GET SHERLOCK

BBC「シャーロック」とその周辺について

映画『T2 Trainspotting』 Boys after summertime


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一応ネタバレなしに、簡単な感想です。

スコットランドを舞台にした前作『トレインスポッティング』から20年後の4人。
前作がとてもおもしろかったのでハードルも高いのですが、納得のストーリーでした。見る側も年齢が上がっている分(当然若い方も見られるとは思いますが)、変に夢のある話では納得できませんが、ちょうどいい感じだったと思います。製作サイドからは「20年の間に何を得てきたのか、揺さぶられる」ということで、引きこもりたくなるほど衝撃的だったらどうしよう(笑)とか、原作は『○ルノ』というタイトルでずっと前に出ていた日本語版もけっこう挑発的な表紙でしたが、えげつなさすぎる内容だったらどうしようとか(笑)。そのタイトルだとネットにアップする時に引っかかることがあるからでT2にしたそうです。ということでここでも一応伏字にしておきます。トレインスポッティングというのは廃線になった線路沿いに鉄道オタクのように陣取り薬をやるということですが、当時の廃駅には新しい駅ができています。

これは前作を見ておいた方が楽しめます。やっぱり便器とかね。前は「かわいい子は観光客」だったのが、今回は「かわいい子は外国人」でした。前作『トレインスポッティング』の原作本も最近読んだのですが、日本語もイキが良くて引き込まれました。前作からの内容も少し出てきました。続編は映画を見てから読むつもりだったので、少しだけ読み始めました。原作との距離感がどのくらいかが気になります。

前作「選ぶことをやめた若者たち」というのがテーマで、1980年代のスローガンが「Chose life」だったからという説明がT2に出てきます。超不況の当時の彼らにとってはギャグでしかなかったわけです。薬物依存の主人公は「人生を選んで」仲間を裏切って取引の金を奪って逐電します。一生に一度あるかないかのチャンスなわけですが(これは『ELEMENTARY』でジョン・ハンナさんがゲストの回もそういうエピソードでした。ついでに彼の出演していた『フォーウェディング』ネタも入っていました)、未来が開けるとはとても思えませんでした。本ではアムステルダムに行ったことになっています。多分シニカルなブラックジョークのような気がします。

サマータイムが気になる
この映画の監督ダニー・ボイル製作総指揮でトレスポの後に作られたのがケビン・アレン監督リス・エヴァンス主演のウェールズ映画『Twin Town』でこちらも20年経って続編製作が進行中ですが、この映画の中で使われているのがマンゴー・ジェリーの「In the summertime」という曲です。映画で初めて聞いたのですが、1970年のヒット曲だそうです。「夏には彼女を誘って出かけよう、彼女の親父がリッチなら飯に行こう、そうじゃなきゃその辺をドライブしよう(ってことだと思いますが)、冬が来たらパーティしよう、また夏が来て、そのうち所帯を持つかもね」となんとものんきな曲調がいいです。ビジュアルに衝撃を受けましたが、英国のミュージシャンです。歌詞と映像が両方入っているページのアドレスを載せておきます(リンクはしていません)。

マンゴー・ジェリー「In the summertime」
http://www.metrolyrics.com/in-the-summertime-lyrics-mungo-jerry.html

もう一曲、「It's gonna be a cold, cold Christmas without you」という曲が使われています。
「天気予報はクリスマスまで暖かくなると言っているけど、あなたがいないクリスマスなんてとっても寒くなるに決まってる」というようなことでしょう。「暖かくててだらだらすごした夏の頃の私たちを夢見ている」と続き、こちらはsummerday。

「It's gonna be a cold, cold Christmas without you」
https://www.justsomelyrics.com/1103082/dana-it%27s-gonna-be-a-cold-christmas-lyrics.html

アメリカのドラマ『ベター・コール・ソウル』は弁護士の話ですが、第1話のイントロ部分で、主人公ジミーが夏休み中によその家の家畜を酔った勢いで殺してしまった大学生の弁護のスピーチをしますが、「若者はいつまでも夏の日が続くと思っているがそうではありません」と言っています。

T2の中でも「サマータイム」のくだりが出てきて「夏時間なんて農夫のものだろう、時計の針を1時間直さなきゃならないなんてさ」とスパッドが嘆いています。1時間の差でいろいろなことに遅刻してそれが連鎖して‥と。
「サマータイム」は青春のことでもあり、T2の4人は「サマータイムの終わった中年たち」ということになりそうです。

子どものいる人もいない人もいるけど、父親不在で大きくなっている。出る幕なし。HIVも避けて生き延びて、ヤク中のままの人も断薬に成功した人もいるけど、心臓発作も切り抜けてあと2、30年は生きなければいけない。それが現代。そんなもの悲しさも多分に盛り込まれていて、前作同様に本作も未来への恐れをずっと持っていて。「過労死寸前の女が作ったスマホを使って」と、「労働条件の明らかな悪化」、苦笑します(リアルすぎ)。

「大型テレビなんかいらない」といっていた前作、本作には大型TVがやたら出てきます。当時ちょっとした贅沢品で安定した収入の象徴だったのですが、今やありふれたものになっている。サイモン(シックボーイ)の部屋には山のようにDVDが積まれていて時代の移り変わりを感じます。前作の原作の中で、薬が効いている間はジャン=クロード・バンダムのような映画を見るのがちょうどいいとあり、レンタルビデオが原因で友人の一人がやけを起こしてHIVに感染して亡くなったエピソードがありました。今は今なりの未来への恐れを持っているものの、あれからなんとかやってきたのだからこれからもなんとかなるだろうという経験からくる楽観もある。だから、ストーリーがあまりにも悲惨だったりあまりにも夢だったりするとシラけるので難しいですが、ちょうど良かったです。ひとつ言えば、20年近く刑務所にいるベグビー(フランク)のことを妻子は待っていないんじゃないだろうか、本当だったら。ドライすぎる?シャバに出てきたベグビーも20年で大きく変わった世の中についていけていないわけでもないですが、未だに大型テレビをパクろうとしているのがもの悲しいです。

今回スパッドが活躍しますが、ユエン・ブレムナー さん、間もいいし、しれっとおもしろい演技をする好きなタイプの俳優さんです。舞台版のトレスポではこの方が主人公のレントンを演じられていたそうです。もちろん、ジョニーもロバート・カーライルさんも好き。ユアン・マクレガーはビッグネームですが『ナニー・マクフィー』ではリスさんの弟役でほんのちょっとだけのカメオ出演ですがやっぱり二枚目だなと思いました。ユアンもジョニーも、いいお年ですがやってくれてます。監視カメラの映像を使った見せ方もどこにでもカメラのある現代だなと、おもしろかった!まあ、監視カメラといえばリスさんの99年の『HEART』にもバッチリ映っているっていうエピソードがありました。

家を出て自立しろというのが20世紀で、それから社会もだんだん高齢化しそれじゃあやっていけないってなっているのが現代。洋画では親の家に住んでいるのがカッコ悪いことと描かれますが、時代の都合でそれ変更、となるのでなんだかなと思う。

本作、納得のエンディングでした。彼らはなにも成功しないですが、なんだか痛快で清々しかったです。

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Brazil



Gontiti/Brazil

気持ちのいい天気の休日にぴったりの曲です。
ブラジル」とは現実逃避して行きたくなる国だそうです。
映画『未来世紀ブラジル』版より馴染んでいるせいか、このアレンジが好きです。

『未来世紀ブラジル』がイギリスものというつながりです。

Tshirts collection 2017

あたたかくなってきたので新しいTシャツが欲しいです。当ブログのリコメンド商品です。


シャツをはおって着ることをおすすめします。また、外出先で不慮の事故等に巻き込まれないよう細心の注意を払っていただきたいです。

Do you feel a happy butterfly effect?

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お花見もはじまりましたが、バタフライエフェクトという言葉をご存知でしょうか?

以前にも映画『Mr. NOBODY』の中でご紹介しましたが、蝶の羽ばたきほどの微かな微かな振動が地球の裏側に嵐をもたらすこともあるという物理学の理論です。実際のところ因果関係の立証が難しいので、風が吹けば桶屋がもうかるくらいの距離感です。

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Mayumi Shinoda 'Lady Victoria vol.3 : The adventure of the Japanese village in London'
A brand new mystery novel about an eccentric detective Lady Victoria in 19th century.
The Author is an enthusiastic Sherlock Holmes's fan.
She wrote many words from Conan Doyle's works and also Nottinghill in this book. Is this a butterfly effect from Rhys's movie?
She sometimes posted her comments to this blog. Thank you!

そんな前置きからはじまる『レディ・ヴィクトリア』3冊目(ネタバレなしです)。いつも篠田先生のブログで執筆中継を拝読していることで物語もより楽しませていただいております。ホームズ・ワードも時々登場し、何気ない地名にも勝手にくすっとします(これはただの私の主観)。映画もですが製作者の遊び心を見つけられると楽しくなります。にまにましながら読みましょう。

ヴィクトリア朝のロンドンに住む風変わりなレディ・ヴィクトリア探偵役、今回は当時のジャボニズム ブームに乗ったテーマパーク日本人村を舞台に事件が起こります。明治維新を経て先進国大英帝国に渡った日本人が登場し、その時代をもっと知りたくなりました。先生があとがきにも書かれている1880年代に作られたコミックオペラ『ミカド』は今も人気があるとか。その登場人物からとったのかなあというトプシーとターベイというコンビ名が、2010年頃の映画『ナニー・マクフィー 空飛ぶ子豚』にも出てきました。そんなこんなで、いろいろ知ると深く楽しめます。作中に出てきた「宮さま」のシーンがちょうどYouTubeにあったのでリンクしておきます。全編みられますが2時間以上かかるのでやめておきます。白人が着物を着て演じているというのがやっぱり奇妙ですが、日本人もカツラをつけて舞台をするので、それも奇妙なのは奇妙です。

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She wrote about the comic opera described the Japanese emperor " The Mikado" which is rarely known in Japan.Topsey and Turvy are the roles of this.

実は最近SNSでもバタフライエフェクトが起き、海外のファンの方と言葉もわからないなりにつながれた気がして嬉しかったです。前回取り上げた『リトルニッキー』は10数年前の古い映画で、中で取り上げた曲『Home sweet home』なんて30年前(リアタイでは聞いていないですが)で、次から次に新しいものが出てくる中でそんな古いものを取り上げて何の意味があるのだろうとよく思います。
でもこの映画は海外ファンにはけっこう人気があるみたいです。リスさんがキレイなサタンを演じているからかな。そしてこのイラストはやりすぎた気がします。他にも何点か紹介してくださっています。

思えばシャーロックでも、ネッ友の方々に出会いました。その中でもハッピーなバタフライエフェクトをたくさんいただいています。ROMだけの方もいらっしゃいますが、いつも楽しませていただいております。人は全くの偶然からいろいろなものに出会い影響を受ける、バタフライエフェクトの連続かもしれません。春の陽射しはハッピーなバタフライエフェクトの気分になります。

Thank you for giving me many butterfly effects of SHERLOCK fans and Rhys's fans!

Mycroft Holmess

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This is also today's game.

April Fool

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Today is April Fool!
I'm joining the game of 'SHERLOCK' fan friends.


リス・シネマラソン 『リトル・ニッキー』悪魔が憐れむマイノリティの歌 Brothers and rock

『リトル・ニッキー』原題 Little Nicky (2001)

今回リスさんは悪魔の役、少し意地悪そうな感じが似合います。
この映画のことは知っていましたが、リスさんが出ていると知りませんでした。

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変な顔に描いたら地獄の業火で焼いてやる、と言われそう。
いつもより多めに燃やしています。

‘Draw me ugly or burn you.’


Thank you for Russian fans group of Rhys Ifans!



Take me to your heart, feel me in your bones,
Just one more night and I'm coming off this long and winding road
I'm on my way
I'm on my way
Home sweet home
-Mötley Crüe / Home Sweet Home-

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"Little Nicky" and "Spider Panic"


これもネットでちょこちょこ見ていて、
魔王の三男ニッキー(アダム・サンドラー)が人間界に家出したので、お兄ちゃんのエイドリアン(リス・エヴァンス)が連れ戻しに来て、ニッキーが好きな女の子といるときに念力で邪魔をしたり、最初は人間の食べ物も知らなくてチョコバーとか食べていたのに酒を飲んだり人間界に染まって堕落する(悪魔なのに)ようなラブコメかと思っていました。

実際のストーリーは?ネタバレには一応配慮します。
魔王(ハーヴェイ・カイテル)には息子が三人います。

・長男エイドリアン(リス・エヴァンス)=冷酷、悪がしこい、化粧をしている
・次男カシアス(元プロボクサーの方が演じている)=乱暴、サディスト、魔王になった時の野望は24時間拷問
・三男ニッキー(アダム・サンドラー)=気弱、自信なし、野心なし。兄たちにいじめられている、カシアスにシャベルで殴られて顔が斜めになっている、ヘヴィメタ好き 父親のお気に入り

なかなか後継になれない長男と次男が人間界に家出したことから、地獄の門が凍りつき人間の魂が入ってこれなくなって魔王の体は溶け始めます。二人を同時に連れ戻さないと魔王を助けることができません。そこで三男ニッキーが、中に閉じ込めることができる瓶を渡され、連れ帰るため人間界に送り出されます。人間界で色々助けてくれるのが言葉をしゃべれるブルドッグ。ニッキーが出会う、ちょっとダサい女の子ヴァレリーがこの映画の後『Human Nature』でリスさんと共演のパトリシア・アークエットさん。彼女はタランティーノ脚本の『トゥルー・ロマンス』で戦う女性を体当たりで演じブレイクしました。ニッキーは彼女に自分がどうして人間界に来たかを話すのですが、「My father is sick and in hell」(正確ではないですが)「僕のお父さんは病気で地獄にいる」という意味で言っていますが「病気で最悪の状態だ」というように聞こえ、「deep south」(地球の深いところ)から来たというのも南部出身みたいに取られてあまり悪魔というのを本気にされません。最後は長男エイドリアンとニッキーの対決になります。魔王になったエイドリアンがNYのセントラルパークで人間の大群衆を前にパフォーマンスをするのですが、リスさんはまるでロックのライブのようだったと言っていましたが、舞台やバンド経験もある方なので、さすがでした。

アダム・サンドラーさんはコメディ俳優かと思っていたら、TV番組「サタデー・ナイト・ライブ」で活躍のコメディも作る音楽もやるというマルチな方で、「サタデー・ナイト・ライブ」関係者が集結している映画でした。ストーリーは、小ネタが多くオチはすごくおもしろかったですが、その前にもう一山欲しかった気もしましたが、90分と短めなので繰り返し見るのにちょうどいいし、見ているうちに気にならなくなりました。何が何でも120分なくていいし、180分なんか耐えられません・・。映像で一瞬で説明するのがとても上手。悪魔たちはとにかく寒がりで、人間の中に入っていても誰かわかるようになっています。コメディながらCGを多用していて、スペクタクルな映画よりも、はるかに想像力や意外性のある映像表現でおもしろかったです。そしてタランティーノも結構いっぱい登場する。魔王の父(ニッキーたちのおじいちゃん)が出てきますが、その父、その祖父とかゾロゾ出てきたらおおもしろいかも(中島らもさんの作品にそんなのがあった)。そして3兄弟は母親が違うようですが、もっと兄弟が見つかりそうな気もする。

「中に閉じ込めることのできる瓶」は『西遊記』に出てくる名前を呼ばれて返事をすると中に吸い込まれるのひょうたん(悪者の金角・銀角が閉じ込められた)のようだし、変身したエイドリアンも日本の鬼っぽいメイクで東洋好きなのかなと思いました。

特典と解説が本編より長いくらい入っていて、楽しんで作っていることが本当によく伝わりました。ラブコメに走らなかったのは、『リトル・ニッキー』がマイノリティの物語だから。前髪に隠れているシャイな男の子ニッキー、ヘヴィメタ好きのニッキーの信者、ゲイ(本人は否定している)の売れない俳優、自信のないデザイン学生の女の子、衣装倒錯の人。美女のパトリシアさん演ずるちょっとダサいデザイン学生のヴァレリーに「私は美人じゃないから人のために美しいものを作るの」と言わせていますが、なかなかにすごいセリフ。コメンタリーではオジーさんはじめメタル界のレジェンド達が熱く語っていました。10代の頃ヘヴィメタが好きだった男子がターゲットで、大人なってもヘヴィメタへの愛を変わらず持ち続けているが、女性の場合はなんであんなの聞いていたんだろうと黒歴史になるらしい(笑)。まあそういう時代だったてことで。

悪魔が人間界に家出して信者を得て新しい世界を作ろうとするのは、『神様メール』と似ているなと思いました。こちらは神様の娘が家出し、使徒を集めて父親の治める世界とは違う新しい世界を作ろうとする話です。地獄とメタルといえば宮藤官九郎の『Too young to die 若くして死ぬ』もあり、見ていませんがインスパイアものかどうか気になります。

三人息子がいて末っ子が抜けているけど性格がいいのは昔話や寓話によくあります。年齢差があるから末っ子が間抜けに見えるのも当然で、お兄ちゃん目線では本当にいつまでもダメ弟なんだろう。リスさんは、セリフのないところでも表情でエイドリアンのキャラを説明していて、どうやら冷酷なくせに自分で暴力を振るうのはそれほど好きじゃなくて実は少しナイーブとか、父と末っ子がヘヴィメタで盛り上がっているところを後ろから「二人で仲良くしてなんなんだよ」と見ていて、悪魔のくせにどことなくかわいらしい。衣装デザインの方が、エイドリアンはキザで繊細といっていました。イギリス人のリスさんのすごく芝居がかった演技が似合うし、外見もロックミュージシャンのようでした。オジー・オズボーンのカメオ出演など、直球ではないけれど、これも音楽映画です。

ラジー賞にいっぱいノミネートされていましたが、なんでしょう、見ても見なくてもいいけど気楽に楽しめる映画です。音楽映画好きなので血が騒ぎます。


あなたの名前でメタリカ風ロゴが作れる http://metallica.alwaysdata.net/
エイドリアンでやってみました。(一般的な名前ってことで)
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AC/DC - Highway to hell
こんな世界観。鬼(じゃなくて悪魔か)角がかわいい。
映画のセントラルパークのーシーンはこんな感じ。


Ozzy Osbourne - Bark at the moon 
「月に吠える」朔太郎じゃないけどこんな邦題、狼男になるストーリー仕立てのMVです。


Mötley Crüe - Home Sweet Home
スィートなハード・ロック・バラードです。
Nicky said Mötley Crüe said a sweet home was in each mind.
このバンドのベーシストもニッキー(Nikki Sixx)。
モトリー・クルーはメタルじゃなくて男性にも女性にも人気だったし、
イメージ戦略かMVに出てくるオーディエンスに女の子がたくさんいてみんな美人。


GUNS N' ROSES - Sympathy for the devil
タイトルは『悪魔を憐れむ歌』より。
映画には関係ありませんが、悪魔にシンパシーを感じるってことで。
ストーンズのオリジナルバージョンにしようかと思いましたがMVがないので
GN'R virは映画『Interview with Vampire』のサントラだったので映画シーンが挿まれて楽しいです。
Original song /The Rolling Stones




ついでに
◾︎『スパイダー・パニック』
アリゾナの砂漠の近くの片田舎の町が巨大化した蜘蛛に襲われるB級パニックムービーです。
『リトル・ニッキー』のヒロイン、パトリシア・アークエットさんの兄弟デイヴィッド・アークエットが主演していて、『リトル・ニッキー』に出てきた蜘蛛と繋がりがあるのかと思って見ましたがあまり関係ないようです。『宇宙人ポール』的なものに王道ラブロマンスを絡めたような話で、『エイリアン』、『コークーン』などのオマージュがありました。蜘蛛がそんなにちゃちくなくてエンタメとしてそれなりにおもしろかったです。10代のスカ・ヨハが出ていました。



◾︎『Sing Street』
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昨年夏公開された『Sing Street』も3きょうだいと音楽の話です。
1980年代のアイルランドが舞台、超不況の真っ只中、離婚寸前の両親を持つ15歳のコナーは経済的理由から学費の安い高校に転校させられる。新しい高校では先生や同級生にいじめられるけど、モデル志望の女の子と親しくなりたくてバンドを組みミュージックビデオを撮る話です。デュランデュランの『Rio』がお手本です。ちなみに学校は男子校で彼女は学生ではありません。登場人物の中では楽器が何種類も演奏できるマルチプレイヤーのエイモン君とコナーのお兄ちゃんが好きです。

コナーには兄と姉がいて、兄はロックのことをいろいろ教えてくれますが、大学は休学中、マリファナで気を紛らわせている感じです。ドイツへ行きたかったが両親に反対されて諦めた過去があります。弟のことはすごくかわいがっているのですが、長男には「お前なんか」っていう思いがあり、ちょっと変わり者の両親との生活を「密林の中をたった一人で切り開いて築いてきた。お前は俺の通った道を歩けばいいだけなんだから。何をやっても可愛がられる」。『リトル・ニッキー』のわりと優等生の長男エイドリアンと野心のない末っ子ニッキーの関係も似ています。この悪魔兄弟何歳離れているんだろう、1000歳とか?

かくいう自分も三人きょうだいの末っ子で、そういう感じはわかります。
自分の場合は、歳が離れているので、もう一回切り開き直さないといけなかったですが‥。兄の影響は意外とあるなと思い返しました。一緒に過ごした時間は短いので、それほどがっつり話したりしたことはないながらも。『パイレーツ・ロック』のサントラCDのダスティ・スプリングフィールド『You don’t have to say you love me』Prcol Harum『A whiter shade of pale』はすごく昔に聞いた記憶があります。多分自分が3、4歳の頃、当時兄は映画好きで古い曲も聴いていたようでした。どちらもものすごく有名な曲なので、違うところで聞いたのかもしれませんが、FMから流れるたびなんか知っていると思っていました。そして上のきょうだいというのは、自分が大人になっても相変わらずずっと先を走っています。

離婚寸前で彼氏のいる母親と父親を初ギグに呼んで仲のいい二人に戻って欲しいとコナーは思っていて『バック・トゥ・ザ・フューチャー1』の主人公マーティの両親に重ねています。気の弱い父親は高校時代のいじめっ子に大人になってもアゴで使われていてパッとしない。これも何回も見た映画ですが、今見ると両親が否定されていることが少し辛い。10代の子どもなんてそんなもんだけど、ままならないこともたくさんあるんだって、と思います。バンドの要のいろいろな楽器が演奏でき作曲もできるエイモン君は、『スタンド・バイ・ミー』のメガネの子、コリー・フェルドマンを連想する顔立ちですが、映画そのものが少年の冒険を描いた『スタンド・バイ・ミー』オマージュのようで、どちらも80年代の名作少年映画です。

周りに遠慮しているコナーのお兄ちゃんが好きなので、周りを気にしすぎるなと言ってあげたい。エンディングでは家で腐っていた彼にも変化が起きたようで、進みだしそうな予感がしました。

A-ha - Take on me
コナーが女の子に「バンドやってるなら歌ってみて」と歌わされた曲。
MVとしてはデュランよりこっちが断然おもしろい80年代の名作です。


Duran Duran - Rio


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なんだか今回とても80・90年代な話題でした。

Intermission/ Peter Pan movies

前の記事でピーター・パンを踏まえて書いたのでピーター・パン映画の見比べです。

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リス・エヴァンス主演の『ネバーランド』を見て(これはまた今度書きます)、そういえばディズニーのピーター・パンそのものを見たことがなかったので合わせて他の作品を見ることにします。ファンタジー音痴で、探偵小説の好きな子どもで、絵本でくらいしか『ピーター・パン』のことは知りませんでした。「ネヴァーランド」っていえばマイケル・ジャクソンの自分だけの夢の国だったのでイメージが今ひとつよくないし、ピーター・パン症候群とかね・・・。
映画はたくさん作られています、作る側からしたら映像表現は作りがいがありそうなのはよくわかります。
ネタバレを気にせず書きますのでご了承ください。

ロビン・ウィリアムズ主演『Hook』(1991)
ディズニーアニメ『ピーター・パン2 ネヴァーランドの秘密』(2003)
ジョニー・デップ主演『ネヴァーランド』(2004)
ジョー・ライト監督『PAN』(2015)
『ピーター・パン』(2003)

■『フック』(Hook)1991
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Director: Steven Spielberg
Writers: J.M. Barrie (books), J.M. Barrie (play)
Stars: Dustin Hoffman, Robin Williams, Julia Roberts

かつてのピーター・パンが大人になって家族を顧みない仕事人間の中年になっている話。ウェンディ(マギー・スミス)は慈善活動家で孤児の世話をしており、ピーター(ロビン・ウィリアムズ)はアメリカ人の養子となり、ウェンディの孫のモイラと結婚、一男一女がいる。男の子の野球の試合を見に行く約束をすっぽかし、少し家族関係がギクシャクしていたところ、ウェンディの名前の付いた記念病院がロンドンに新しくオープンするので、家族でイギリスへ行くのですが、子どもたちはネヴァーランドへさらわれ、太っちょのおっさんピーターが子どもを取り返す話です。初めは飛び方も剣の使い方も忘れてしまっているので失敗、金でかたをつけようとしたりのズレっぷりがおかしいのですが、ティンカーベルのとりなしで3日の猶予をもらいピーターはロストボーイズと一緒に鍛え直す。

フック船長(ダスティン・ホフマン)はピーターの事を忘れたことがなかったのに、ピーターはすっかり忘れていたのがあわれ。フックはさらったピーターの息子を自分の子どもとしてかわいがろうと決め、父親役をピーターから奪おうとする。自分と同じ赤い上着と黒い帽子と黒いカールの長髪のカツラをつけさせる。ネヴァーランドにとどまる決心がついたら耳飾り(ピアス)をつけろという。海賊になる儀式のようなもので一つ目のピアスは重要だと説明。

リスさん演じる『ネバーランド』でも、ジミー・フックが海賊として生きる決意をし海賊の衣装をつけピアスを空けるシーンがあります。それだけ見ても何か決意したとわかりますが、『フック』で明確になりました。(ピアスはお若い時から開いていました。)

フック船長の後ろの手すりに、フックの顔のような飾りがついていて一つだけ王冠になっていますが、原作『ピーター・パンとウェンディ』の中にフックはもともと貴族でしかも王室の血を引くことが匂わされていることからではないかと思います。原作では手下にスミーという老人とジェントルマン・スターキーという元教師のふたりが出てきますが、『フック』でもディズニー版でもスミーにまとめられています。『ピーター・パンとウェンディ』の中では、ピーターは生後数日で母親の元から逃げ出したのでキスを知らないのですが、『フック』の中ではモイラに恋をしてキスをし成長が始まったことになっています。

ロビン・ウィリアムズが出ているので「グッドモーニング・ネヴァーランド!」とロストボーイズのリーダーの子が言っていました。


■ディズニーアニメ『ピーター・パン2 ネヴァーランドの秘密』(2003)
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なぜ2を借りてしまったのだろう・・・それはお店のリコメンドだったからです。
ウェンディがお母さんになっていて、お父さんが戦争に行くところから始まります。戦争時代なので子どもたちは夢が見られないという設定。小学生くらいのお姉さんと幼児の弟、弟は母から聞くピーター・パンの話が大好き。突然子どもの疎開が決まりました。姉はピーターなどは信じないとケンカ、その夜フック船長にネヴァーランドへさらわれます。ロストボーイズに新しいお母さんだと思われます。「信念」と「信頼」を取り戻し飛べるようになり、フック船長をやっつけ家に帰れるという話でした。


■『ネヴァーランド』Finding Neverland (2004)
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Director: Marc Forster
Writers: Allan Knee (play), David Magee (screenplay)
Stars: Johnny Depp, Kate Winslet, Julie Christie

ジョニー・デップ主演で、劇作家のバリーが公園で知り合ったデイビーズ家の子どもたちとの交流から生まれた『ピーター・パン』が完成するまでの物語です。子どもがすごくかわいい。友人のコナン・ドイル先生も少しだけ登場しました。『ピーター・パンとウェンディ』(新潮文庫)のあとがきによれば、映画と違いデイビーズ家の主人はバリーが知り合った後に亡くなっているそうです。お揃いの服を着た4兄弟がかわいいのと、男の子が4人もいると繕い物に追われるというお母さんのセリフが印象的でした。デイビーズ家は主人がなくなり裕福ではないのでメイドもおらず、さぞや大変だろう。バリーさんはなんとか援助したいと思って行動するのですが社会的には既婚男性がよその家族と親しすぎると白い目で見られ、純粋な善意の行動が社会的規範からの逸脱とみられ、大人社会の面倒くささが描かれています。

■『PAN』(PAN)2015
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Director: Joe Wright
Writers: Jason Fuchs, J.M. Barrie (characters)
Stars: Levi Miller, Hugh Jackman, Garrett Hedlund

一番最近の映画です。監督は『つぐない』のジョー・ライトさん、デザイナー出身で彼の美術が好きなので、以前から見たいと思っていました。色彩豊かで、実際にネヴァーランドのセットを組んで撮影したそうですが、巨大でアミューズメントパーク並みでした。
ストーリーはかなり自由で、黒ひげ(ヒュー・ジャックマン)という敵役を立てて、救世主のピーターとフック船長になる前のジェームズ・フックが協力して戦うというものでした。ピーターは赤ん坊の時に身を守るため母によって人間界に捨て子として送られます。第二次大戦中の孤児院で育ち、ピーターはある夜他の子どもたちとともにネヴァーランドへさらわれます。黒ひげは多くの奴隷に不老不死の力を持つ妖精の粉の結晶を鉱山で探させています。その奴隷の一人がフックで、イメージはインディ・ジョーンズみたいですが、逃げ出した後ピーターとタイガー・リリーとともにネヴァーランドを守るために海賊と戦います。

プロローグのロンドンの街並みの屋根は、リスさんの『ネバーランド』を思い出しますが、こちらのピーター君は高いところが嫌い。不老不死の妖精の粉も『ネバーランド』と同様。戦争中設定なのはディズニーアニメと同様。ピーターは妖精の王子と人間の女性との子どもで救世主であるため母にネックレスをつけて捨てられたのですが3日間で飛べるようになって本物であると証明するようにいわれます。高貴な身の上、捨て子、特別な力と運命など物語の英雄の条件が揃っていますネ。アメリカのファンタジードラマ『ワンス・アポン・ア・タイム』の主人公エマも人間界に捨て子として避難させられていました。(ロバート・カーライルさん目当てでS1しか見ていません。)「3日間で飛べるようになる」という条件はロビン・ウィリアムズの『Hook』にも出てきます。また恐ろしい人魚が登場するのですが、後述の『ピーター・パン』の中にも登場します。水に引きずり込むという伝説上のセイレーンのイメージでもあります。細かいところはいろんなものがミックスされていますが、かなりオリジナルなピーター・パンでした。

またタイガー・リリーたちは、ネイティブ・アメリカンとして描かれることが多いのですが、ジョー・ライトさんは原作で「先住民族」となっているので世界各地の民族をミックスしたと話されていました。アンデスなど南米の民族や中国奥地の民族などとてもカラフルな衣装を着ていますが、他にもオーストラリアや各地のイメージが入っているそうです。演じているのは全員白人でした。ロマンスの部分はフックとタイガー・リリー担当でピーターはあくまでも子どもということでした。

■『ピーター・パン』(Peter Pan)2003
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Director: P.J. Hogan
Writers: J.M. Barrie (play), P.J. Hogan (screenplay)
Stars: Jeremy Sumpter, Jason Isaacs, Olivia Williams

こちらはかなり原作の『ピーター・パンとウェンディ』に忠実。みんなの持つイメージ通りの配役ではないでしょうか。ウェンディたちの父親のダーリング氏(銀行員)とフック船長を二役で同じ俳優が演じているところに興味を惹かれました。いろいろ見てきましたが、「フックと大人」も重要なテーマです。ダーリング氏は奥さんによると、「家族のために夢を引き出しにしまってガマンしているが夢は引き出しの中で膨らむ一方」とのことです。

ピーター・パンといえば男の子の話というイメージが強いのですが、原作から女の子のウェンディが重要な役です。この映画の中ではウェンディは12歳で、より具体的に侯爵夫人の伯母に「そろそろ私のところでレディ教育と花嫁修業してはどうか」と迫られ、ピーターと一緒に弟たちを連れて逃げ出します。このウェンディの夢は小説家で女海賊などの冒険ものを書くことですがシンデレラや白雪姫などのプリンセスのロマンスも大好きです。

フック船長役の人はお父さんの時はおさえ目ですが、フックの時はコミカルでとても色気のある方でした。ウェンディは娘だけどフックにドキドキしそう。フックは顔を近づけてしゃべったり凄むイメージがありますが、意外とこの人以外はやっていませんでした。未公開シーンでしたが、お父さんが子どもたちが家出した罰として犬小屋で過ごすというのを実際に撮影していたのに笑いました。ピーターがフックをやっつけて自分が海賊の船長に成り替わるというのも原作と同じでしたが、そのあとは原作とは違う結末でした。

リスさん主演の『ネバーランド』でも「二つ目を右に朝までまっすぐ」をやっぱり宇宙を飛ぶシーンとして描いていました。


■リスさん映画との関連
他の作品と比べてみるとリスさん主演の『ネバーランド』はかなりシリアスで大人向けでした。

前にも書きましたが、ディズニーアニメ『ピーター・パン2 ネヴァーランドの秘密』はリスさん映画『ナニー・マクフィ 空飛ぶ子豚』がすごく影響されている!ディズニー版のエンディングがアニメとは違う絵本のようなシンプルな可愛らしいイラストですが、『ナニー・マクフィ』も似たタッチのアニメーションですごくかわいい。これも戦争にお父さんが行って不在、都会の子どもが疎開してくる、という話でした。女の子が活躍するのも同じです。つば広帽みたいなヘルメットをかぶっていたのも、『ナニー・マクフィ』で末っ子のヴィンセントが同じような探検家のヘルメットをずっとかぶっていたのと似ているなと思いました。リスさん演じる愉快なフィルおじさんは子どもより子どもっぽい大人だなと同じ系譜に入れていましたが、フック船長か、なるほど。

『フック』の中で海賊の帽子の飾りは孔雀の羽と出てくるのですが、『パイレーツ・ロック』の中でリスさん演じるギャヴィンがかぶっていた帽子にもついています。グラムロックな感じかと思っていたのですが、そこは海賊イメージなのですね。
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伯爵とギャヴィンのチキンレースの様子もディズニー版の中にそれらしいことが出てきます。『パイレーツ・ロック』はファンタジーではないので心意気がどうであろうと見事にケガをします。その後の伯爵の栄光の日々のピークは過ぎ去り「船を降りる潮時問題」は、いつまでもロストボーイズではありえないことが、ピーター・パンとして読むことでより明確になります。『パイレーツ・ロック』は本編にはないのですが、ポスターでは船の縁から板の上を歩かせるビジュアルがあります。この映画もまた『ネヴァーランド』だったのだなと思いました。

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リスさん、純真という感じはないのに(ごめんなさい、悪魔の役とかやってるし)、意外にピーター・パン・イメージがあったのだなと思う。しかも『パイレーツ・ロック』『ナニー・マクフィ』あたりまで(この時40過ぎ)。別の言い方をすると、ええと、「お手本にならない」みたいな?だから楽しいのだと思います。

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ついでに、『ピーター・パン』の中の女の子像について
『ピーター・パンとウェンディ』では女の子が活躍する。弟は全く重要ではない。最後の方ではウェンディは結婚して自分の子どもたちにピーターの話を伝える。男の子が好きな女の子に母を仮託する話?女の子の方が成長が早いが夢を忘れない、のだろうか?まとまらないけど、少し今までとイメージが変わりました。


ついでにこれも。
『僕が星になる前に』 The third star
二つ目を右に朝までまっすぐ
でも三番目の星と間違えたロストボーイズのお話です。

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監督、脚本、キャスト、制作年の情報はIMDbより転載。
画像はIMdb,Amazonより


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今日のお題


『Human Nature』
『アルジャーノンに花束を』("Flowers for Algernon" by Daniel Keyes)
『ピーター・パンとウェンディ』("Peter and Wendy" by James Barrie)


BBC『SHERLOCK』ファンでおなじみのS先生の直線的成長と円環的楽園について読んで、映画『Human Nature』についてもっと書きたくなりました。直接的なネタバレには配慮していますが、漏れているのでご注意ください。そしてコメンタリーや研究書など公のものに基づいて書いているわけではないので、全くの個人の私見です。

写真に載せているリスさん出演の『ネバーランド』はリス・シネマラソンのもう少し後で書きたいと思います。日本ではピーター・パンは子どものミュージカルのイメージで、自分も特にピーター・パンに興味がなく、どちらかといえば否定的でさえありました。しかし、シャーロックホームズの作者コナン・ドイルとピーター・パンの作者ジェームズ・バリーとは友人だったので、いつかは取り上げようと思っていました。そのこともあってか、リスさん出演『ネバーランド』は1900年代初頭のロンドンから始まりますが、懐中時計のふたの裏側に描かれた女優といった小道具など、どこかホームズを思わせる(「ボヘミアの醜聞」)演出がされています(※ジョニー・デップ主演の『ネヴァーランド』とは別の作品です)。ピーター・パンは、いろいろなフィクションを読み解く上で重要で円環的楽園の代表作だといえるでしょう。さらにピーター・パンや直線的成長と円環的楽園のテーマががっつり盛り込まれているのが以前にも取り上げた『Human Nature』です。


子ども時代というのは親に見守られ、一種楽園の中に暮らしています。しかし成長して一人前になれば楽園は出て自立しなければなりません。後戻りできない時間の流れの中の直線的な成長です。これに対し、時間の止まった心地よい世界を繰り返す閉じられた物語も存在し、こちらを円環的楽園とします。

■『Human Nature』と『アルジャーノンに花束を』
最初に『Human Nature』を見たとき『アルジャーノンに花束を』の類型作品だと思いました。
『Human Nature』は、心理学者のネイサンと彼女の自然作家ライラが、自分を類人猿と思って育った30歳の人間の青年と森で出会い研究室に連れて帰ります。この3人にネイサンの助手で浮気相手のガブリエルを加えた4人の男女の物語です。森で見つかった類人猿くん(仮名)は、その昔お父さんが精神を病んで人間世界が嫌になり赤ん坊の息子を連れて森へ逃げたのでした。ネイサンにより類人猿くん(仮名)は文明社会の30歳の青年として人間社会の中にいきなり放り込まれます。類人猿くん(仮名)は、それまで言葉を持たず自分が何者かなんて考えたこともなかったのです。気がついたらいきなり大人という困惑は『アルジャーノンに花束を』のパロディのようです。アルジャーノンは主人公が飼っていた実験用のマウスの名前ですが、心理学者のネイサンは最初実験用の白いマウスにテーブルマナーを教える研究をしていたこと、『アルジャーノン』に出てくるような睡眠学習テープを類人猿くん(仮名)に聞かせていたことは、『アルジャーノン』のパロディというサインに感じました。監督のゴンドリーさんは他の作品でもこういうヘンテコな装置を出すのが大好きです。

『アルジャーノンに花束を』は、思い入れが強いので映像化作品は見たことがありません。
出産時の酸素不足が元で知能障がいのあるチャーリィが、実験的な手術を受けて超天才に変身します。チャーリィはものすごく若いわけでもなく30歳くらいだと思います。それまでは、叔父さんの紹介でパン屋の掃除夫として働いていました。店主も行き場のない子の面倒をずっと見ようと思って働かせていました。手術を受けてからは賢くなるかわりに嫌みなやつになり、同僚も友人も離れていき、手術をした大学教授よりも賢くなって厄介者扱いです。チャーリィは、それまで通っていた障がい者の学校の先生、アリスのことを慕っていました。チャーリィはいきなり大人の体の中に放り込まれた自分に気がつき、それまでとは違う感情を持ちます。学生時代には、唯一無二の女性アリスとの恋だと読んでいましたが、もう一人女性が出てきました。全くタイプの違う女性を置かれて、今ならなるほどねと思えます。思っていた以上に女性とのことにウェイトが置かれていました。チャーリィは母親からトラブルにならないよう女性のことを考えるのは悪いことだと厳しく躾けられていました。同じ手術を先に受けたマウスのアルジャーノンの知能が落ち始めていることにチャーリィは気がつき自分の運命も予知します。物語はチャーリィの一人称の経過報告という形で日記のように書かれ、春先にはじまって冬に終わり、人間の一生というふうにも読め、聖書のエデンの園から追放されたことがベースにあります。

『Human Nature』類人猿くん(仮名)もチャーリィと同様にいきなり大人として人間社会へ放り込まれる。3か月の学習で言葉を覚え大学卒業と同じくらいの知識と教養を得、学者のネイサンとも議論ができるほどに成長します。一方ネイサンは養子で厳格な養母に育てられ、女性とつきあったことがなかったのに急にモテキの来た35歳で、こちらもチャーリィ要素を含んでいます。余談ながら、リスさん出演作『MR.NOBODY』のジャコ・ヴァン・ドルマル監督の『八日目』はアルジャーノンと『Human Nature』ミックス実写版と感じました。ちょっと後味が悪いのでアルジャーノンは小説の方が良さそうです。

■『Human Nature』と『Peter Pan』
類人猿くん(仮名)は教養を身につけ、ピーター・パンの衣装で「I’ve gotta crow」とミュージカルの歌を歌うシーンがあります。ほんの数秒しかないシーンをわざわざ入れ込んでいることが、最初見たとき不思議でした。リスさん主演の『ネバーランド』で、40代のリスさんはジミー・フックを演じています。ピーター・パンにそもそも興味がなかったので、この作品も見ないでおこうかと思ったほどでしたが、ピーター・パンを演じた人がフックを演じていることに気がつき、ピーターが育って子どもの無垢を失ったのがフックという解釈のようで、おもしろくなって原作『ピーター・パンとウェンディ』を読んでみました。

ピーター・パンは大人になるのが嫌で生後数日でお母さんの乳母車から逃げ出した少年でパンはギリシャ神話の中の牧神のこと。ネバーランドに他のロスト・ボーイズ(迷子たち)と住んでいます。ダーリング家のウェンディと弟二人をネヴァーランドに連れて行き冒険をします。『Human Nature』の中で類人猿くん(仮名)は子どものピーター・パンで、ネイサンはピーターの敵役、海賊のフック船長のようです。ネイサンがフックなのは、マナーに厳しい変人だから。『ピーター・パンとウェンディ』のフックはイートン校出身でいつも礼儀正しくできているかを気にしています。ネイサンは、「この研究所にいる間は、僕が君のパパでガブリエル(助手)がママだよ」と類人猿くん(仮名)と擬似親子になり名前も与えますがネタバレしたくないので類人猿くん(仮名)としておきます。『ピーター・パンとウェンディ』の中でもピーターがお父さんになりウェンディがお母さんとして他の子どもたちとネバーランドで暮らしているところを踏まえているようです。類人猿くん(仮名)は文明社会のルールや教養を身につけ、大人になります。また、ネイサンに新しい養子の弟(たぶん5、6歳くらい)が知らないうちにできているのも、ピーター・パンが家に帰ってみたら窓の鍵がかけられていて中に入れず、家の中には別の子がいた(弟か妹?)というエピソードに基づいているようです。さらに人間界に戻ったウェンディは、楽園から牢獄へ行ったライラ、ピーターが好きなティンカー・ベルはガブリエルのようです。

■母と子、父と子、フランケンシュタイン
類人猿くん(仮名)は母親が3人います。
まずネイサンの助手のガブリエル。類人猿くん(仮名)より年下??って思っていたのですが、『ピーター・パン』のウェンディが子どもたちの母になることを踏まえているのだとわかりました。二人目のネイサンの同棲中の彼女のライラは、母であり師である。三人目はTVを見て訪ねてきてくれた実母。類人猿くん(仮名)もネイサンも、母と決別します。
「母を捨てる」というエピソードは、ミシェル・ゴンドリー監督の作品には繰り返し出てきて、わかるようなわからないような、踏み越えていかないと真の自立はないということでしょうか。
さらに類人猿くん(仮名)にはエディプス的「父殺し」エピソードもでてきます。『アルジャーノンに花束を』は、チャーリィに手術をしたニーマー教授(父)を超えてしまったチャーリィ(子)の物語で、『フランケンシュタイン』をもとにしていると昔読んだことを思い出しました。創造主と創造物、父と子、子を受け入れられない父。類人猿くん(仮名)の擬似父親・学者のネイサンは35歳にして初めて彼女ができたという設定で、ピューリタン的な養母に認められてくて規律やマナーにうるさい堅苦しい人ですが、類人猿くん(仮名)は子どもっぽさと率直さを持ち女性にモテる人として描かれています。小さい子や犬を見ているような気持ちにさせます。
文明が父(ネイサン)で自然が母(ライラ)となっています。


■直線的成長と楽園喪失
『アルジャーノンに花束を』は創世記の失楽園になぞらえた、楽園を出て再び楽園に戻る話(※)ですが、『Human Nature』では、類人猿くん(仮名)は森に戻っても、彼にとってかつての楽園ではなくなっています。自然回帰っていっても、いきなり無理でしょう、という皮肉が効いています。『Human Nature』は成長による後戻りできない直線として描かれています。ミシェル・ゴンドリー監督は『Human Nature』より後の作品で『僕らのミライへ逆回転(Be kind rewind)』という直線的進行が少しだけ巻き戻る、完全な円環にはならないという映画を作っています。
※『アルジャーノン』は人の一生を短期間に経験した話と解釈しているので「直線」だと思っています。(2017.3.20追記)

『Human Nature』は2001年と少し前の映画だからか、フランス人の監督のせいか、物語のプロトタイプがきっちり入っています。久しぶりに『おそ松さん』のことも考え、以前は『トレインスポッティング』とかクエンティン・タランティーノの世界が入っていると思ったのですが、『Human Nature』も影響しているかもしれません。リスさんの出演作品同士が影響しあっているのもおもしろいし、若い時のリスさんの中に意外にもピーター・パンを見ていたこともおもしろい。日本での子ども向けの毒のない無垢なピーターとリスさんのやんちゃなお兄ちゃんという感じが結びつかないけど、そういう若者こそがピーター・パンなのだろう。そして『トレインスポッティング』もモッズの名作『さらば青春の光』もネバーランドで遊んでいる若者たちと読むことができます。
映画・出版界でのキャリアのあるアメリカ人デイヴィッド・ゴードンの『二流小説家』という小説の中でコスモポリタンのアメリカはもはや神話的な物語の原型を使うのはやめたのだと書かれていますが、現代の『SHERLOCK』もイギリスの作品だからか、最初のエピソードにリンゴが登場したりと、その中にいろいろなモチーフを読み解くことができます。

19世紀末から20世紀初頭にかけて描かれたピーター・パンとアリスは永遠の少年と永遠の少女、ディズニーの定番で、今でもたくさんの映画が作られていて、リス・エヴァンスはどちらの映画(『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』ザニック・ハイトップ役)にも出ています。『アルジャーノンに花束を』のチャーリィの恋するヒロインがアリスと名づけられているからには初めから結ばれない運命だったのだなと今になって気がつくのでした。

※『ピーター・パンとウェンディ』の結末で、ピーターはネバーランドに残ることを選び(円環)ウェンディは家に戻り成長、結婚、出産をする(直線)。作品全体を見たとき、『ピーター・パン』はピーターが主人公で“ネバーランド”という異世界こそが舞台と考えたときは「円環」だが同時にウェンディの「直線」の結末もある。(2017.3.20追記)

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image from Amazon

リス・シネマラソン Karaoke! Karaoke!

『ギャング・オブ・UK』(原題 You're dead. 1999年)

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今年1月に亡くなったジョン・ハートさん特集で手持ちの『ギャング・オブ・UK』と『裏切りのサーカス』を見ました。『裏切りのサーカス』、何回見てもかっこいいしおもしろいです。



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『ギャング・オブ・UK』、今回初めて見ましたがおもしろかったです。IMDbでリス・エヴァンス出演作を探していて、ジャケットから音楽もの?パンク系?と想像し見たいと思っていたのですが、『ギャング・オブ・UK』というタイトルで日本版が出ていたようです。なんだかディカプリオな邦題。取り寄せてみると、新品ながらデッドストックのようでした。レビューでは、銀行強盗の話でリスさんが色々な衣装を着るらしいとの事で、詐欺師の話で好きなBBCドラマ『華麗なるペテン師たち』のようなのを想像していました。
ネタバレなしです。


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image from IMDb



今回、リスさんの役柄は泥棒のアホボンです。
リスさん演じるエディの父親ハリーはその昔カジノから6万ポンドだか16万ポンドだか(はっきりしていないのもこの映画のミソ)を盗んだ泥棒で、その時の相棒メイトランド(ジョン・ハート)は犠牲になって捕まりそれから20年ずっと獄中にいる。エディの父はもう亡くなっており、父の残した屋敷でボンボン生活しつつ泥棒稼業で父を超える日を夢見ている。ある時舞い込んだ銀行強盗の話にエディは乗り気になり相棒のイアンと、伝説の金庫破りのメイトランドを脱獄させ仲間にします。銀行の閉店ギリギリに強盗に入ったのですが、エディがアホなので間抜けなハメに陥り銀行に立てこもることになります。その場にたまたま居合わせた若い女性刑事が事件を語り再現するという趣向です。趣向です。ここはヒントです。

監督が『アサシン』のアンディ・ハーストさんで、これを撮っている時は20代後半、バカバカしい話をゆるくおもしろく、しかしスタイリッシュに作っています。ジョン・ハートさん演じるメイトランドは「上から下までビシッと盛装で決めて強盗に入る、拳銃に弾は入れない、それが仲間になる条件だ」と言っているように、ピンストライプのスリーピースに帽子でとてもダンディです。さらにクラシカルな銀行の建物が加わり、かっこいい映画だぜ、変な絵を描いたら許さんという気迫なので、とりあえずがんばって描いてみましたが自分の画力の限界でまあこんなものです。

実のところジョン・ハートさんが主人公で、回想シーンでは70年代の若かった自分(30代かな)も長髪のウィッグと昔風のスーツで演じられていて、意外な感じでおもしろかったです。ストーリーは、立てこもった密閉空間、限られた人数で話が進みます。強盗犯が逃げ込んだ倉庫の中で話が進んでいくタランティーノの『レザボア・ドッグス』にリスさん主演の『Twin Town』のカラオケとか間抜けでバカバカしい感じを加えたコメディです。クライム・サスペンス的な部分や銃撃戦もありますが、シリアスじゃないので気楽に面白がれます。また、リスさんのダンスや体を張った演技(またやってますよ、この人)も見られます。予想とは全然違って『華麗なるペテン師たち』のようではありませんでした。リスさんは『ノッティングヒルの恋人』(1999年)の頃と近いですが、くしゃくしゃのスパイク君とは違って、えらくシュッとしていてました。

このころのイギリスの肩透かし的おもしろさのある映画ですが、本当にシリアスな男の世界みたいなのを見たい人には受けないだろうなと思います。イギリス俳優が好きとか、リスさんが好きとか、イギリス映画の笑いが好きとかじゃないと無理だな、デッドストックになるなと思いましいたが、好きになったので見てよかった映画です。今思えば、コンピューター制御の金庫を20年もブランクのあるメイトランドをわざわざ引っ張り出して結局ダイナマイトという、10数年前だからなんとかギリギリ成立する話のような気がしますが、こういうのんびりした感じも魅力です。銀行の隣から地面に穴をほって、なんていう話でも子どもの頃はワクワクできたものです。近い感じではルパン三世かもしれない。


この映画を見て『ロンドン・ドッグス(LOVE, HONOUR & OBEY)』をまた見ました。
最初に見たのは去年の夏で、ジョニー・リー・ミラーを見るためだったのですが、『エレメンタリー』のマイクロフト(リス・エヴァンス)を発見し、そこからリスさんにはまっていったのですが、この頃はリスさんのおもしろさがちっともわかっていませんでした。


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image from IMDb


改めて『ロンドン・ドッグス』、おもしろかった。ロンドン1のギャング(北地区)のファミリーに入ったジョニーが巻き起こす南地区との抗争を描いたものですが、「左手にマイク、右手に銃」というコピーの通りになぜかカラオケ好きなギャングたち。前半は夫婦の問題で下ネタが多いのと犬の刑がイヤだったのですが、ジョニーが南地区のマシュー(リスさん)にケンカを仕掛けてからの二人のメンチ切り合いとかエスカレートしていく様がすごくおもしろい。リスさんは、ジョニーよりも年上、奥さんと子どものいるギャングで、子どものゲームを見て興奮してウェールズ語でまくしたてて奥さんに「この子にウェールズ語はやめて」と言われたり。全然記憶になかったけど、その後リスさんはジョニーに銃で脅されて、家族の前で悲劇がおそいます(とってもビビったんです)。こんなこともしていたとは‥‥。その後火炎瓶で復讐するクレイジーなマシューもみどころです。

ジョニーのボスは40代か50前くらいで若い女優との結婚を控え田舎に引退したいと思っている。ギャングの稼業は順調、古くからの仲間たちも家族と落ち着いた暮らしをしたい。そこにボスの甥のジュードの幼馴染のジョニーがギャングに憧れてファミリーに加わるのですが、礼儀や仁義を知らず無視して突っ走って問題を起こす。ついには南地区と銃撃戦になりますが、その時はボスも一瞬若い頃の熱い気持ちを思い出してワクワクします。この一瞬の表情が、ボスが引退したい理由は、ギャング稼業にもうワクワクしなくなったからだと語っているようです。この作品も世代がテーマになっていて、ボスたち世代、ジョニーとジュードの若い世代、その間のリスさん。リスさんとこは姉さん女房かな、30前後の若いお父さんでジョニーたちよりは落ち着いて見えるけど、ふとした時に短気な子どもっぽさがのぞくのがおもしろい。そして、ボスとジュードの非情な駆け引き、ボスは無言でジュードに後始末についてしゃべらせます。そういえば、リスさんも歌を歌っていると思っていましたが、勘違いで、歌っていませんでした。

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以前に描いたイラスト。初リスさんですがもっとかっこよく描かないとダメだ。


『Twin Town』、『ギャング・オブ・UK』、『ロンドン・ドッグス』はリスさん映画カラオケ三部作と名づけたい。なんでだろう、カラオケが流行っていたのかな?『ロンドン・ドッグス』ではモニターが写っていますが、歌詞しか出てこないのだ。日本はもっと早くから映像つきだったのに。

こういう感じの映画に慣れてくると、もうひとつかなと思っていた『ケミカル51』も疾走感があっておもしろかったです。

映画『ホームレス ニューヨークと寝た男 -Homme less-』


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劇場公開中でしたので見てきました。
マーク・レイさんのほぼ日でのインタビューもとても興味深くぜひ見てみようと思いました。
マークさんはファッション・モデル、ファッション・カメラマン、俳優をしている52歳(当時)、ニューヨークのとあるビルの屋上に6年ほど滞在しています。そんな彼の3年間のドキュメンタリーです。
撮影しているのは彼の長年の友人で同じモデル仲間、この人の初めての作品でもあるそうです。

感想は、映っていない過酷さ(想像)と映っている風景のかっこよさに驚きました。ニューヨークがかっこいいから、まるで『ELEMENTARY』のような古いビルの立ち並ぶ街や美しい夜景、自由でファッショナブルな人々、撮っている方のセンスもすごくいいのだと思います。ずっと流れるジャズとマークさんの声の良さと分かりやすい英語に引き込まれていました。

マークさんのことはほぼ日のインタビューに詳しく、映画より詳しい説明もありますので、簡単に。ニュージャージー州出身のマークさんは若い頃バックパックでヨーロッパを旅行中、仲良くなった家族がモデル事務所に紹介してくれたことから、ファッションショーのモデルに。その後写真も撮るようになります。ニューヨークのチェルシーで暮らしていた時期もあり、その頃は工場街だったので家賃が300ドル、その後再開発で立ちのくことに。ヨーロッパでは期待していたような仕事がもらえずほんどお金の無い状態でニューヨークへ戻りそこから家の無い暮らしが始まります。不法滞在で見つかれば捕まります。この映画を公開したためにそのビルには住めなくなったと書いてあったような気がします。

この映画を見て、どんなことが印象に残るでしょうか?
なんの責任も持たない?チャラチャラしている?

私は、街中できれいな女性に写真を撮らせてもらって、有望な人にはモデル事務所への売り込みを率先して手伝ってあげていたことが印象的でした。その場で雑誌にメールとか。それはご自分がヨーロッパでモデルになる後押しをしてくれた方がいたからかなと思いました。

またクリスマスにサンタになるのですが、これもほぼ日で家の無い人のためのチャリティーイベントだと語られていて、映画ではそこまでの説明があったかどうか忘れましたが、ハグした子どもが離れたがらなくなるという場面もありました。インタビューでは、自分こそホームレスなのにねって言われていましたが、人から求められるのが嬉しいとドキュメンタリーでは言われていたし、この人は子どもから逆に愛をもらっているんだなと感じました。

夜遅くまでかかって撮影した写真を雑誌社に翌朝までに送らなければいけない時、パソコンでの作業は深夜営業の飲食店でされています。250枚写して使えるのは25枚ほど、それを補正して翌朝までにメールする。容量の重いものを作業したり送ったり、時間のない時に限ってトラブルが起こりがちで、そういう神経を使うことを、電気が安定して使える環境がないなんて・・・店が閉店時間だからと途中で別の店に移ったりしていました。

クリスマスで実家に帰るところも、やっぱり少し悲しい。親孝行したいんだけど、というところにも共感します。世界一の消費社会と消費できない人の話。エキストラのところとか、ね。日本では愛情も薄味でOKですが、アメリカでは寂しさがしみるだろうなとか。タイトルがファッションに引っ掛けてか、Homme lessになっている。homeじゃない。それは人間性のlessということなのでしょうか。密着して撮している人を含めてのドキュメンタリーを見たくなりました。

ここからリスさんの話をするのもなんですが、イギリス人俳優のリス・エヴァンスは少し前からホームレスのシェルターのアンバサダーをされています。写真を見ていて、ホームレスの役をやっていたらしいことに気がついたので(なんていうのかまだ調べていません)、それでアンバサダーを引き受けたんだろうなと。また、エキストラの仕事でマークさんが撮影所に入るまでの姿を見ると、リスさんがコメンタリーや映像特典で、お母さん役だったエキストラの女性は1シーンのため1日ずっと待っていたというエピソードを話したり(『Human Nature』)、リスさんのカメラテスト役の人(似たような身長の人)を紹介していたこと(『Mr. NOBODY』)が思い出されました。伝えたいからそうされているんだろうなと思いました。

リス・シネマラソン リス・エヴァンス映画原作本を読む

週末は風邪気味が続きやる気が出ないので久々に読書です。一応ネタバレには配慮しています。

映画『Jの悲劇』原作
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『愛の続き』イアン・マキューアン 新潮文庫(品切れ)
(Enduring Love 1997年 Ian McEwan)

タイトルだけ見れば、恋愛小説を読んでいると思うでしょう。
映画の脚本化も原作者のイアン・マキューアン。
ひとりぼっちのパリー君、原作の90年代、映画の2000年代、そして現在2010年代、ありようが少しずつ違う。原作の90年代のパリー君は、遺産をもらって働かなくていいから一人で家にこもっていられる。スーツを着ておしゃれをする気持ちが働く。映画の2000年代のパリー君は多分無職で汚いアパートに一人で住みネットでのつきあいに深く傷ついたのかパソコンが隅っこに押し込まれている。妄執で見た目を構うこともなく。両方とも神様だけを頼りに生きている。映画のパリー君の方が逼迫感があり、よりリアリティと説得力を感じます。無邪気にスイカを選ぶところ(しかも甘そうな炭酸飲料、チョコバー、チップスと栄養全く無視、おやつだからいいのか?たんぱく質とミネラルの不足は精神を不安定にするに違いないというかなりの独断)、臭ってきそうな風貌、そんな感じを漂わせるなんてすごー。ジョーとクレアは映画の中では、大学教授と新進の彫刻家という映画的なカップルです。原作は、科学ジャーナリストと文学部の教授で、やっぱりどこか他人事です。2010年代から見ると、映画は2004年の公開ですが、そんなことでいいのか警察、英国だから違うのか警察、と警察の対応に突っ込みたくなりました。映画の最後パリー君はお手紙を書いていたのですが、現在2010年代の自分はすっかり手紙を思いつかなくなっていました。日記か何かのような。日常ではめっきり書かないけれど、こういう時は手紙だと思うことはまだあるのに。

原作の90年代は非合法のピストルを買いに行くシーンがあり、70・80年代を引きずった売人が出てきて、そういう時代なのだなと思います。70・80年代は商売がうまくいっていたが90年代には時代の変化で下降線。

同じ作者の『アムステルダム』は、The WHOの「My generation」が出てきて、70位の作者は映画『パイレーツ・ロック』の時代(1966年)ど真ん中の人だなと思う。『アムステルダム』は『愛の続き』がおもしろかったのと、小説『トレインスポッティング』の最後がアムステルダムへ逃亡なので、なぜアムステルダムなのかに興味が湧きました。

解説には「不完全な善人が堕落していく物語」とありますが、ミドルエイジ・クライシスです。ある大臣の愛人の女性が亡くなり、元恋人二人(元カレ同士友達になった)が彼女の夫に絡め取られていく話です。そこに陥るのも二人が貪欲だからではなく、中年になって仕事では地位を確立しているもののパワーダウンしてきて、なんとかキープしたい、もう一花どころかもう目の前で枯渇してなんとかしたいという焦燥感からです。解説には「途中から予測可能な逃れられない結末」とも書かれていますが、「相手の出方」も「うまくいかない結果」も容易に予想でき登場人物はあまりにも無防備に見えます。夫の嫉妬と狂気ももう少し読みたかったけど、ストイックなまでに出てきません。堕ちていく元カレの一人は新聞記者で、はっきり書かれていませんがタイムズあたりと予想されていて、一刻を争うような時にも校正の人たちが文法チェクに厳しいとか、そんなことにも時代を感じます。

タイトルのアムステルダムは、オランダが安楽死を認めている国という著者のブラックジョークから。
『アムステルダム』でブッカー賞を受賞しているそうですが、『愛の続き』の方が好きです。


映画『もうひとりのシェイクスピア』原作
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『シェイクスピア・ミステリー』ジョーゼフ・ソブラン 小田島恒士、小田島則子訳 朝日新聞社 2000年(ALIAS SHAKESPEARE Joseph Sobran 1997)

図書館で、きっとシェイクスピア別人説についての本だろうと思いアール・オブ・オックスフォードでなくてもいいやと中も確かめず借りましたが、読んでみると『もうひとりのシェイクスピア』の原作本でした。1997年出版、翻訳は2000年と結構前の本です。映画『恋に落ちたシェイクスピア』がヒットしたので日本語版が出たのかも知れません。もともとエメリッヒ監督はその頃に『もうひとりのシェイクスピア』を作りたかったけど『恋に落ちたシェイクスピア』が作られたので企画を10年ほど寝かせていたそうです。

著者はアメリカ人で、イントロに映画の秘密部分が書かれていました。それも、とある田舎のお金持ちの老婦人がそういう内容で本を書いて欲しいと著者に話したそうで、その点に関しては証拠や裏付けがないので憶測でそういう話があるよということでした。

真のシェイクスピアではないかといわれている候補者、第17代オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアの生涯やオックスフォード伯説の論拠などが書かれています。従来のシェイクスピアがシェイクスピア本人だという人たちはストラトフォード派と呼ばれています。イングランドで1、2番目に古い家柄でとても裕福なオックスフォード伯爵家、本当のエドワード君はどんな人だったのでしょう。映画では大陸旅行をしていたことは話の上だけ出てきますが、とても浪費家で旅行の経費を払うために土地を何か所か売ったそうで、それから後も浪費は続きます。映画ではリスさん(リス・エヴァンス)が演じている晩年になってロバート・セシル(エドワードの妻の弟、女王の側近)に破産寸前じゃないかと怒られます。

エドワードは早くに親を亡くしエリザベス女王の側近ウィリアム・セシル(ロバート・セシルの父)が後見人となり自邸で養育するのですが、この本によると同じような貴族の子弟を何人か預かっていたそうです。だから私が想像するようなエドワード VSロバートのような嫉妬やライバル心はそれほどストレートなものではなかったかもしれません。そして男前で伊達男のエドワードさんは40歳くらいまで愛人を作ったり、エリザベス女王の女官との間に子どもができて女王を怒らせてロンドン塔に投獄されたりいろいろ華やかな感じだったらしいです。「女官問題でロンドン塔へ投獄」はwikiによるとエドワードさんの友人のサウサンプトン伯もです、この人は秘密に結婚したそうで、『エリザベス:ゴールデンエイジ』のサー・ウォルター・ローリーも秘密結婚していました。映画の印象ではエドワードはもっと早い段階でがっくりきて、干物みたいになっていたのかと思いました。リスさんのエドワードはかっこいいし色気があるのにやせているせいか周囲に興味がないせいかなんだか干物みたい。

ウィリアム・セシルの娘がエドワードの妻ですが、彼女の子どもはエドワードの子じゃないと噂を立てられたり、エドワードと義父ウィリアムとは仲が悪かったり。そして息子ほど年の違うサウサンプトン伯とはそういう仲でソネット集は実は彼に宛てたものだとか、さらに娘婿にしようとしていたとか・・・今の感覚ではよくわかりません。ガーディアンの映画レビューで「17世紀の政治は難しいから」みたいなことが書いてありましたが、きっと婉曲表現に違いない(これも決めつけ)。だからエドワード君はメイクが濃かったのかとか、リスさんは読んでどう思ったんだろうとか(笑)。

そういうセンセーショナルなこと以外にも真面目にオックスフォード伯の残した書簡類から彼の使った語彙とシェイクスピアの作中の語彙を比較してもいます。訳者はシェイクスピアで有名な小田島雄志さんの息子さん夫妻で、エドワードがシェイクスピアかもしれないしそうではないかもしれないけど、エドワードという人物にとても興味がわくような内容ですと書かれています。

映画は、余計なことはバッサリカットして、エドワードが途中から足が悪くなったことや、エドワードが亡くなった1604年以降にも戯曲が発表されている1604年問題などをうまく使っています。

リス・シネマラソン 『SNOWDEN』雑感



マジメにミスター・オブライエンを描いてみましたが
あまり似ないのでこっちの感じで。
ダジャレを思いつくと、ついやってしまいます(^^;)


(ネタバレには配慮しています)

『MR. NOBODY』では自分の中のできごと、外に働きかけず悩んでいるタイプの映画群について書いていました。『SNOWDEN』は世の中に広く知らそうという、外に働きかけた映画です。この人がどうかということはよくわかりませんが、現代ってこんな時代ということを知る上ではとてもおもしろい映画でした。
いちおう感想なども書いています。
<関連記事:リス・シネマラソン 犬が好きなイギリス人『SNOWDEN』>

◾︎見えないできごと
映画『SNOWDEN』の中でCIAエージェントがやっていたのは現代版ホームズたちや映画のハッカーがやっているのと基本的には変わりません。もっと巨大なデータ解析能力のあるコンピューターやソフトをどんどん開発できあらゆる情報を検索できる的な。自分が電話をかけられる相手(つまり自分の電話帳に載っている人)がAだとします。Aさんの電話帳に載っている人たちをB、Bの電話帳に載っている人たちをCとするとCは250万人存在することになるそうです。でも検索可能だそうで、どんどん新しい情報に更新できるそうです。民間の企業がやっていることを見ても、スマホの中でもなんか起こっているらしいぞ、とかね、さもありなん、とかね。ネットとSNSによるグローバリゼーション化に反対運動が起きていたり。

◾︎見えない戦い
先日やっと見たいと思っていた『マネーショート』、『スポットライト』を見ました。『マネーショート』はサブプライムローン、リーマンショックのときのことを扱ったもので、アメリカで住宅バブルが起きていた時返済能力のない人に貸しまくった住宅ローンをサブプライムローンとしていろんなヤバイ商品と組み合わせた複雑な証券にして格付けをごまかして売っていたのですが、そのごまかしのカラクリに気がついた4人の人物が一生に一度のチャンスと賭けをします。『スポットライト』はボストンの新聞記者たちが聖職者の虐待の組織ぐるみの隠蔽を暴いたものです。ボストンという土地柄の特殊性は『ブラック・スキャンダル』にも描かれています。警察や公権力やいろいろな組織が複雑に癒着している社会。いずれも現実の事件を基にしたものです。こういう社会派ドラマを見ると、自分の中でぐるぐるしているなんてどうでもいいじゃないかという気になります。しかし、映画ならお決まりのこう盛り上げるだろうというような目に見える戦いがありません。ただジリジリしています。『SNOWDEN』で扱っている現実世界の戦争は、実弾での戦いがある一方で目に見えないサイバー世界での戦いと両方が描かれ目に見えない敵に目に見えない攻撃を仕掛けられています。偶然そういう映画ばかり見たのかそれが今の時代の傾向なのかはわかりません。現実をほかの人と「共有」しているのか「自分の中」だけのできごとなのか、やっぱりぐるぐるしてきます。

Intermission リスさんの広場/Super furry


gavin_blue.png
Rhys Ifans as Gavin Kavanagh



前に書いたリスさん、色違いです。

リス・フェスに必要なものってなんでしょう。
好奇心と時間と体力(睡眠時間けずりますから)、あ、仕事と同じだ。
ひとつ仕事と違うものがあります。
それは、英語
日本版の出ていないものもあるし、インタビュー動画もわかりたいし・・・

今年は英語を頑張ろうと目標を立てて、英語に強い方にいい方法はないですかとお伺いを立てたところ、とても丁寧なアドバイスをたくさんいただきました。お話ししているうちに、見慣れた単語に要注意と出てきました。言葉には色々な意味があるし、名詞だったり動詞だったりで意味が変わってきますし、はたまた別の言葉とくっついて独自の意味になったりするのでフレーズも大事ということでした。

で、「見慣れた言葉に要注意」な出来事です。
またリスさんネタで申し訳ないですが、リス・エヴァンスは俳優で売れる前にたぶんウェールズを中心に活動していたメジャーデビュー前のバンド「スーパー・ファリー・アニマルズ」でヴォーカルをしていたそうです。彼らの曲はリスさん兄弟が主演した『Twin Town』にも使われていました。そのことはリスさん映画を見始めた頃から知っていたのですが、なんか動物っていう名前くらいの気持ちで特に意味を考えなかったのです。この前アルバムの画像を見て、ファリーってfur(フェイクファーとかのファー、毛皮)だと気がつきました。着ぐるみ着ているバンドだったということもどこかで読んでいたし、『ロンドン・ドッグス』の中でもギャングなのにカラオケが好きで、しぶしぶ着ぐるみを着て歌っている(※確認すると歌っていませんでした)シーンがありました。ファーリーって書いてくれたらもう少し早く気がついたかもと思うのですが、目が勝手にファリーに変換していたかもしれないし、自分がうかつなだけです。

ひとつ分かると芋づる式に謎が解けました。
キョーレツすぎる『Human Nature』、ずっと、どこを猿っぽいと思って「類人猿と信じている青年の役」をオファーしたんだろうって不思議でした。でも、猿の演技も素晴らしかったです。そしてヒロインが「異常に毛深い」っていう役でした。英語だとsuper furryって書いてあったのかな?ほかにも『パイレーツ・ロック』未公開シーンで、甲板でカール君と話している時笑っちゃうような白いファーのコートに埋もれていて、『ロンドン・ドッグス』からかなと以前書きましたが、きっとそれもファーリーつながりでしょう。『HERAT』とか『ハンニバル・ライジング』とか胸毛ネタもあり腑に落ちなかったのがスッキリしました。

furryは音的にも引っかかりませんでした。ひっかかりのない言葉にも要注意です。

英語の勉強についての貴重なアドバイスがこんなネタの回で申し訳ありません(m- -m)。
なんとなく流して読むのはやめて、少しずつ辞書を引くようにしたいと思います。


『パイレーツ・ロック』未公開シーン

リス・シネマラソン MR. NOBODY(2) シンギュラリティ(特異点)と死のない世界


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The singularity and the immortal world

『MR. NOBODY』の続きです。
〈関連記事:リス・シネマラソン MR. NOBODY(1) Nobody but Rhys Ifans

前々回は見たばかりのリスさん劇場公開最新作『SNOWDEN』について書きました。この映画は最新(2013年当時の、と括弧書きすべきかも)のコンピューターテクノロジーと人間の倫理観と国家の罪を扱ったものでした。『MR. NOBODY』の2回目はテクノロジーの進化について書いていきたいと思います。直接的なネタバレはしませんが話があちこち飛びます。

■シンギュラリティ
もう2月も半ばになってしまいましたが、毎年、年の初めには新年の予測をしたTV番組や本が出るものですが、今年は「シンギュラリティ」「AI」「不老不死」が気になりました。「シンギュラリティ」とは「特異点」の意味で、今言われているのは2045年にAIが人間の知能を追い抜くとされている特異点です。「シンギュラリティ(特異点)」はその時だけを指す言葉ではなく、宇宙でビッグバンが起きた時も「シンギュラリティ(特異点)」と呼ばれています。

『MR. NOBODY』は1975年生まれの主人公ニモ・ノーバディが「もし人生のある時点で違う選択をしていたら」といろいろな選択肢をたどる物語です。ニモが目覚めたのは約70年後の未来、2092年の世界、そこでは不老不死が実現しています。電気仕掛けではない本物の子豚ちゃんをペットにしています。その時代に生きる人たちと違い、ニモは細胞の永久再生の処置をされていない最後の死ぬ人間です。

『MR. NOBODY』はSFファンタジーに分類されますが、大部分は人生の平凡な出来事を綴った人間ドラマとラブストーリーです(だからと言って退屈な映画ではないと思います)。近未来の本やドキュメンタリーを見るとそういう科学やテクノロジーも下敷きにしていることがよくわかります。公開は2009年、その時点で1975年生まれのニモは34歳で2017年の現代とほぼ変わりのない世界に生きています。制作していたのは今から10年近く前のことだとするとなんだかすごいなと思います。当時この映画があったことを知らなかったのですが、きっとその時に見てもそこまでわからなかっただろうテクノロジー面のことが今だからもっとリアルに分かる気がします。ジャコ監督は、フランス映画の何気ない人間ドラマが得意な方だという印象なので結構意外でした。同じテーマをSFを使って語り直したともいえるのですが。


映画の中では、宇宙はビッグバンから時間が始まり、時間が経つほど宇宙は膨張し物事は秩序を乱していく(エントロピーの法則)が、ある時点で時間が止まる「ビッグクランチ」が起こると説明されています。赤い花瓶を割るシーンがところどころに挟まれるのですが、バッチさん主演の『ホーキング』でビッグバンの始まりは洋梨のような形のグラフで表せると叫んでいたことを思い出し、花瓶はビッグバンを現しているようだと気がつきました。また花瓶のシーンも1991年公開の『トト・ザ・ヒーロー』の中にも既に使われていました。

MrNbody_bigbang.png
映画ではちょうど花瓶のラインのような
左から右に曲線が開く形のグラフだったと思います


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■死のない世界
ニモが選択をするたびにパラレルワールドが生まれます。私は起こる内容がどんな人生にでもあるだろうありふれたことの積み重ねでシミュレーションと思っているので、パラレルワールドと思って見ていませんでした。物理学者の間ではパラレルワールドは実在すると考えられ、さらに死によって自分の好きな世界の好きな時点に行くことができるという考えもあるとどこかで読んだ気がしますが出典不明。このアイディアは映画にも出てきます。

ニモの死で、死のない世界が完成しビッグクランチが始まる、とも言えそうです。特に近代、現代の人間の歴史は死を遠ざけることに費やされているのかもしれません。エロスもタナトスもない世界。それは終末なのか宇宙の意思なのか。

そしてさらに別の考え方も湧きます。ニモは幼いとき「自分が目を閉じたら世界はなくなっているのか」とも思います。ひとりひとりの時間の流れがくっついたカニカマ式世界だとしたらその中のニモ一筋分の世界が消えた(人生が終わった)のかもしれません。

■蝶
映画のなかでは「バタフライフェクト」という理論が使われています。蝶の羽の動きほどのかすかな震動が地球の裏側で嵐を引き起こすというものです。因果関係があるのかないのか難しいところですが、そういう理論があるそうです。映画のなかでは、いろいろなバタフライエフェクトが起き邪魔されるのですが、その一つにニモが安いジーンズを買ったから南米のジーンズ工場が中国に移転し、失業した男(演じているのはジャコ監督ご自身)が地球の反対側にいるニモに影響を及ぼします。これは、リアルにある話というか、年明けにBSでちょうどGMで行われた人員削減のドキュメンタリーを見たところでした・・・『MR. NOBODY』の未来の中では中国よりも安い火星に生産拠点が移っていました。

蝶については、未来の老人のニモが着ている病院の服の襟が着物のようで蝶の羽のようなカーブです。頭には蝶形骨と言われる部分がありちょうど目の周りの部分にあたります。「バタフライフェクト」「胡蝶の夢」をはじめいろいろなところに蝶のモチーフが登場します

■東洋的なもの
東洋を意識した表現も出てきます。大極のマークのようなポーズや二人の顔を上下逆に並べたカットなどが出てきます。胡蝶の夢というのも元々古代中国の思想です。ジャコ監督の映画は必ず神(ベルギー人なのでカトリックのよう)を扱っていますが、時に望まないろくでもないことを引き起こす張本人として神の像を壊すシーンもあります(『トト・ザ・ヒーロー』)。ニモは「もう偶然には任せない」と強く決意するのですが、運命に裏切られなかなか思うような結果を得られません。以前リスさん出演作『エリザベス:ゴールデンエイジ』で書きましたが、インド生まれインド育ちの監督シェカール・カプールさんは、コメンタリーの中で東洋と西洋の違いを話していました。東洋は流れに身を任せ運命を受容する、一方で西洋では運命に立ち向かい切り開くのだと。そういう違いは話に聞くだけで本当のところはよくわからないのですが、「God helps those who help themselves.(神は自ら助くる者を助く)」という自助努力を尊ぶ諺が思い浮かびますが、逆の「Let it be(なすがままに)」という言葉もありますね。

前々回の『MR. NOBODY』の中で『この世界の片隅に』が良かったことを少しだけ書きました。これはマンガ原作の映画で第二次大戦中の広島の呉に住む女性の話ですが、いつのどこの誰か、というのではなく「誰でもなく、誰でもである」、普遍的で今もこの世界で起きている紛争や災害やいろいろなことを思い起こす内容でした。当時の女性としては普通のことでしょうが、彼女は結婚をはじめ自分で選択をすることはなく流れに身をまかせる人として描かれていました。もしあの時違う選択をしていたら、という部分で「選択」をキーワードになんとなく『MR. NOBODY』とつなげて見ていました。普遍的な内容なので、海外の人にも見てほしいなあとも思ったのですが、こういう運命を受容するという姿勢はどう映るのだろうかとも思いました。ジャコさんは運命に立ち向かおうとしても運命がそうさせないという描き方をしています。SFでは未来を変えるために過去を変えようとしても、歴史が望む方向へ修正される、という描き方がよく出てきます。例えばニモはアンナと引き離されてももっと積極的に探す手段はいくらでもあったと思う。しかしこの映画の中では、そうしたとしても時間の意思に逆らえないというか、結局はうまくいかない気がし、自分の意志ってあまり関係ないのかもしれない。

■不老不死とデータ
今行われている不老不死の研究についてもBSドキュメンタリーを見ました。人間の脳内の情報や経験をデータとしてコンピューターに取り込み肉体は滅んでも脳だけ生きるという方法と、体のパーツを取り替えながら生きる2通りの方法が紹介されていました。ニモが目覚めたのはシンギュラリティと言われる2045年より50年ほど未来で人間は自己再生ができるようになっていて不老不死で恋愛とか肉食とかなくなっています。永遠に生き続けられたとして、人は何をするのだろう。

『インターネットの次に来るもの 12の法則』 (ケヴィン・ケリー 2016 NHK出版)という本が面白かったのですが、本の原題は『Inevitable』=「不可避なもの」という意味です。邦題は売りたい感じのタイトルで期待するものと内容は若干違うと思うのですが、この世界どうなっているのという日頃の疑問を晴らしてくれるおもしろさがありました。

たとえばアプリのアップデートをほっておくとすると、そのうちあっちもこっちもパソコン全体の大手術がいるようになるでしょ、と引き込み方もうまい。そして今やアーミッシュの人ですら彼らの製品の販売用のWEBサイトを持っていて、作業は図書館を利用しているそうです。理系向けの本ではないので読みやすくおもしろかったです。私はネット社会の情報管理に懐疑的なのでSNSもだいぶ後発ですが、これももはや「避けたいけど避けられないもの」になっている。抵抗してもしょうがない。巻き込まれた方が楽だし繋がらないと得られない。著者は『ホール・アース・カタログ』、『ホール・アース・レビュー』の編集者だったジャーナリストですが、割と学究肌の方という感じで、将来はAIの活躍で労働時間も減り皆がクリエイティブになり、生産物をシェアする一種共同体のような社会になると想像されています。まあ、働かないとか目的がないのもダメだから、生活保障のお金にインセンティブとしてプラス労働の対価の支払われる社会になるのではと書かれています。AIによる失業が起きても新たな仕事が生まれるだろうと明るい観測をされています。

現在でも、対価がないのにSNSに夢中になって書き込むことにエネルギーを費やしていて、そのデータの増え方は「12か月ごとに、800万の楽曲、200万冊の本、1万6000本の映画、300億のブログの投稿、1820億のツイート、40万のプロダクトが新たに生み出されている(『インターネットの次に来るもの 12の法則』P220)」。そう、これは自分でもお金にならないことをどうしてこんなに熱心いしているのだろうと不思議なのですが、世界的にそうらしい。また技術の研鑽と、良いことに書かれていますね。最近SF映画を見ることも無駄ではないなあなんて、めったにないこともありました。別の本ではエネルギー問題が解決したら、暮らしのコストはほとんどゼロになるのでみんなハッピーにしたいことがやれるとなっていました。実現したらいいけど、ちょっとどうかなと思います。将来の暮らしの心配がないのはいいと思いますが。今は限られた余暇にやっているわけで、だからこそ面白いのですが、永遠の時間を手に入れてクリエイティブに生きることが可能だとして、その時やりたいことはあるのだろうか。多分そんな時代までは生きていない気がするけど、『星の王子さま』にこんな話があります。ある男が飲むと1日何分か時間を得する薬を売っていて1週間で1時間の得になるらしい。王子さまは、得した時間でやりたいことがあるとすれば、ゆっくり歩いて美味しい湧き水を飲んでまたゆっくり戻ってることだと考えます。なんだかそれに似ています。人間と鬱ってかなりセットだと思うし、永遠はつらいかも。多分選ばれた人だけが永遠に生きるのだと思いますけどね。健康管理とか色々なアプリがありますが、結局今の人間の行動全てがAIのためにデータ取りされて数値化に利用されているなあとも思いました。

■巻き戻しOK?
そしてヴァーチャル・リアリティ分野もどんどん変わっていくだろう、そうなった時、他人の目を通して世界を見る『マルコヴィッチの穴』が引き合いに出されたのでなんとなく嬉しかったです。なんというか、過去にあったアイディアにそういう形で再会するのかと。映画俳優ジョン・マルコヴィッチ(本人役で出演)の頭の中に入れる設定で彼が見ているものが見え彼の聞いている音が聞こえる。でも考えたら気持ちが悪い。まあヴァーチャル・リアリティは編集されたフィクションを見せられるのだとは思いますが・‥。そして映画もディスク化やオンデマンド化の「巻き戻し可能」が複雑なストーリーに向かわせていることも書かれていました。重箱の隅ラバーとしては「何回か見ないといけない」系の読み解く映画が好きなので。

■『MR. NOBODY』と『Nowhere man(ひとりぼっちのあいつ)』
MR. NOBODY(誰でもない男)、Nowhere manを連想します。

Nowhere man, The world is at your command
世界はきみの命令下にある➡︎
きみが世界に働きかけたら、世界もこっちを向いてくれるよ
(というような意味だと思います ^^: 勝手な解釈です)



でもねー、1993年の『トレインスポッティング』あとがきで「人生を選ぶことをやめた若者」と書かれているのです。
21世紀の世界とのつながり方、そこが大きく違うのかもしれません。

■『MR. NOBODY』と『Jの悲劇』
まったく話は変わるのですが、『MR. NOBODY』の視覚効果はリスさんとダニエル・クレイグ主演、イアン・マキューアン脚本『Jの悲劇』と同じプロダクションなのもお気に入りなところです。これは偶然ではなくて、『Jの悲劇』の原作本『愛の続き』(原題 Enduring Love 1997年 Ian McEwan)を読んだところ、主人公は偶然遭遇した気球の事故以来だんだん生活の歯車がおかしくなっていくのですが、原作の中でははっきりと「どの時点が間違いだったのか」としつこく考えています。これ『MR. NOBODY』のキモです。「神様」というのもキーワードでこちらでは「試練を与えるもの」として描かれています。日頃神様についてまず考えないので、そうか、幸せだけじゃなくて試練も与えるんだった、と思いました。『MR. NOBODY』で象徴的に登場する赤い花瓶、初めて見たときから、なんとなく映画『Jの悲劇』の赤い気球に似ているなあと思っていたのでした。

MrNbody_baloon_vase.png



『Jの悲劇』は少し前の作品ですが、原作も映画脚本もイアン・マキューアン、大筋は一緒ですが設定や経過が変えてあるので映画も本もそれぞれおもしろかったです。映画の方が好きですけど。ド・クレランボー症候群(一般的には〇〇ー〇ーと言われます)を扱ったもので、ドラマ映画の中ではもはや全く新味はないですが20年前に書いていたのだなということと、狂っていく緊迫したサイコサスペンスな描写が映画も本も良かったです。

『MR. NOBODY』、見られた方の感想がお聞きしたいです。