジェニーにも、本当は好かれてなかったんじゃない?とちらっと思います。
ピーターに優しくしたり騙したり恫喝したり、ボニーも利用したり。ロンドンに帰って世界を支配する神になるのだと言っているのとボニーとダブルで来ると、とてもかっこ悪い。いい大人にとって不老不死なんてしんどいじゃないですか。初めの印象は、ちょっと焦点の定まらないかっこ悪い人物でした。

ピーターがはじめの方では本当にジミーのことが好きなものだから、ジミーがボニーの仲間になっていることをひどい裏切りと感じます。ジミーが「us」って言っているのが、ボニーを相棒にするっていう意味で。「子どもにはわからないだろうが、彼女はたいそう蠱惑的で(a hypnotic woman)」などと言うております。ピーター・パンといえば「大人になりたくない子ども」というサブタイトルがついているくらい、永遠の少年なのですが、このピーター君はジミーのために早く大人になりたかった。でも裏切られ、ジミーの汚いところを知り、純粋さを損なって妖精に指摘されます。ピーターが一度死んだ後、ジミーはその世界で生きる覚悟を決めるため、服装も海賊の服に変えて、ピアスを開けるシーンがあります。ピアスを開けるのは映画『フック』の中に、海賊としての覚悟を決める意味があると語られています。ピーターが生き返ってからもピーターを裏切り、騙し、海賊たちも利用とかっこ悪いフックさんでした。同時期の作品『もうひとりのシェイクスピア』でもフェンシングのシーンがあって、こちらでも剣の達人役で無駄がないです。

◾︎原作の登場人物
フックさんがどんな人か知りたくなって、原作を開いてみました。ドイル先生つながりで『ピーター・パンとウェンディ』新潮文庫の新訳を前に買っていて放置していたのを拾い読みです。便宜上、原作と書きますが、一般的に知られている話はディズニーのもので、バリーの書いた4作品とはかなり違い、一番近いものの一つがウェンディたち姉弟の出てくる『ピーター・パンとウェンディ』なのだそうです。

ドラマの登場人物も『ピーター・パンとウェンディ』に基づき、ピーターの仲間はロスト・ボーイズ(迷子)から名前を取られており、海賊のスターキー、スミー、タイガー・リリーなどが出てきます。ただしこのドラマはダーリング家の姉弟、特にウェンディ不在で、ウェンディにティンカー・ベルがやきもちを焼くのはピーターくんが担当しオリジナルキャラのボニー船長に嫉妬していました。ドラマの中で海賊に殺されてしまったフォックスくんは、ピーターよりも年上で声変わりもして大人になりかけで、安定した普通の暮らしを勧めた子でした。原作では子どもが大人になりかけるとピーターが殺してしまうとか(うわー)。

◾︎原作のフック船長
フックさんについて書かれたところを抜き出します。

『ジェームズ・フックー本人の署名によればジャス・フック。(フックは)“海の料理番”とも呼ばれた大海賊ジョン・シルバーが唯一恐れた男だと言われてます。(中略)この恐ろしい男は手下を犬のように扱ったり命じたりし、手下は犬のように従っていました。体は骸骨のようにやせこけ、顔は浅黒く、長く伸ばした髪はカールさせていましたが、少し離れてみると、黒いロウソクのように見えました。そのせいで、もともとはハンサムなのに、異様に恐ろしい顔に見えるのでした。目は勿忘草の小花のような青色で、深い憂いを帯びていましたが、人の体に鉄鉤をつき刺す時だけは、赤い点が現れ恐ろしいまでに光るのでした。態度に関しては、貴族のような雰囲気が今なお漂っていました。(中略)服装についてはどことなくジェームズ二世を連想させるような衣装を身につけていました。海賊を始めた頃、あの不運なスチュアート家の王様に妙に似ていると言われたからです。』

『フックというのは本名ではありません。フックが本当は何者であるかを明かしたら、今日でさえ、国じゅうに大騒動が巻き起こることでしょう。しかし、言外の意味を読み取る人にはすでに察しがついているに違いありません。フックは、上流階級の子弟が通う有名なパブリック・スクールの生徒だったのです。』

『名門イートン校の社交クラブの会員資格を得るには、意識しなくても自然に礼儀正しくふるまえることを証明しなければならないことを。』

原作のフックさんは貴族のボンだったっみたいで、礼儀作法に落ち度がないかしょっちゅう気にしています。フックさんは、ピーターが生意気だから嫌いとも書かれています。

『「ガキどもを捕まえて、船に連れていく。板の上を歩かせ、海に落とす。それで、ウェンディは我々の母親になる」』

原作に出てくるウェンディはネバーランドでロスト・ボーイズ(迷子)のお母さんになり、ピーターがお父さんで、おままごとみたいに暮らしています。もともとピーターは本当のお母さんのところから逃げ出していて、なんで海賊まで母親が欲しいと言っているのだ、気持ちはわかったことにするよ!ちょっと変だけど。繰り返し母と息子が語られます。

◾︎ジミー=ピーター、ジミー=ボニー
さらに原作の中で、フック船長が殺され、海賊船を子どもたちが奪いウェンディは嫌だなと思いながらフックの服を仕立て直してピーターの服にします。ピーターはフックの部屋で、新しい服を着て鉤爪の形に自分の手を曲げて葉巻を吸います。明らかにピーターがフックになっています。

ドラマで思ったことの裏付けがここにあるように思いました。ピーターとジミー・フックは一つのベクトルの両端、裏と表、子どもと大人でもいいですが、大人であることに失敗している大人というふうに見えました。

決闘について調べてみたところ、昔は長い剣と短い剣を両手に持っていた時代があるそうです。利き手じゃない方で短い剣を持つために訓練が必要なのに戦いには邪魔という理由で廃れたそうです。ジミーは長い剣で、ピーターは短い剣で戦います(ピーターはリーチが短く不利に見えます)。これも長い剣と短い剣、二人で一人のメタファーに思えました。

そして、ボニーですが、この人もまたフックの分身であるようです。原作の中でフックはジョージ二世風で長い髪をカールさせているのですが、ボニーがそうでした。

他の本に書いてあったのですが当時決闘は禁止されていたらしく、そのせいでジミーは社交界から締め出されてしまったのかななんて想像します。

◾︎かつてピーター・パンだった男
リスさんは類人猿として育った青年役をした『Human Nature』の中でピーター・パンの服装で「I’ve gotta crow」と歌うシーンがほんの数秒あります。いろいろな教養や文化を身につけたというところで、とてもいい声でミュージカル調に歌っています。このシーンの意味がよくわかっていなかったのですが、『ネバーランド』を見てわかりました。類人猿(仮名)くんがピーターで、マナーの研究をしているネイサンがフックさんで、擬似父子。詳しくはまた別記事で。そもそも『Human Nature』も、リスさんのどこに猿を感じてオファーしたんだろうとずっと不思議でした。猿の演技も、ものすごくうまいんですけど。多分この役はピーター・パン要素も必要だったんだろう。そして、それよりもっと前の作品が実は「ピーター・パン」だったのだろうと思いました。その話もリスさんマラソンの続きで。

かつてピーター・パンだった男にフックさんをキャスティングする、『ネバーランド』はそんなドラマだったのではないかと思います。フックさんが「ジミー」だったのも新鮮で(映画の中では友達は僕のことをジミーと呼ぶ、というセリフがありました)、作者バリーもジェームズです。ピーターは仲良くしていたデイビーズ家の男の子の名前から取られています。リスさんは何度も「ピー・ターー!」と叫んでいました。擬似父子なのですよね。ジョニー・デップ主演の映画『ネバーランド』、こちらは作者のバリーさんとデイビーズ家の男の子たちの話でドイル先生もちょっとだけ登場します。『ピーター・パンとウェンディ』のあとがきによれば、映画と違いデイビーズ家の主人はバリーが知り合った後に亡くなっているそうです。

ドラマは、原作よりもストーリーのメリハリがはっきりしています。そして魔法のアイテム「水晶玉」と「銀の粉」をあるものとそのレシピに置き換えればクライムアクションムービーになります。ずっと前に書いた『ハリポタ』(リス・エヴァンスは「死の秘宝」のPart1に出演)もですが、ファンタジー作品も優しそうな顔をしてけっこう人が死んでしまいます。クライムものはシリーズ全体で200人死んだぜとか、なんだか後ろめたく感じますが、ジャンルが違ってもストーリー展開は類型なのだと思いました。私たちのイメージするピーター・パンとはけっこう違います。異文化の私たちは、バッググラウンドがわからないので十分に楽しめているのかわかりません。
私はピーター・パンが苦手でしたが、そのくせいまだにピーター・パン的なものに惹かれているようです。

作者バリーとドイルは仲良しだったので、ホームズが混ぜてあるのかなと思ったポイント。しかも『SHERLOCK』以降の作品と思うと不思議な共通点がありました。
・子供たち(ロストボーイズ) ベイカーストリート・イレギュラーズのよう
・ジミーは天文学にうとい
・懐中時計に赤毛の舞台女優ジェニーの肖像画 懐中時計はワトソンの父親の形見、舞台女優はなんとなくthe womanことアイリーン・アドラーのよう。ホームズはアイリーンの写真を保管してるし、『忌まわしき花嫁』の中ではまさに懐中時計の蓋にアイリーンの写真が入っていた

20世紀初頭を描けば自然と共通点はたくさん出てくるのでしょうが結構意識している気がしました。バリーが船の話を書いたのは、船医の経験のあるドイルがいたからかもしれない。そしてこのドラマの中で描かれた当時のロンドンの風景、赤いポスト、スイッチで電灯がつくこと、石炭の煙が煙突からたくさん立ち上っている様子が興味深かったです。この時代のロンドンに夏目漱石がいたことが『ピーター・パンとウェンディ』のあとがきに書かれています。

hypnoticという単語をこの映画で初めて知りました。ながら見していてもやけにはっきり聞こえる(笑)
リアルでも、ボニー役の女優さんはヒプノティックウーマンだったというわけで。

IMdb『Neverland』

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Bound to impossible

グザヴィエ・ドランのドキュメンタリー『バウンド・トゥ・インポッシブル』がとても良かった。
彼はこの前29歳になったばかりのカナダの若手です。17歳の時に初めて作った映画から『たかが世界の終わり』までの舞台裏を、1時間ほど。このかたの作品は、まだ『Mommy』と『たかが世界の終わり』の2つしか観ていません。

子役出身、早くから演劇の道に入っていたこと、20代半ばで監督作品がカンヌで賞をとり世界中の注目を浴びたことくらいしか知りませんでした。でも『Mommy』は素晴らしかったので、この若さでこういう話が書けるのかと思うし、納得する才能を感じます。でも、ある程度恵まれているからこんなに若くで監督をできたんだろうな、くらいに思っていました。

映画の学校に行かずに自分でまず映画を作ろうと思ったこと、着手してまだ撮り始めてもいないのに「カンヌに出品する」と俳優たちに言っていたこと、自分の全てをつぎ込んだこと(詳しくは書きませんが資金面での苦労とか)、すごいねって思いました。とてもキャリアのある人でも、彼のことを嫉妬すると言っていて。(最近、いろんな感情で、いくつになってもそんな風に思ってしまうということがわかってきてツボです。)「カンヌに出品する」というのは大言壮語くさいですが、嘘でも誠でも、自分は映画製作は真剣なんだという気持ちを相手に伝え、相手からも真剣な働きを引き出せるとても有効な言葉なのではないかと思いました。自分よりはるかに年上のプロの俳優、スタッフ、カメラマンと仕事するわけで。『Mommy』にはカンヌでの挨拶も収録されていて、若い人がチャレンジできる機会は少ないけれど、そこを切り開くことができ希望を持ってもらえたと思うというような、同世代の人たちへのエールを話されていました。どうやって17歳で映画を作ったかに繋がります。

ドランとは関係ないですが、大ヒット作『LaLaLand』を見たとき、二人が再会した時の想像の中の二人、本当はなかった人生、あれがあるから良かったと私は思いました。夢に向かって一生懸命だけではありふれていますから。ドランの『Mommy』にも実はそういう表現があって、こっちが先だぜと言っておきます。でもこのドキュメンタリーを見たら、ドラン自身『LaLaLand』のヒロインのようだと思いました。彼女はチャンスがないから自分で戯曲を書いて一人芝居をしていました。

彼は脚本を書き監督をしているわけですが、それ以外も衣装も音楽も美術も自分が集める(エッセンスや材料を)そうで、作り手としてはそうありたいなあという姿で、刺激的でした。制作中と公開時はタイムラグがあるけど、公開時には映画に出てくるスタイルが流行っている。最先端を行く人なのだそうです。とにかくどんどん作りたいそうです。

とにかく作ってみることで多くを学ぶ、私もその通りだと思います。
行きたいところへいく努力をすること。いや、やりたいことは自分ではじめてみる、だな。
私の本業は受注産業なのである意味組織の大小がものをいい個人でやる時代ではないと言われてけっこう経ちます。自分の獲得した席で頑張ることはやってきたけど、必要に迫られて乗り換えするけど、どこへどう向かうかということはそれほど意識してこなかった。早くに自分のやりたいことを見つけ経験を積んでいることは強い。だからやりたいことがあったらすぐに始めるべきだろう。またやり始めてうまく転がらない時は時期じゃない、というのも経験して得たこと。
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ダブル・ワトスンとか周期表とか

春は別れと出会いの季節、と、言っても今年はTV番組くらいで大きな変化はないです。

『笑う洋楽展』が終わってしまったのは寂しい。もう終わるという発表を聞いた時から残念でした。最後の方はイギリスの某子ども番組(『Supersonic』)からの映像がよく流れていて、それはそれでおもしろかったし。普通のミュージックビデオからはストーンズのチャーリー・ワッツさんが泡まみれになるとか、もともと好きだったFoofightersのFOOTOS(メントスのパロディ)とか、覚えています。まだ再放送と特番とありますよ。

ELEMENTARY』シーズン2も終わって、グッバイ・リスクロフト(涙)。まあ、4月からもう一周するけど、これから観られる方、初回のツボはWelcome, London!なシーンでのOASIS「Hello」と、青いドアの家(倉庫)ですよ。前にディスクで見た時は、寝落ちしながらだったけど、今回リスさんをじっくり見られてよかったです。

BSでやっている『刑事モース エンデバー』ももう終わり。最初の方はモース刑事はわりと自閉症とかアスペルガー気質の人だなと見ていました。二話目に、小道具で元素の周期表が出てきて、上司のサーズデイ刑事が「elementary」と言っていて、なるほどと思った。elementは元素、素子、 要素、 構成単位、因子、 電子素子ということで、ホームズの有名な「初歩だよ」のelementaryも初級という意味ばかりじゃないのか。だから『SHERLOCK』S2の元素の周期表もそういう遊びなのかもと思いました。ちなみにGoogle翻訳では元素の周期表はperiodic tableと出てきます。

BSで『ヒューゴの不思議な発明』をしていました。
ベン・キンングスレーさんがワトスンを演じたことがあると教えていただいたばかりでしたが、この映画ではジュード・ロウもヒューゴのお父さん役でカメオ出演と、ダブル・ワトスン映画でした。ベン・キンングスレーさんのワトスン、見るのが難しそうですがいつか見てみたい!
そしてこの映画、なんとなく昔の機械もの(スチームパンク系)ファンタジーなんだろなと思っていて、スコセッシさんが監督しているのが不思議でしたが映画草創期愛のお話でした。クリスタルパレスとかなるほど!絵的にはモンティ・パイソンの美術担当だったテリー・ギリアムな感じで。彼の方がそういう昔のものに影響を受けたのかもしれませんけど。19世紀頃の機械人形のこと、何か読みたいなあ。

そうそう、『BRITISH BAKE OFF』も終わっちゃった。
デザインのいいものなんて巷に溢れているので、あまりデザインの力を信奉していませんが、人がやっているのを見ると引き込まれます。デザインの人を残していなかったら、他のファイナリスト二人もあそこまで行かなかっただろうな、審査員やるなと思いました。完成予想図的なお菓子のイラストが出てくるのも好きでした。
印象に残った脱落者、もちろん後の方まで残っていたクマさんみたいな男性を応援していましたが、他の人のことを。宇宙工学の男性、半球のチョコの器とか占いタコのパン、ダーレクとかご自分の頭のような丸みのものが多かった(笑)。食用接着剤、審査員好みじゃないなと思ったら案の定でした。一番印象に残っているのは、トマトのパンを作って脱落した女性です。彼女は元教師で家庭菜園で採れた材料など、安心ないい材料を使っている。でもパンの課題では見たこともない外見の工夫も採点ポイントだったので、いい素材を使った素朴なパンにこだわって脱落してしまった。だが、そのコンセプトが課題に合わなかっただけで、それが商品としてダメというわけではない。多分そういう自然派食品志向の人をターゲットにしたお店ならOKだと思うし。作っている時に審査員が回っていろいろ話を聞いている時に、それじゃあ面白くないよとかヒントをくれているんだけどなあと、見ている方は思うのだけれど、用意してなかったら予定変更できないんだろうな。コンテストに臨む姿勢としては頑固だなあと思うけど、反面ぶれない信頼性でもあるのだ。
ちょっとだけ影響されて、この前キンカンマーマレードを作ってみました。普通のマーマーレードはノーワックスのミカン類を見つけるのと工程が面倒くさいけど、「キンカンなら簡単よ」っていう参加者の言葉からやってみました。1パック300gでちょうどいいと思います。生のキンカンは少なく見えたのでつい2パック買って作りました。ゆでこぼしたりすることもなく最初から煮ればいいので、下ごしらえからだいたい小一時間で完成。マーマレードはパディントンだ、と。食べ終わっていないのに、ブルーベリーとかイチゴとか次が作りたくなります。

そして、本屋さんで三谷&萬斎版ポワロの「黒井戸殺人」の予告が(本の帯だけど)!!
前作(オリエント急行)、評判がイマイチだったけど、新しいのやるんだね。クリスティも最近新しい映像作品登場しているから、作っちゃおう、って思いそうですね。


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ハッピーイースター!



過去ビジュアルですが、卵です。

A memorial day with no name



間に合ったかなー?
前回に続いてストーンズです。




風邪っぽいのでおやすみなさい。
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Spring

春の感じで。



イギリスでは先日母の日だったようで、こんな投稿がありました。
訳語は私が適当にしています。

母の日はお母さんのためだけじゃない
子どもを亡くしたお母さんのため
お母さんを亡くした子どものため
お母さんとの関係がギクシャクしている子のため
子どもとの関係がギクシャクしているお母さんのため
子どもを生まないと決めた人のため
子どもを心から望んでいる人のため

3月は国際女性デーとか、聖人のお祭りとかいろいろあるね。
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Rhys filmarathon 『Once upon a time in the Midlands』

『家族のかたち』 Once upon a time in the Midlands(2002)

幸福シャッキン、不幸ヘンサイしていますか(笑)?今シーズンは身が入りませんが、一番気に入っています。
仕事中は、今日は帰ったら絶対リスさん見る、と思うのになかなか見られません。『Mr. NOBODY』の時の泣いているパパが見たいけど、あんまり見ると印象がすり減っちゃうし飽きちゃうからと戒めています。たまに見るとしてもあまりすり減りそうもにない痛快系に落ち着きます。『Mr. NOBODY』の中では、バタフライエフェクトのはじまりが日本で、実際にはいないのではというような昔話的に可愛いおじいちゃんが出てきました。これまでもリスさんの映画の中にカラオケをはじめ日本のものはいろいろ登場しましたが、やっぱり出てくるとうれしい。今回はダース買いカップ麺が出てきました。

さて『家族のかたち』、ロバート・カーライル、リス・エヴァンス主演、リスさんが家族の話や普通にいい人を演じている作品は珍しいのでもったいなくてずっと見られませんでしたが新年の休み中に見ました。変わった役の方が断然おもしろいのですけどね、たまにはこういうのも見たいものです。日本公開は2004年らしいです。

主人公のシングルマザーのシャーリーが現恋人デック(リス・エヴァンス)と突然帰ってきた元夫ジミー(ロバート・カーライル)との間で揺れる、というのは知っていました。感想は「揺れる必要まったくなし」。15年ほど前の作品だし、当時見たら感想も違っていたかもしれないけど絶対デックの方がいい。昨年はT2でロバート・カーライルさん演じる元タフガイ、ベグビーのアラフィフ姿も見ちゃったし。

原題は『Once upon a time in Midlands』で、ミッドランドすなわちイギリス中部の地方の街ノッティンガムが舞台のお話。羊は出てきませんが雰囲気は田舎です。イギリスを舞台にした西部劇のようなお話を描きたかったそうで、小品ですがよかったです。監督、脚本はシェーン・メドウズさんで名匠ケン・ローチさんを受け継ぐ若手と当時注目されていたそうです。自分の脚本だからか、現場でどんどん変えていくし役作りも役者に委ね即興もOKという作り方だったそうです。リスさんは所々やり過、わわ、水を得た魚のようです。

シャーリーには12歳になる娘がいて、元夫ジミーの姉キャロル(ジミーとはフォスター・ブラザーで血は繋がっていない)一家ははす向かいに住んでいる。同じデザインの家がズラーと並んでキャロルの別居中のカントリー歌手の夫チャーリーは数軒離れた粗大ゴミ置場の隣のアパートに住んでいる。家の位置関係をワンショットで見せるのもうまいのだ。チャーリーは別居はしているが子どもの送り迎えをしたりテレビを見たりだいたい一緒にいて仲は良い。二組の家族は家族ぐるみで仲良くしている。数年前出て行ったジミーはグラスゴーで定職もなくケチな犯罪で生きているが偶然元妻との結婚を望むデックの存在を知り捨てた家族の元に舞い戻ってくる。デックは、シャーリー達と一緒に住んでいて、特に娘のマーリンにも慕われキャロル一家とも仲良し、車好きで車の修理工場を営んでいる(雇われ店長ではなさそう)。デックにひとつ欠点があるとしたら、それはとても気が弱いこと。でかい図体して(この人は190近くあるのだ)どんだけヘタレ(チキン)やねんて。そういう気弱がゆえの卑怯、おもしろくてぴったりの役です。金髪男ってちょっとバカっぽいのかも。キャロルを演じているのはキャシー・バーグさんで、リスさんとは4作品共演しているコメディのうまい女優さんで『ケヴィン&ペリー』では16歳の少年役が衝撃でした。今回いつもジャージの上下を着ている太めの気の強いママで、すごくおもしろかった。チャーリー役のリッキー・トムリンソンと、ロバート・カーライル、リスさんは『ケミカル51』で共演。見た目と年齢が違う人が多くて人間関係結構惑わされました。俳優の実年齢を見てみるとキャロル、ジミー、シャーリー、デックの順でほぼ同世代の人たちで、シャーリーは一番若くてジミーとは少し歳が離れていてそれより若いデックをつかまえたと思っていました。

おまけのブックレットによると、グラスゴー出身のジミーはスコットランドなまり、デックはウェールズ訛り、キャロルはロンドンのコクニー訛り、他の人は中部の訛りで喋っているそうです。うっすらと違いはある気がするけど、ネイティブでも全部聞き取るのは難しい方言もあるらしい。

このブックレットの解説で、共感してくれなくてもいいけれどデックとシャーリーは美味しいとこだけつまみ食いをしているやや無責任なカップルと書いている。確かに出来上がっているところへ収まるデックではあるし、シャーリーにしても言いなりになってくれそうなの見つけたなと思う。物語の時代は90年代でしょうか。携帯電話がまだなくて(イギリス映画での登場はアメリカ映画より遅い気がします)デックは隠れて電話したい時修理工場の事務所でしていました。その時代からすごく月日も流れて、時代も変化して、現在の自分の感覚からすると無責任かには賛成しません。親の離婚と子どもってアメリカ映画はひどい話多すぎるし…。シャーリーは知人に「前のダンナはタフだったけど、今の彼氏ヘナチョコでダサいね」みたいなことを言われて。でも真面目に働いているデックのほうがいいやん、て普通に思う。さらに娘と仲良くできる(なんか子どもっぽくてお兄ちゃんみたい)人も貴重。リスさんはメイキングインタビューで、デックは恋愛にロマンチックすぎる考えを持っていて、本当は父親になる資格があるのに気が弱くて自分を認められない、普通すぎて自分には奇妙に感じる、現実にはこんな人はいない(後半エピソードのことでしょう)と思うと語っていました。すでに一緒に住んでいるのにそういう時期だと考えて、赤いバラの花束と指輪と詩(作者は娘)を用意してしどろもどろでプロポーズし、祖父、父から受け継いだ「家宝」の男物の腕時計を娘の誕生日プレゼントにする。彼はとても形にこだわる男なのだ。常にいじめられっ子ではないだろうが、たまにボスの矛先が向いてパシリに使われた少年時代や体がでかくなっても気弱な性格は同じみたいなところが想像できるのも脚本と俳優のキャラ造形の力だろうなと思う。気弱がゆえの卑怯もあるのだけど、デックに持っていかれます。

そしてジミーこそ無責任と思うので、シャーリーが揺れるのはよくわからなくて。出て行った夫を何年か待っていたんだろうなとかね、もう一度会いたいと思っていた日々とかね、想像してみはするものの、実際問題もう一度ヨリを戻すのは難しいだろう。最初は元夫の帰りを喜んでみたものの相変わらずな自分勝手さにだんだん苛立つ描写はよくわかる。アームチェアのオットマン的なクッションがボロっちくなっているけど、どうやらジミーのブーツのせいらしい。そういう映し方も上手いなと思う。

映画は「彼は何年も中年の危機の真っ只中」とキャロルの年の離れた夫チャーリーのことから始まる。若いころすてきに思えたものも、時代の変化や年を重ねることで色あせてきたりする。ジミーは成長できない男。デックは車が好きすぎてベイビー(字幕は愛車)と呼んでいる。チャーリーのバンのような家族用ではないちょっぴり走り屋的セダンで、そこも独身ものだなあという感じだけど子ども達をまとめてドライブに連れて行くところもかわいい。ベイビーを手放してベイビーを得る。デックはだいたいダサい格好をしていて、ジミーはレザーとデニムでカッコつけ。デックは無理して革ジャンを着たりしていたけど、最後はジージャンに落ち着いていました。デックの車は映画の中で何回も壊れるのですが(笑)、修理屋さんなのに自分では修理できない破損で、手に負えないことの象徴かもしれません。公園に近所の老夫婦が集まってダンスしているシーンがありましたが、現在いろいろある夫婦との落差で夢のように美しく描かれている。別居しているものの、キャロルとチャーリーの中年夫婦がいい感じでした。こういう個性的な脇役が出てきたのが予想外でしたが、そういうところも、モチーフや言葉のリフレインも丁寧でイギリス脚本だなと感じました。いい話を直球で展開しないのも、やっぱりイギリスっぽいなと思いました。



どこに出てきたのか気がつかなかったですが、マンゴジェリーのLady Roseもサントラとして
入っています。
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『127時間』

先日震災の日だった。
あの日、震源地から遠く離れたこちらもゆっくり長い揺れが続いたので、大きいなと思った。

『127時間』
これは昨年DVDで見たものだけれど、映画は実話でもうネタバレします。
数年前にNHK白熱教室でシーナ・アイエンガー教授の講義「選択の科学」を見ていた時、この男の話が出てきた。男は一人でロッククライミングに行き、穴に滑り落ちて片腕が岩の下敷きになるのだ。その時の男の「選択」を取り上げたものだ。映画は、『トレインスポッティング』、『スティーブ・ジョブズ』などのダニー・ボイル監督。限定された状況だが辛すぎずおもしろく見られた。男は、腕をはさまれている間、これまでのことを振り返る。家を出る前に無視してきた母からの留守番電話。クライミングにかまけて別れた恋人。辛い状況にある時、過去の自分を思い返して、ああすればよかったこうすればよかったと思うものだとメイキングのインタビューで監督は話していました。「レコードの傷のように」という例えのようにあるポイントをずっと繰り返すばかりで前に進めない。自分の場合は、被災した方々には比べものにならない(日常では想像もつかないような過酷な辛い出来事もあった事でしょう)、ありふれた事でほとんど誰にでもある出来事だったけど、ちょうど7年、今は凪になったのだと思う。たいていの人がそういう経験を内に秘めていて、表にほとんど出す事もなく過ごす、強いなと思う。今思うと、自分より少し先を進んでいたあの時のあの人の心中、いろんなものがものすごく吹き荒れていたんだろうな、、、と思う。
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暦のうえではスプリング

寒いけど陽射しが明るくなってきました。

やってしまいました、『セリーナ 炎の女』とやらで来週から日本公開らしいです。ネタバレかもしれないのでごめんなさい。もう4年も前の映画だし劇場公開スルーのディスク発売かと思っていました。ディスクも出ないもんだと思い込んで昨年輸入版で見たのですが、その時の感想も数ヶ月前からなかなか仕上げられずに置いていました。きっとハリウッドのあの事件の余波でジェニファー・ローレンス作品発掘かなとかいう気もします。彼女は美しいし、ヨーロッパのどこか山の中で撮影したそうで、結構大変やっただろうなという気はします。

『パイレーツロック』 未公開シーン(ほんまはディスクで見て欲しいけど)
Abbey Road フィリップもかっこいいね(T T)


春先になるとなんとなく聴く曲。
ぼっちな内容だけどもうすぐポジティブになるよ。
Bruno Mars Talking To The Moon



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Rhys filmarathon 『Serena』

『Serena』(2015)アメリカ

今回はわりと新しいリス・エヴァンス出演作品で、2018年4月に日本版ディスクが出るそうですが出ないと思っていたので輸入版を買っちゃいました。ジェニファー・ローレンス、ブラッドリー・クーパーという、私でも名前を知っているとても有名な俳優主演作品です。IMDbではジェニファー・ローレンスは彼女の世代で最も高額なギャラの女優と書かれていたのですが、昨年ハリウッドのセクハラ事件で声を上げた彼女はとても勇敢。同様に声を上げていたリース・ウィザースプーンはこれまで取り上げたリスさんマラソン作品に『リトル・ニッキー』、『悪女』があります。いっぽう、わりと好きな作品だった『シッピング・ニュース』、プロデューサーもあの人だし主演もあの人だし、ダメじゃんと思いました。

『Serena』はUS版BDで英語字幕頼りに見ました。馬に乗っている時代のアメリカのロマンス、ヒューマンドラマという予想です。リスさんはヒロインを愛していてただずっと助ける役とどこかで読んだので、なんとなくヒロインのお父さんの元で働いていて彼女のことは娘時代から知っている忠義者(古いな、古い時代の話だから言葉も古くなります)というような想像をしていました。

半ばまでネタバレします。例によって細かいところがわかっていないということをご了承ください。

まず時代が開拓時代と思っていたら、1929年でした。ジョージ・ペンバートン(ブラッドリー・クーパー 30代)はカロライナの山奥で共同経営者のブキャナン(『裏切りのサーカス』でパーシー・アレリン役の人、40過ぎ)と木材業を営んでいる。オープニングの山は東山魁夷の絵のような実写でとてもきれいです。ジョージは豹を仕留めたいと願っていて、自分の木場で働く狩りの案内人のギャロウェイ(リス・エヴァンス 40代後半)と豹狩りをしているところから始まります。

ジョージの実家はボストンで、資本家として山奥に来て木材の切り出しをしています。線路をひいて運搬用のトロッコが走ったり教会があったりと小さな町ができていますが「キャンプ」と呼んでいます。木がなくなったらそこはたたんで別の場所に行くのでしょう。ジョージが山の実務、ブキャナンがお金関係のことを担当しているようです。1929年といえば世界恐慌の年、株の暴落は起きた後のようで、二人は資金繰りと地元住民による環境破壊反対運動の二つの問題を抱えています。

ジョージは銀行と話をするためボストンに戻り、上流社会の乗馬会のようなものに妹と行きます。妹がお金が大変なら金持ちの娘と結婚したほうがいいとアドバイスしている矢先に、乗馬しているセリーナ・ショウ(ジェニファー・ローレンス 20代前半)と出会います。セリーナの父親も木材業を営んでおり、彼女も山奥のキャンプで育ったのですが12歳の時火事で弟二人を亡くし(後の方に出てくる説明ではその時大人がいなかったらしい)ひとり救出された時は幽霊のようにさまよっていた、死の影がつきまとうのでいくら美貌の女性でもやめたほうがいいと妹は忠告します。この時すでに彼女の父親は亡くなっていたようです。

二人は結婚して一緒に山に帰ります。山には女性が少なく、セリーナは金髪の短髪をきれいに巻いた山の中では見たこともない洗練された美しい女性です。しかも都会的な外見とは裏腹に、木場育ちなので山の仕事にも詳しく斧も使え乗馬もうまくて男前で、労働者たちの尊敬を勝ち取ります。まあ、そんなわけでリスさん演じるギャロウェイさんも一目惚れしてしまうんですね~。彼女はギャロウェイに話しかけ、彼の手の甲の入墨を見て前科者であることに気がつきます。何をやったのかと聞かれて「Man slaughter(殺戮)」と答えています。セリーナはギャロウェイは寡黙で人を寄せ付けない男だと思います。周りの人が、彼は100マイル四方で一番の狩りの案内人で、神様から特別な目(vision)を授かったのだと教えます。

実はジョージは食事係の娘を妊娠させていて、セリーナは二人の関係を察してしまうのですが過去のことは存在しないと強気発言。共同経営者のブキャナンもセリーナに反発、どうやらジョージのことが好きで嫉妬しているらしい。

地元住民の反対運動の指導者に保安官(トビー・ジョーンズ 『裏切りのサーカス』トビー・エスタヘイス役)がいて、ハゲ山になって砂漠化する前に国立公園にしようとしています。資本家は木を切り尽くしたら街の人は捨てて別の山に移動するのですから。ジョージたちは資金繰りが苦しい中、反対派の提示する金額に折り合いがつきません。ジョージはブラジルの原生林を持っていて、そのうち移住するのがセリーナとの夢ですが、このままではその山も売ることになりそうです。ある時ブキャナンがとある上院議員に賄賂を贈っているのを保安官に見つかります。保安官は贈収賄罪だ、ペンバートン夫妻が知ったらきっと嫌うだろうしブキャナンだけでなくジョージも同罪で訴えることができると言います。

ジョージもブキャナンも間にセリーナが入ったことにより、運命が狂っていく。
ファム・ファタールものらしい。後半はサスペンスな展開で現代物みたいです。

ギャロウェイさんはある時山で大怪我をし、セリーナの素早い処置で救われます。その事件のせいでセリーナに不幸が起きおかしくなっていきジョージの気持ちは離れていく。ギャロウェイは助かって戻ってきた夜セリーナに会いにきます。ジョージが休んでいるからと彼女に会わせなかったので、ジョージにこんなことを言います。「自分を産んだとき母親はこんなビジョンを見た、わたしが多くを失う時(直訳ですが、死にかけた時という意味?予言だからざっくりした言い方?)一人の女が命を救う、という予言をした、と。奥様はその女性で、名誉ある絆(honor-bound)で結ばれたのだ」と。ギャロウェイ自身も、狩りの獲物を見つけるビジョンを持つと言われる人です。そしてヒロインを助けるってそういう助けかたかと思いました。毎度テキトウな予想をしてかけ離れていればいるほど楽しめます。

リスさん、『アメイジング・スパイダーマン』のコナーズ博士、『ネヴァーランド』のフック船長に続きまたしても片手になってしまう。でもセリーナの手先になるには片手では難しいのではという気がしました。今回はブラウンのウィッグとヒゲとロングブーツが似合っていました。『ノッティングヒルの恋人』の頃のインタビューで歯の提案をしたことを読みましたが、今も歯にはこだわりがあるのか下層の人間役で汚い歯にしてありました。でもそれほど粗暴なタイプに見えず線が細く、もっと狂っていくのが見たかったです。でも一番のシーンはカットされていたのでもったいない!ギャロウェイのキャラがぼやけた印象でした。本編で、木の切り出しは危険で死にかけたりガラガラ蛇に何人もやられたことなどが出てきますが、本当は死ぬシーンがもっとたくさん撮影されていたのにカットされ毒気が抜かれていたようです。本編の感想は、美しい自然、美しいヒロイン、クラシックカーや20年代ファッションなど絵的にはいいのに、ふーんという感じでした。

メイキングの脚本家のインタビューによると原作のある話だそうです。ジョージも東海岸の坊ちゃんなのに山の中の仕事が好きなところがおもしろいし、ギャロウェイが一番おもしろいキャラクターだと言っています。ヒロインに対して「dark loyality (負の忠誠心、かな)」を抱いているそうです。リスさんはインタビューで「豹は手に入れたいけどコントロールできないもののメタファー」と話していました。ギャロウェイさんは特別な目を持っていると言われているけれど、才能というより豹に魅せられ熱意で山に入り足跡を探す、ガイドの時自分では狩らないけど獲物を切り分けたりはする人…だと思います。人のことも冷静に観察していて情報通でman slaughterです。狩りに対しても人間社会に対しても同じ。

小道具の冷蔵庫が山の中なのにと不思議でした。電気は来てなさそうで、寒そうな山の中なので天然の氷を貯蔵して使っているとか?建物は簡素ですが、家具はそれなりのものが入れてあります。当時の恐慌のことをネットで読むと、冷凍保存技術が発達したので南米からの安い食糧がヨーロッパに輸出されるようになったことも一因と書かれていたので、冷蔵庫を出したのかなと思いました。現代はコントロールされている錯覚の中で生きていますが、自然にしても医療にしても完全にコントロールできるものではないと忘れがちなので、たまにはこういう時代の話を見るのもいいなと思いました。

キャストは『裏切りのサーカス』からの二人や、リスさん主演の『もうひとりのシェイクスピア』でエセックス伯だった人がジョージの元恋人を慕う男性役で出ていたりと、ブリットアクターズが活躍していました。こちらも女性監督によるもの。アメリカ英語ですが、少し省略していたりくぐもった発音だったりと朴訥な感じなのでしょうか?字幕がないとさっぱりわかりませんが、今の英語と違うんだなと思いました。
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映画まとめ見感想

1月ももう残りわずか。

今回は
『キングスマン ゴールデンサークル』
『モネ・ゲーム』
『ガール・オン・ザ・トレイン』
『ノー・エスケープ』
『フェンス』
『20th センチュリー・ウーマン』
『プランケット&マクレーン』
『アダプテーション』

『キングスマン ゴールデンサークル』(2017)
友人が元気の出る映画に誘ってくれ見ました。前作を見たときに続編も見る約束をしていました。おもしろかった、今のネタが満載で。ツヨシさんは次回再生するのでしょうか… それほどファンではありませんが、あの世界観なら不可能じゃない気がする。ポピーズランドも、あのお方、サーも笑いました。ちらっとだけ『Captain Fantastic』(『はじまりへの旅』の原題)という看板がダイナーの近くに見えました。組織単位で見ると本家と分家の争いみたいに思えたし、ステイツマンに女性エージェント誕生も時流っぽい(今更でもある)です。

『モネ・ゲーム』(2012)
公開記念かBSで『モネ・ゲーム』をやっていました。こちらはコーエン兄弟なのにもうひとつと思ってしまった。美術鑑定家というまるっきり文科系男子のコリン・ファースが窓の外を伝い歩きしズボン落とす(pantsという呼び方のUK、US混乱も含め)事件で引っ張りすぎな気がしたので。アラン・リックマンのヌーディストの方がしれっとしていておもしろかった。爆弾もガンファイトもできないとくれば、そっちに走らなしゃあないと思う。キャメロン・ディアスも安定感だしね。贋作詐欺のストーリーと結末はおもしろかった。コーエン兄弟のお間抜けな人たちがトラブルを連鎖していくタイプの話は好きだ。


他はディスクで見たもの。今回はアメリカ、メキシコ、イギリス映画。一番期待していたのは『20th センチュリー・ウーマン』、昨年ディスクリリース時に評判が良かったのは『ガール・オン・ザ・トレイン』。ネタバレには注意というか、簡単な紹介と感想のみです。

『ガール・オン・ザ・トレイン』(2016)
離婚した女性が元夫の家のそばを走る電車に毎日乗って再婚した夫たちを眺める、サスペンスです。サスペンスにつき詳しくは書きませんが、時系列混乱系は構えてしまうのでハードルが上がります。主人公と現実の齟齬とかはそういう仕掛けで起きるという感じ。過去はきっぱり決別したほうがいいよ。エミリー・ブラントが今回は飲んだくれで寒そうでした。「あなたの一言で自分には価値がないように思える」といセリフが来ましたね。夫婦の怖い話では『ゴーン・ガール』のほうがつくりもの臭くて楽しめました。

『ノー・エスケープ』(Desierto)(2015)
メキシコ人俳優ガエル・ガルシア君主演の越境してアメリカに密入国するメキシコ人の話。2017年のGWに公開していたけど、行けなかった。映画の作りもシンプルでずっと砂漠の中なのにおもしろく見せる。残酷描写とかはないけど怖いね。狩る側の人、何の権限もない一般人で、そこが怖いし政情とか考えさせられる。傲慢だなと思った。前述ポピーズランドと合わせて考えてみたい。ガエル君の過去作『BABEL』もメキシコとアメリカの国境を越えるエピソードがあって。それも思い出しながら見た。

『フェンス』(2016)
デンゼル・ワシントンと『殺人を無罪にする方法』で受賞した主演女優さんヴィオラ・デイヴィス主演と雑誌で読んで気になっていました。50年代の黒人の話でタイトルから公民権運動の話と勘違い。名もなき市井の夫婦と家族の話だった。主人公は50過ぎで、若くして家出して一人で生きてきた、間に戦争もあって障害を負った実弟の面倒を見ている。黒人であることの生きにくさが身にしみていてアメフト選手になりたい息子に白人のスポーツだと堅実な道を歩ませようとする。戦後の時代の変化などを交え、夫婦や親子を語ったストーリー。ほぼ彼の家で展開し、会話劇でセリフがとっても多い。演じる人は演じがいがあるだろうなあという気がした。父親は家族への責任をきちんと果たす代わりにやや横暴だ。そして威張れるほど正しい人間ではない。清濁併せ呑めとも何回か言っていたっけ。息子は父親が息苦しくて仕方がなく長年許せないのだけど、いろいろ「子どもの頃の悩み」(カズオ・イシグロさんがね、そういう言い方をインタビューでしていたので便利だと思いました)もあるけど、夫婦って大変だし、命を与えてくれて育ててくれて親ってありがたいなと思った。でも説教臭い話ではないです。

『20th センチュリー・ウーマン』(2016)
10代の頃にこういう人たちがいたら楽だったろういという一種のユートピア。60年代の話です。15歳の少年と40歳離れたシングルマザーの話で、母は息子には父親がいないので一人前の男になるよう今風に教育して欲しいと二人の下宿人と2歳年上の幼馴染の女の子に頼む。下宿人は元ヒッピーの中年の大工、もう一人はNYで写真の勉強をしていたが子宮頸がんが分かり地元に帰ってきた赤い髪をショートにした女性。デヴィッド・ボウイのファンなのだ。女二人の男ってこんな風にかっこつけて振舞うもんだという解説もおもしろい。(男は)感受性が繊細であるよりも強くあることが(男同士では)重要と女の子が言っているのが印象的。男と女の考え方の違いというのも、ステレオタイプな気がしたが、あの時代があってそれまで言えなかったこともオープンになって、その時代も忘れられているような気がした。思ったほどぐっとこなかった。

『プランケット&マクレーン』(1999)
これはかなり古めですが、ロバート・カーライル、ジョニー・リー・ミラー、リブ・タイラー主演のUK時代物。紳士だけど泥棒の二人に女性が絡んで、なんとなく西部劇のような冒険活劇的エンタメ作品かと思いましたが、とてもイギリス的でおもしろかった。時代は多分モーツアルトが人気だった頃のよう。クエーカーのオートミールの箱についているおじさんおような格好をしていました。コスチュームものながら、エキストラの数がものすごく多くて力が入っています。刑務所で出会った庶民のプランケット(ロバート・カーライル)と聖職者の息子で貧乏ジェントリーのマクレーン大尉(ジョニー・リー・ミラー)が組んで貴族相手の強盗(gentlman highway)を働く話。レベッカ(リブ・タイラー)も仲間かと思ったら、れっきとしたご令嬢で、でも拳銃の練習をしているという進歩的なヒロインでした。墓場泥棒や刑務所などの美術が興味深かったです。

『アダプテーション』(2002)
『マルコヴィッチの穴』の脚本家チャーリー・カウフマンと監督スパイク・ジョーンズのコンビなのでいつか見ようと思っていました。脚本家のチャーリー・カウフマンと双子の弟役にニコラス・ケイジ、女性ジャーナリストにメリル・ストリープ、プロデューサー役にティルダ・スウィントンと豪華なのに、持ち味のモヤモヤがもっと倍増してすっきりしない作品でした。アダプテーションは生物の適応と脚本の脚色の二つの意味があって、珍しい蘭を密猟している男の話を書いた本を脚本にするため七転八倒みたいな話。マジメで堅物の脚本家チャーリーと、脚本家志望で居候のドナルド(多分こっちが弟っぽい)は思ったように行動するマイペース人間で、マスクとシャドウというか、現実と理想みたいなコンビでおもしろかった。ドナルドは『アルジャーノン』を知らないのと、兄のチャーリーに言うところがありました。主人公が同じチャーリーだからかもしれませんが以前書いた『ヒューマン・ネイチュア』に『アルジャーノン』のパロディをとても強く感じました。

チャーリー・カウフマン作品だと、やっぱり『ヒューマン・ネイチュア』が一番好き。次が『マルコヴィッチの穴』か『エターナル・サンシャイン』か迷うところです。『ヒューマン・ネイチュア』と『エターナル・サンシャイン』は監督がミシェル・ゴンドリーさんですが、彼の作品の中では『エターナル・サンシャイン』より他のものが好きで、恋愛に突き進むのにモヤモヤしている主人公を描いた方がうまいからだと思います。脚本家ご本人的には、起承転結がはっきりしていないモヤモヤ系の方がお好きなんだろうなあと思いました。

前半の映像表現はコミカルで『ヒューマン・ネイチュア』的におもしろかったです。
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Rhys filmarathon ショートフィルム

しばらく書いていなくて広告記事になってしまったので、この秋ハロウィンに公開されたショートフィルムがロングバージョンがでわりと最近上がっていたのでどうぞ。



現在は、オールドヴィクシアターで『クリスマスキャロル』舞台を上演中(11/20〜1/20)
来年はナショナルシアターにも出演、
最近発表されましたがオールドヴィクシアターで春から『ノッティングヒルの恋人』、『Jの悲劇』のロジャー・ミッチェル監督と『Mood Music』を上演するそうです。作曲家のコメディのようです。複数の人物が錯綜するラブコメディ『マイ・ファニー・レディ』のような感じかなと想像します。(※2018年、クリスマスキャロス終了してしばらくして降板が発表されました)
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